第9話 ⭐とある放課後⭐

その日、碧は掃除当番だった。

「アハハ! やっぱり?」

「そうそう! それなー」

はしゃいでばかりで、掃除をしているのかいないのかよくわからないグループだ。

それでも碧は1人でゴミを集めていた。

クスッと笑い声が聞こえたあと、誰かがゴミ箱を蹴り倒した。

(ゴンガラコン!!!)

何かが転がる音がして振り替えると、ゴミ箱が倒れていた。

「ぁーー、ゴミ箱倒れちゃったー」

「神﨑ー、片付けといてよ」

「うちら急いでるんよね」

クスクスと嫌な笑い声も聞こえてくる。


(……わざとやった癖に……)

心の中で呟きながら、何でもないフリをする。

「ぅん、やっとく」

碧は仕方なく答えた。

すると、今度は誰かが雑巾用のバケツの水を大袈裟に倒し、碧のスカートは汚れた水で濡れた。

「ごっめーん! 急いでて倒しちゃった」

教室に響く笑い声。


碧は何もできず、床にへたりこみ小さくなってうつ向く事しかできずにいた。

少しずつ、汚れた水はスカートに吸い取られていく。

(何これ……嫌だ……誰か……)

碧が思った瞬間だった。


ガラガラードーンと教室の扉を乱暴に開く音が、教室に響く笑い声を止めた。

「しょーもないことしてんな!!! ホントにくだらねぇなぁー。急いでるんだろ、さっさと行けー!!!」

怒った声が後ろから聞こえた。


「やっばー!」

「帰ろ帰ろ!!」

碧へ嫌がらせをしたグループは謝りもしない。そして、自分の鞄を持ってバタバタと慌てて教室を出ていった。


「ったく、何だよーあいつら!」

怒った声が小さく聞こえた。そして、その声の主が碧の前にやって来た。

碧がびっくりして顔をあげると、いつもと違う顔をした桜木陽が立っていた。



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