第68話 ⭐病院のお泊まり⭐

『碧、ごめんな。不安な時に側にいなくて』

『どーして謝るの?今日は陽の大事な日に私も迷惑かけてしまって。。。』

お互いに病室の天井を見ながら会話をする。


『じゃあ、おあいこか』

陽は碧の手を握ったまま離さなかった。

『俺、自分の夢を追いかけてていいのかな』

『陽の夢は私の夢だよ!忘れないで!』

『ん、だな。ありがと。』

『今日はどうだった?』

碧は、点滴が繋がれてない方の腕を枕にして陽の顔をみる。


『チョー緊張した。FLY!!のメンバー全員いたんだぜ!テレビカメラもいっぱいいてさ。』

『お疲れ様』

碧はにっこりと微笑んだ。

『碧、早く寝て明日元気に家に帰ろうぜ!』

『うん。おやすみ』

(オーディションの結果が出たら、話をしよう。。。)

碧はそう決めた。


病院の朝は早く始まる。

『神﨑さーん、おはよう!お熱計って貰える?』

体温計を渡された。

『ちゃんと眠れた?』

『はい!』

看護士さんと苦笑いをしながら会話をした。

陽は口を開けたまま、熟睡していた。




午前中に医師の診察を受けて、帰宅の許可がおりた。

碧の母親が迎えに来てくれて、

『よしっ、忘れ物ない?帰ろうか。』

と、陽は荷物を持って家に帰った。




陽は相変わらずジムのトレーナーとレッスンの日々を送っている。

碧は2日ほど休みをもらい、仕事に復帰していた。

そして、2週間が経過する頃に陽の電話が鳴った。


『明日、オーディションの結果の連絡の予定です。桜木さんのところにカメラがお邪魔しても大丈夫ですか?』

『あ、えっと、休み時間なら。。。』

『かしこまりました、明日1度ご連絡入れますね!』



約束の時間になると、スタッフが3人ほどやって来た。


カメラを持ったオーディションのスタッフが陽のジムのトレーナーの様子を写している。

アシスタントの人はバタバタと動き、忙しそうだ。


今日はあいにくの雨で、ジムの利用者さんはいつもより少ない。

『桜木、いよいよだなぁ。合格してたら、大騒ぎだな。』

職場の仲間もソワソワしている。

『やめてくださいよー。全力は出しきりましたが、そんなに自信はないんで。。。』

しばらくすると、陽の携帯が鳴った。

『桜木さんの携帯電話でお間違いないでしょうか?』

『はい、桜木陽です!』


陽が電話を受けると

『お、きましたね!』

と、カメラマンがカメラを担ぎ直した。

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