第29話 ⭐夏休み2⭐

サッカー部の夏休みの練習は長くハードなものだった。

練習試合や予選など、碧には新しい事だらけで大変だった。

そして陽も毎日走り回り、クタクタだった。


陽にとって、初めての部活。

やっと夢中になれるものに出会った。

1年生でも試合には出たくて必死だった。

なかなかレギュラーになれなくて陽は苦戦しているようだ。

常にボールを離さずに触っていた。



その頃の碧はたまに薬を飲んでいた。

慣れない事が増えたりすると、体がついていかない。

夏の暑さも碧の体力を奪っていく。


大きな発作が出る事はなかったが、時折手が震えたり心臓がドキドキする事はあった。

(陽がいてくれる)

それだけで頑張る事ができる。


サッカーボールを追いかける陽を碧は見つめている。

マネージャーとして奮闘中の碧を陽が見つめている。

そして、毎日のように夕陽は2人の事を照らした。



明日は試合だ。といっても練習試合だが。

せっかくならば、ベンチよりも試合に出たい。


『明日の練習試合のメンバー発表する!』

3年や2年の先輩の名前が呼ばれる。

『それと、桜木!死ぬ気で頑張れよ!』

最後に陽が呼ばれた。

陽の顔がくしゃくしゃの笑顔になった。

『やったぁー出れるーーー!マジ嬉しい!』

みんなが声をかけて、陽の髪の毛はぐしゃぐしゃにされた。

『やったな!』

残念ながら名前を呼ばれなかった先輩も、応援してくれた。

陽の実力には叶わないと、誰も文句を言えなかった。



嬉しそうな陽を見て碧も嬉しかった。

凛花先輩は自分より大きな碧の肩に無理やり腕をのせて言った。

『良かったね、私達もサポート頑張らなくちゃ!』

『はいっ』

グランドにはいつもよりにぎやかな掛け声が響き渡っていた。

(明日は陽が活躍できますように)

その日の碧の日記の終わりに書かれていた。


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