第26話 ⭐苦しみは突然に⭐

そんなある日の事だった。

パン屋の帰りに駅まで陽と一緒に歩いていると、軽いパニック発作がでてきた。

陽と並んで話をしていたが、ドキドキして会話に集中できなくなってきた。

陽が異変に気づく。

『ん?神﨑、どした?』

『だ、大丈夫!ちょっとだけ。。。』

碧が肩で息をしている。しかも手が小刻みに震え始めた。


『ちょっと座るか!あそこまで歩けるか?ちょっと触るよ、大丈夫?』

陽はいつも優しい。


陽に肩を抱き抱えられて歩く。

駅前の広場の椅子に座り、碧は薬を飲んだ。

『聞いていい?何の薬?』

『。。。パニック障害なんだって』

『パニック障害?前にお母さん迎えに来てただろ?あれ関係ある?』

陽は、以前にグランドから見た光景を思い出していた。

『うん。教室で大きな発作が起きて。…他の人には言わないで欲しい。。。』

陽は微笑みながら頷いた。

『大丈夫だよ。なぁ、神﨑、携帯の番号教えて。ダメ?』

『ん?』

そういえば、サッカー部のグループラインには入っていたが、陽と直接は交換してなかった。

『何かあったらいつでもラインか電話して。何かあった時、助けに行く!』

(助けに行く?)って、どうゆう事だろう。

でも、碧は自分の携帯電話を取り出した。

『うん。これ。。。私の。。。』

携帯の画面を見せようとする碧の手は発作で震えていた。

その時だった。

『ゴメン』と言いながら、陽は碧の震える手を両手で優しく覆った。

『落ち着くまでこのままな。。。』

陽の日焼けした手は、大きめの碧の手よりも大きく、そして何よりも優しい温もりを感じた。

『大丈夫。大丈夫。』

陽は碧に声をかける。

碧の心はトクンとした。



これが、陽と碧の恋の始まりだった。




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