第117話 ⭐エピローグ⭐

日記を開いて想い出にひたっていると、すっかり日が暮れていた。

(やだ、もうこんな時間だ!!!)


慌てて取り込んだ洗濯物を片付ける。


昔はなかった棚に、B/のCDやDVDがたくさん並んでいる。

何枚か増えたHARUのサイン。



碧がいるのは昔、陽と一緒に暮らしていた部屋。


あの日、碧は陽の部屋を出てから、たまたまこの部屋が空いていたので住むことにした。

荷物の片付けを母親も手伝ってくれた。

碧の事を心配して母親は言った。


『ホントに大丈夫なの?碧、この部屋にいたら辛くなるよ?』

『でも、ここからの景色が好きだし、何となく陽がそばにいてくれるような気がして』

『陽くんのお母さんにも言わなくて大丈夫なの??』

『うん。辛い時はお母さん、助けに来てくれるでしょ?』

『もちろん!』

『じゃあ、言わないで。。。。。』

そして、そのまま時は流れた。



(トゥール、るー、ぅー。)

碧は大好きな鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

最後に陽に作ってから、避けていたオムライスを久しぶりに作った。

ケチャップで文字を書く。

(B/🖤HARU)

少し微笑んで涙が溢れた。


(トゥール、るー、ぅー。)

辛い時に思い出していた鼻歌のメロディー。

素敵な曲だったな。。。


その時、携帯が鳴った。

誰だろう?知らない番号。

『はい。』


すると、電話越しに懐かしい元気な声が聞こえた。

『碧ーー!元気?久しぶりーー!凛花!』

『わー、凛花先輩!お久しぶりです!』

『電話番号変わってたから、探すの大変だったよぉーーー』

『あ、すみません!』



陽の部屋を出た日の夕方に携帯を変えた。

覚悟を決めて番号も思い切って変えた。



そんな事を知らない凛花先輩は話を続けた。

『ねー、B/のHARUって、陽なの?』

『はい。』

少し心がチクリと痛む。


『マジで夢叶えたんだー!最近知ってさ。』

『叶えたようですね。』

凛花先輩とは何年ぶりだろうか。

昔の話をたくさんした。陽との事はあまり詳しく話せなかった。


『あ、そだ!私ね結婚するんだ!』

『えー、おめでとうございます!』

『結婚式、来てくれる?』

『喜んで!』

『じゃ、招待状送るね!』

『楽しみにしてます!』

『じゃ、またねー!』

『はいはーい!』


(先輩、結婚かぁー。)

あの頃の陽の事を思い出してしまう。

仕方がない。

陽と碧はずーっと一緒だったから。


冷めてしまったオムライス。

『いただきます!』

久しぶりに食べたな。。。

3口目を口に入れた時にチャイムが鳴った。

ピンポーン!

碧は時計を見た。

(え?こんな時間に?)

恐る恐る出てみる。

『。。。はい』

『あ、遅くなってすみません、お荷物のお届けです。』

『?。。。は、い。お待ちください。』

(何だろ。。。)


碧は恐る恐る扉を少しだけ開けた。

『お待たせ致しました。お荷物です!』

『へっ。。。?!』

大きなぬいぐるみを抱えた陽が笑顔で目の前に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る