第42話 ⭐予感⭐
準決勝当日の朝。
少し寒い朝だ。
みんないつも通りだが、いつも通りではないワクワク感とやる気で漲っていた。
もちろん陽も。
『どう?足の具合は。』
碧は小さな声で陽に確認する。
『大丈夫だよ、心配すんなって!』
陽はいつものように笑っていた。
左足には見えないようにしっかりとテーピングを巻いて、準備万端だ!!!
これ以上痛めないように、入念にアップをしておいた。
碧は祈るように見守っていた。
試合は始まり、走る、走る、また走る!
準決勝だもの、それはそれはお互いに全力でぶつかり合う。
陽がボールにくらいついていた。
その時だった。
(危ない!)碧は息を飲んだ。
陽に相手の選手がぶつかった。
ホイッスルが鳴り、レッドカード!
陽は立ち上がれない。
碧にはスローモーションのように見えていた。
昨日から痛めていた左足。
相手選手の足が伸びてきて倒された。
慌てて皆が駆け寄る。
『おい、陽!大丈夫か?』
『立てそうにないか!おぃ!』
陽の顔は痛みで歪み、起き上がれないようだ。
(えっ。。。。。)
碧はじっとしていられない。
すぐに担架が運び込まれ、陽は運ばれてきた。
『陽!大丈夫?』
『試合、戻らなきゃ!やらせてくれよ!』
『ダメだよ!』
『桜木、交代だ。無理だ!』
『やらせてくれよ!頼むから!』
陽は必死で抵抗したが、叶わなかった。
陽の代わりの選手が入り試合は続けられる。
陽は左足を押さえたまま動けない。
よく見ると出血もしている。
『救急車呼んで!』
周りから声がかける。
碧はタオルで止血をしながら声をかける。
『陽!陽!陽~!』
けたたましくサイレンが鳴り、救急車が到着した。
陽はそのまま救急車に乗せられた。
引率の教師と碧は救急車に飛び乗った。
救急隊が陽に声をかける。
『左足足以外に痛いところは?』
『頭は打ってない?痛くない?』
『吐き気とかする?』
陽は首を振るだけだ。こんなにつらそうな陽を見るのは初めてで、碧は名前を呼ぶ事しかできない。
『ねぇ、陽!大丈夫?陽!』
救急隊の処置は続けられている。
陽は痛みで苦しみながら、必死に声を振り絞って救急隊の人に頼んだ
『碧、彼女に薬を飲ませてください。。。発作……』
『発作?』
救急隊が振り向いた。
陽の手を握っている碧の手は震えていた。
救急隊の1人が声をかけてくれる。
『薬持ってる?彼の言うとおり飲んだほうがいい。水ある?』
『。。はい。。』
碧は鞄の中から震える手で水と薬を出して流し込んだ。
(こんな時に。。。)と、碧は悔しかった。
『大丈夫ですよ!』
救急隊の人が声をかけてくれる。
『病院に向かってるから安心して!桜木くん、もう少し我慢して。何か変わった事ない?何でも言って!』
碧は必死に陽の腕を握っている。
『陽!陽!』
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