第13話 ⭐朝⭐

碧の足取りは少し重く、いつもより猫背だ。

学校の門が近づくにつれて、足取りは重くなる。

夜、寝る前に必死でアイロンを当てたスカートはプリーツもまっすぐに伸びていた。



(ふぅー)と心の中でため息をつきながら学校の門をくぐる。

『おはよ』

後ろから声がした。振り向くと陽が微笑む。

(あ、桜木くんに昨日の事言わなくちゃ!!)

碧は思いきって声をかけた。


『おはよ、昨日はありがとう。タオル汚れたまま返しちゃって。。。』

すると陽は、顔だけ振り向いた。


『んァ?別に汚れてなかったよ!汗だくの体拭いて汚れたけど?』

少し笑顔を見せる。

サッカーで走りまわっているせいか、陽は少し痩せていて、がっちりとしてきた。


陽の優しさが嬉しくて、碧はほんの少し微笑んだ。

『そのほうがいいよ』

『ん?』

何の事かわからない。

碧の気持ちを察したのか、陽はもう一度言った。


『その、今の顔のほうがいいな』

碧は恥ずかしくてうつ向いた。


碧がうつ向いてしまったので陽は少し慌てた。

『あ、ゴメン、でも、そのほうがいい。背も高くてスラッとしてるし。』

『桜木くんのほうが背が高くてスラッとしてるよ』

碧は小さな声で言った。


しばらく何やら考えていた陽が口を開いた。

『じゃあ、背比べ!ほら、背中伸ばしてみ!

やっぱりー、カッコいいじゃん!うんと、、

。。。違うな、そのほうがキレイだ!』

『へっ?!』

碧は初めて聞く言葉だった。

きょとんとして、碧は立ち止まってしまう。

そんな事を言われたのは初めてだったから。


『ほらっ、そのまま教室行くよ』

陽は笑った。いつも教室で気だるそうにしている陽とは思えない笑顔だった。

碧は黙ってついていった。

自分より少し大きな背中をみながら。

(桜木くんの髪の毛って、キレイ。。。)

そう思いながら、教室へ向かった。



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