第60話 ⭐帰宅⭐
うとうとしていたようだ。
何かふわっとした暖かさを感じて目が覚めた。
オーディションを終えて帰宅した陽が毛布をかけてくれたようだ。
『ごめん!起こしちゃった?ただいま』
と笑顔の陽が覗き込んだ。
『おかえりなさい。私寝ちゃった!ごめん!あ、ごはん。。。?!あ、オーディションどうだった?!』
気分は良くなったが、碧の頭が回っていない。
そんな碧を見て、陽は笑った。
『碧、落ち着いて。大丈夫。俺頑張ってきたよ!全力出しきった!』
『陽ーーーーーー』
碧は陽に抱きついた。
『んーどしたー?調子悪かったんだろ?落ちついた?』
碧はなぜか涙が溢れた。
『碧?大丈夫だよ。俺はそばにいるよ。』
ソファーベッドでふたりはしばらく寄り添っていた。
『あ、見てー。月が今日は大きく見える!』
陽の膝枕から見える景色の中に大きな月が見えていた。
『んー、あ、ほんとだ!色もオレンジっぽくない?』
陽は頭を後ろにずらして、窓の外を覗いた。
『オレンジ色の月かぁー。』
碧は目を細めてずっと眺めていた。
(グゥーーー)
しばらくすると陽のお腹が鳴った。
『ふふっ』
『あー腹減ったぁーーー』
オーディションで全力を出し切ってクタクタだったのだろう。
『ご飯作らなきゃ!』
『一緒に作る?』
『大事な未来のスターにケガさせられませんよーーー』
『なんだよぉー俺そんなにポンコツじゃないぞぉ!!!』
『いゃいゃいゃ・・・・』
陽にじゃがいもを剥かせると、じゃがいもはすごく小さくなっちゃうし。人参をピーラーで剥いて貰うと、反対の親指の爪をかすめてしまう。
(買い物して来なかったからなぁ)
碧は冷蔵庫の中を見ていた。
『あー、簡単な物しかできないかもー』
『いいよー!今日のご飯はなぁに?』
『んー、オムライスかな。。。』
『ひゃっほぉー!シャワーしてくるっ!』
碧は料理をテーブルに並べていた。
シャワーを終えてきた陽は満面の笑みで
『うわぁー』と子供のように言う。
いつの間にか碧の料理の腕も上がり、短時間で料理ができるようになっていた。
ベーコンのスープ、大きなお皿と普通のお皿が並ぶ。レタスとプチトマトが飾られたオムライス。シンプルなケチャップソース。
碧は大きなオムライスに文字を書いた。
HARU🖤CHERRY BLOSSOM
『何これー!』
『陽・桜木の桜。SAKURAGIより可愛くない?木まで書けなかったけど。』
と碧は苦笑いをしている。
すると、陽は画用紙にペンで何か書き始めた。
『みてー、俺のサイン1号!!』
(HARU/C.B.W)
『えー、サインってもっと一筆っぽく書くんじゃないの?』
陽は画用紙に自分が書いたものを見つめる。
そして、やっぱりにっこり笑って差し出した。
『とりあえず、これ!はい!サイン第1号!碧へのプレゼント!』
(冗談ではなさそうだ)
と、碧は笑顔で受け取る事にした。
『ありがとう』
ふたりは陽のオーディションの話をしながらオムライスを一緒に食べた。
真剣に話をしたり、笑ったり。
『1次予選を通過したら、封筒が届くんだって!』
それから毎日毎日ふたりはポストを覗いて封筒が届くのを待っていた。
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