第47話 ⭐新学期⭐

冷たかった風も暖かく柔らかい風に変わった。

寒そうに立っていた木も蕾がついて、桜の花が咲いた。

サッカー部もキャプテンが不在のまま、春を迎えた。


明日から新学期。

陽に会えるのだろうか。

携帯を握りしめて碧は部屋にこもっていた。

(ピンポーン)

『碧ー、陽くん来たよー!』と母親に呼ばれて階段を転げながら降りてきた。

『痛っ!』

『碧、大丈夫?』

母親も心配するほど慌てている。


『痛ーい!!陽ー!!もうっ!』

『大丈夫か?』

『だいじょばないよっ!!!!!』

こんなに怒った碧を久しぶりに見た。

映画の後で喧嘩した時以来だ。


『ごめん、ちょっと散歩しない?』

『うん』

『碧さん、ちょっとお借りします』

『行ってらっしゃい!』


『足、大丈夫?ケガしてない?』

『。。。なんで?なんで連絡くれなかったの?心配したんだから!嫌いになったの?』

『違うよ。』

『じゃあ、なんでよ!!!』


何も言わずに、ふわりと陽は優しく碧を包んだ。

碧は泣いた。

『心配したんだから!』

『ごめん。でも、辛かったんだ。俺、凄く辛かったんだ。』

陽はぎゅっと碧を抱き締めながら泣いた。

『碧…俺、サッカー続けるのが辛いんだ。』

『陽、私は陽の味方だから。陽を応援する』

『逃げるなんて弱いよな。だから碧に言えなかった。カッコ悪くて言えなかった。』

『前に私を逃がしてくれたじゃん!嫌な教室から逃がしてくれたじゃん!それに逃げるだけじゃなくて。。。新しい事を見つけたらいいじゃん!!!』

しばらく陽は碧を抱き締めていた。




ゆっくりと陽は体を離した。


『そっか。新しい事か。。。』

『サッカーも絶対出来ない訳じゃないし。』

『ん。』

『心配したんだから!!!』

『ごめん。。。』

しばらくふたりは黙って景色をながめていた。

『夕陽がキレイ。私は陽と一緒にいれたらそれでいい。』

陽は何も言わずに、もう1度碧をギューっと抱きしめた。

(俺も碧に守られてるんだな。。。)

空が夕焼けでオレンジ色に染まっていた。

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