第10話 ⭐……⭐


どうすればいいのかわからずに、また下を向いた。

(…………)

碧はうつ向いたまま顔をあげられない。スカートに汚れた水が染み込むように、碧の心は少しずつ重くなっていった。

陽と二人だけになった教室。しばらくすると、ゆっくりと陽がしゃべりかけてきた。

「忘れ物取りに来たらさ……」


(恥ずかしい所見られちゃったな。)

碧は落ち込んだ。

すると陽は

「ちょっと触るよ」

と言って、座り込んだままの碧を腕を掴んで、そっと立たせた。そして、自分の机にかけてあった鞄からタオルを取り出し碧に渡した。

「これで、スカート拭きなよ」


陽は倒れたバケツを戻し、びしょびしょの床を拭く。雑巾を絞っては拭く。何度も何度も繰り返し床は少しずつ綺麗になった。


碧は自分のスカートを拭く。

「ついでにやっちゃお」

と、何事もなかったかのように陽は掃除を続けた。

濡れたスカートを拭き終えた碧は、借りたタオルをどうすればいいかわからずに、とりあえず自分の首にかける。そして碧も一緒に残りの掃除をした。


「よしっ! これで終わりだな!」

ゴミ捨ても陽は一緒にいってくれた。特に何も言葉を交わす事はないまま、碧もゴミを持って着いていく。ごみ捨て場で、陽は碧の首のタオルをそっと取り、笑顔で言った。

「部活の途中だから戻るわ、じゃ」

陽の後ろ姿は大きく見えた。


碧は必死で声を出した。

「ありがとう」

陽は振り向き、少し笑った。

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