第39話 ⭐2回目の夏⭐

陽と碧の2回目の夏は相変わらずサッカー中心の毎日だった。

陽は試合には欠かせないメンバーに成長した。

碧は今年で引退になる凛花先輩からイロイロと引き継ぎを受けている。

ルールも知らないままスタートしたマネージャー生活も、後輩に教えてあげられるようになっていた。

スラリと背の高い陽と碧のカップルはみんなの憧れのカップルとなっていた。

相変わらず、碧は時折発作に襲われながらも高校生活も陽との関係も順調に進んでいた。



ある日のデート。二人は食事をしたり、タワレコでCDを聞いたり楽しくデートをしていた。

ふたりで話ながら外を歩いていると突然雨が降ってきた。

すごいどしゃ降りの雨で、陽は碧の手をしっかりと握り締めて二人で走った。

雨をよけれる場所についた時には二人はびしょ濡れだった。

『びちょびちょだわー』

『服も全部濡れちゃったね。。。止むかなぁ、雨。。。』

碧が空を見上げながら呟いた。

すると、急に陽はびしょ濡れの碧を抱き寄せて、いつものようにキスをした。

キスをした後の恥ずかしそうな碧の顔は最初からずーっと変わらない。

陽は、そんな碧が堪らなく大好きだ。


二人で微笑む。

『なぁ、碧。どっか行かない?』

『ん?今、デートしてるよ?』

陽は赤い顔をして下を向いて行った。

『二人だけになれる場所、いかない?』

『二人だけに?』

碧にはすぐわからなかった。

『うん、二人だけになれるとこ』

(二人だけになれるとこ???)

碧は下を向いた。耳が赤くなっている。

『碧が嫌ならやめとく。』

『私は陽が大好き。陽についていく。』

と、碧は陽のシャツの裾を握る。

『ん。よし、また少し走ろう!』


二人は手を繋いで、雨の中を走った。

手を離さないように、しっかりと握りしめて走った。

そして、路地に入っていき、少し派手な建物の前に着いた。


二人は手を繋いだまま『せーの!』と言いながら入った。

『陽の手、震えてるー』

『碧の手、震えてるぞ!』

ふたりは初めてホテルに入った。

部屋は意外とシンプルで、二人は少しほっとした。

『風邪引いちゃうから、とりあえず服着替えなよ、その間にお湯はってくるから暖まったほうがいい』


陽はガウンのようなものを碧に渡して、浴室へ行きお湯を出した。

(陽も濡れてるのに。。。)

陽はホントにいつも優しい。

交代で湯船に浸かり、冷えた体は温かくなった。

碧の濡れた髪の毛は陽がドライヤーで乾かしてくれた。


碧は震えていた。

(どうしよう、碧怖がっている?。。。)

連れて来て良かったのか…陽は悩んでいた。

碧を優しく包み込むように抱きしめてみた。

碧は目を見て微笑んだ。

(良かった。碧が笑ってる)

キスをしてできる限りの優しさと愛情を碧に伝える。

お互いの肌が触れると、温もりが伝わる。

『幸せってこーゆー事なんかな』

『いつも幸せだけど。陽がこんなに温かくて、筋肉が凄いって初めて知った』

『碧の事を守らないといけないからね』

碧は頬を真っ赤にしながら、陽の胸に隠れた。

陽はより優しく、碧を抱きしめた。

『ずっと一緒だよ』

いつものようにキスをする。

おでこや首筋へ。。。

陽はドキドキしながらも、優しく優しく碧に触れていく。

そしてふたりは1つになった。


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