第44話 ⭐入院⭐
準決勝は残念ながら1点差で負けてしまったそうだ。
メンバーも勝利して陽に報告したかったのだが、残念な結果になってしまった。
碧は陽のお母さんが連絡をしてくれて、迎えに来てくれた母親と一緒に帰宅した。
『手術が終わったら連絡するからね』
と、帰り際に優しく言ってくれた。
碧の母親も陽のお母さんにお礼を言った。
『娘がご迷惑おかけしました。』
『いえいえ、陽の事をとても心配してくれて、ありがとうね。』
と私達を見送ってくれた。
そして、陽の手術は無事に終了したと、夜になって連絡があった。
碧は次の日にすぐにお見舞いに駆けつけた。
『碧、発作大丈夫か?』
と、陽は救急車での事を心配してくれていた。
『ぅわぁーーん。』
碧が泣き、陽はびっくりしている。
『ど、どした?』
『怖かった。陽の絆から血がいっぱい出て』
陽のベッドに顔を埋めて、碧は泣いた。
『ごめんね、心配させたね。』
陽は優しく碧の頭を撫でていた。
しばらく泣いたらスッキリしたのだろうか。
碧は涙でびしょびしょの顔のまま、鞄の中から大きなおにぎりを出して見せた。
『ほえっ?おにぎりだ!』
陽はびっくりして笑った。
『今朝はどろどろのお粥だったからなぁー、食べていいのかなぁーーー。』
陽が悩んでいると、
『私が食べる!』
と、かぶり付いて笑った。
さすがの陽もびっくりしたが、つられて笑った。
二人の笑い声を聞いて病室に入ってきた陽の母親は碧の姿を見て笑った。
碧はすっかりいつもの碧に戻っていた。
サッカー部のメンバーも数人ずつお見舞いに来る。
陽は相変わらず明るく皆と話をしている。
『キャプテン、早く戻ってきてくださいね』
帰り際には皆口を揃えて言う。
笑顔で皆を見送り、碧と二人になると陽は珍しく笑顔が消えた。
(あんなに頑張ってたし、どんな時も笑顔だったのに。陽。。。)
『碧ー、俺、戻れるかなぁ』
『心配ないよ、キズが落ち着いたらリハビリでしょ?陽、慌てないで!』
『焦るよー!練習出来ないし。』
『陽。。。私はできる限り陽の傍にいるよ!マネージャーとして皆もサポートするし。』
『碧が疲れてしまうじゃん!』
『。。だって陽も大事だし!部員も大事!』
『そうだな。』
碧の瞳からは今にも涙が溢れそうだ。
『ありがとう。早く復帰しなきゃな!』
陽は碧の涙を指で優しく拭った。
その頃、担当医と両親は陽の治療について話をしていた。
『キズが落ち着いたら、早めにリハビリを始めましょう。若いし、体力もあるのでそんなに時間はかからずに退院はできるでしょう』
『あー、良かった!』両親はホッとした。
『ただ、筋肉の断裂があったので、今まで通りのサッカーのプレーができるかどうかは今の段階では何とも言えないです。』
『え?!。。。。』
『サッカーできなくなりますか?』
『全く出来なくなるという状態ではないですが、今の段階では何とも。。。。。』
その頃病室では、楽しそうなふたりの会話が聞こえていた。
『ひゃはは!』
『何すんだよぉー』
碧は陽の足に巻かれたカチカチのギプスに落書きをする。
(早く治りますよーに)
『治ったら、パン屋行こうな』
『うん!明日、何か欲しいものある?食べるものでも雑誌とかでも!』
『碧が無理しないでくれるのが1番!』
『わかってるよ』
碧は陽の手を握って笑った。
『ついでに顔にも何か書く?』
『やめれーーー』
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