第38話 ⭐カラオケ⭐

ある日、部活の終わりにみんなでカラオケに行った。

碧は初めてカラオケにきた。

『えー、初めてなの?!』

陽さえもその事を知らなかった。

(そういえば、デートでもカラオケに行くことはなかったな。)


『碧のカラオケデビューだ!』

みんなでわいわい大騒ぎた!

(みんな上手だなぁ。。。。。)

碧は皆が歌っているのを楽しんで見ていた。


そして、陽がマイクを持った。

『碧、初めて聞くんだろ?びっくりするよ』

仲間の誰かが碧に向かって言った。

『そんなにハードルあげんなよ!』

陽は少し照れていた。

陽が選んだのは少し昔の曲。

(あ、聞いたことあるかも。。。)

陽が歌い始めた瞬間、碧は心臓が飛び出るんじゃないかと思った。

(キレイな声。。。。。)

『惚れ直しちゃうね』

凛花先輩が呟く。碧は頷くだけだった。


あまりにもキレイだったから。

陽の歌声も姿も。

いつも傍で見ていてよく知っているはず。

背が高くて、足が長くて、眩しくて、睫毛も長い。

でもそれとは違うオーラを陽は醸し出す。

みんなで盛り上がっているのに、碧にはスローモーションに見えていた。

歌声も曲によって少し違う気がする。


時折、碧を見て(ニコッ)と微笑む。

目が離せない笑顔と、心地よい歌声。

碧は陽にますます夢中になった。

陽の唄はずーっと聞いていたかった。

その日の帰り道、碧は陽にびっとりとくっついて離れないでいた。

『どした?今日は、いつもより甘えただなぁ。可愛いくて嬉しいんだけど』

碧は珍しく、陽の腕に自分の腕を絡ませて歩いた。


『ん。陽の歌声好き。』

『歌声かい!!』

『全部好きだけど、歌声はもっと好き。』

『碧の為ならいつでも歌うよ!』

星が降ってきそうなほど綺麗な夜だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る