第27話 ⭐夏休み⭐

(シャンシャンシャンシャン)

大勢の蝉が啼いている。


太陽は容赦なくそこらじゅうを照らす。

グランドにはホースで水を撒きながら、部活は行われた。


それでも水はすぐに乾いてしまい、走れば砂埃が舞う。

部員は真っ黒に日焼けをして、汗だくだ。

立って見ている碧達も、頭のてっぺんから汗が流れてくる。



『うぁーーあち"ーー』

『さすがに練習キツイわぁー』

水道の水を頭からかけている。

サッカー部はにぎやかだ。

『凛花先輩、これどこに直します?』

碧は少し鳴れてきたマネージャーの仕事をこなしていた。

『あ、それ部室でいいと思うよ!けど、重いよー!誰かー碧の事手伝ってあげてよ!』

と凛花が言うと同時に陽がやってきた。


『よしっ!行くべ!』

『おー頼んだわー』他の部員達は疲れて休憩中だった。

『ありがとう』

『その代わり、今日はパン屋に寄ったあと行きたい所がある。』

碧はこの陽の子供っぽい顔が気に入っている。

『どこー?』

『まだ内緒!後でのお楽しみっ!』

と、陽は1人で重い道具を抱えて部室へと向かっていった。

『えっ、ちょっとぉー!待ってぇー私、走るの遅いんだからーー!』

碧はこんな事を口に出来るようになっていた。

そして、八重歯もほんの少しだけ見せて笑えるようになっていた。

『やーだねぇー』

こういう時の陽はいつもさりげなく優しい。

そんな二人を遠くから部員達は眺めながら笑っていた。


『あの二人、なんかいいよな』

『陽は天然で』

『碧はどんくさくて』

『でもあの二人可愛くない?』

凛花も微笑みながら見ていた。

ヒソヒソ話だが、教室のとは違う。

優しい仲間達のヒソヒソ話だ。

『凛花も今日、パン屋行くだろ?』

『おごってくれるの?ありがとう!』

加納凛花はサッカー部の人気者だ。



みんなでワイワイとパン屋へ向かう。

『あら、今日はにぎやかで嬉しいねぇ』

パン屋のおばちゃんは嬉しそうに笑う。

『ちょうどメロンパンも焼けたよー』

あまーくてバターの焼けた香りがしている。

『どれにする?』陽は碧に聞く。

『迷う…メロンパンも美味しそうだし、玉子サンドも美味しそうだし、パンダの顔のやつも可愛いし。。。』

パンダの顔のクッキー生地をチョコレートを入れたパンに乗せて焼いてある。


『にゃははー!神﨑も陽に似てきたな』

『大食いが伝染したんじゃない?!』

『そんなにたくさん食べないよぉーー』

碧はほっぺを膨らましている。

『そうゆう時はな、全部買うんだよ!』

陽は碧が悩んでいるパンを全部トレイにのせた。


『ホントにバカだ!』

笑い声も、皆との空気も心地よい。

『私達はここで食べて帰るわ』

凛花先輩が言った。

『じゃぁ、オレ達も加納凛花と食べて帰るわ!』

『いや、なんでフルネーム?』

『いや、何となく。。。』

何て事ない会話はとても心地よい。

『じゃ、お疲れ様でしたー』と陽は言い。

『お先に失礼します』碧はペコリとお辞儀をする。

大きな袋を抱えて、二人は歩き出した。


すらりと背の高い二人の後ろ姿はキラキラとしてキレイだ。


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