第49話 ⭐進路⭐
碧は少し離れた短大を目指すことにした。
栄養士の資格をとって、皆を笑顔にできる料理を学びたいと思った。
それにたくさん食べて喜んでくれる陽の為にもなるかもしれないと思っていた。
『碧、まじめな話なんだけど。。。俺、歌のレッスンを本格的に受けようかと思ってる。バイトしながらレッスンして、オーディションとかに挑戦したい。』
『陽の夢?』
『夢。。。かな。。。』
『応援する!!!だって陽の歌声好きだもん!オーディションも応援する!』
『ホント?』
『うん!』
変わらない碧の笑顔を見ていると本当に叶いそうな気がしてくる。
『バイトはねー、決めてるんだ!スポーツジムでトレーナーやってみようかなって。』
『体、鍛えるって事?』
『ま、怪我をしない体作りを教えながら、自分も鍛える!』
『なぁーに、それ!』
『自分の為と碧を守る為』
碧はうつ向いた。
『ごめんね、発作の時はいつも迷惑かけてしまってる。なかなか治らないね。。。』
陽は笑顔で続けた。
『碧、今のままでいいんだよ。世の中には色んな人がいて、病気の人はたくさんいる。俺は、うまく言えないけど、ありのままでいいと思う。長所と短所みたいなもんだ。』
『私のパニック障害は短所かぁー。。。』
『長所だよ。優しいから気配りしすぎて頭が疲れちゃうだけだ。優し過ぎるのが短所。』
ニコニコとしながら話す陽を見ていると、心が落ち着く。
碧はこの人とずーっと一緒にいたいと本気で思った。
(私の病気は長所。。。。。)
『陽の長所は大食い!短所は食べ過ぎ!』
『ほかにもあるだろー長所ーー!!』
陽はくちびるを尖らせて言った。
にやはははは!
ふたりの笑い声が空高く舞い上がった。
それから碧は受験勉強を始めた。
陽はトレーニングジムのバイトを始めた。
陽と碧は学校以外では会う時間がとれなくなってきていた。
碧は不安になり時折発作を起こしていたが、陽は必ず連絡をくれた。
『落ち着くまで話しよう。』
トレーニングジムでバイトを始めた陽の体は引き締まり、大人びてきていた。
『俺の筋肉が喜ぶご飯を作れるように、しっかり勉強してくれよなぁー』
年が明けて、碧は受験勉強に追い込みをかけていた。
この冬の日記は短く、陽もあまり登場する事はないまま卒業式を迎える事になった。
『陽、卒業おめでとう!』
『碧、卒業おめでとう!』
卒業式のあと、ふたりは花束を交換した。
『そして、これからもよろしくね!』
と誰もいない教室でキスをした。
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