第8話 ⭐仲間のいる場所⭐

陽はサッカー部に入った。背は高いが、少しぽっちゃりしてる為、練習はきつかった。

「桜木ーー走れーーーー!!」

先輩からしごかれる毎日だ。砂ぼこりをたてながらダッシュをする。

「うぉりゃぁーーー」

「ほらー、桜木ー、遅い遅い!!」

先輩からの喝がとぶ。


(くっそっ!!!!!)

陽は必死に走っている。

「ほらーー! もう一回!!!」

「んにゃろー!!!」

授業中の陽とはまるで別人だ。

先輩にしごかれ、仲間にちゃかされながらも、必死でボールを追いかける日々。部活終わりには、水でじゃぶじゃぶと顔を洗う。そして、着替えながら仲間と会話をする。学校から駅に向かう道の途中に人気のパン屋さんがあると、先輩が教えてくれた。


陽は部活の終わりに、仲間とそのパン屋に行ってみた。見た目は昔ながらのパン屋さんで、夫婦でお店をやっている。

おじさんは、どちらかというと無口で、いつも奥でパンを焼いている。夕方でも焼きたてのパンを目当てにお客さんが集まってくるのだ。無口なおじさんだが、店頭に並ぶパンはとても美しく、可愛らしい物が多い。看板娘のおばちゃんは、学生達にも人気者だ。

「あら、いらっしゃい!」

と、とびきりの笑顔で皆を迎えてくれる。

陽はそこのパンが大好きだ。


「陽、帰りにパン屋行こうぜ!」

「あのおばちゃんのパン屋さん?」

「そうそう! 今日は何パンにしようかなぁ」

「玉子サンドとカレーパーン! あと……」

「それ、食い過ぎなー」

「また、ぽちゃるぞ!」

陽の周りは仲間の声と笑顔が集まり始めていた。教室ではない居場所を見つけていた。




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