第15話 ⭐夏⭐

半袖の制服にも慣れてきた頃。

朝だというのに日差しはきつい。

学校の門が近くなると、碧の目線は少しずつ下がっていく。

そして今日も、碧は下を向いて歩いていた。


『ほいっ、背比べ!』

陽は碧を見つけると毎朝の日課のように声をかけた。

『だんだん慣れてきたなぁ。』

陽はいつもの笑顔。碧は相変わらずにほんのり微笑みを浮かべるだけだが、心は少しずつ軽くなっていた。


木々の葉は濃い緑色になり、太陽は燦々と光を注ぐ。

気の早いセミが時折存在をアピールする。


見事に席替えで窓際をGETした碧はいつも外を眺めて過ごした。

生ぬるい風がグランドの砂を巻き込んで横切っていく。

緑色に染まったグランドの木は小さな影を作っている。

風に吹かれて葉っぱが微かな音を立てている。


碧は相変わらず周りには馴染めず、ヒソヒソ話を聞こえない振りをしてやり過ごす毎日が続いていた。

(何もなければそれでいい。。。。。)

目立たないように、1日の授業を終える。

それだけで良かった。



そして、碧は放課後の教室に1人で残る事が増えた。

ヒソヒソ話をするメンバーと駅までの道のりが被らないように時間をずらす為。

誰も居なくなった教室で、誰の目も気にせずに自分のままで居られる。

そんな時間が堪らなく心地よかった。


グランドでは部活をする生徒の声が響き渡り、碧は毎日それを眺めるのが好きになった。


視線はいつも自然とサッカー部へ向けられている。

陽と出会った頃の少しぽちゃっとした体は、この短期間で見事に引き締まり、背の高さを一層際立たせていた。

スラッと細く長い足でボールを追いかけ、日に焼けた陽の笑顔が夕陽に照らされる。

碧は不思議な感覚でじっと眺めていた。

碧の日記には、陽とのほんのちょっとの出来事が毎日綴られるようになっていた。


そして、今日も同じように外を見ていた。

突然教室の扉が開いた。

『ねぇ、ちょっとーー!!!』


時間をずらしたはずのメンバーの声が聞こえた。


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