第4話 ⭐桜木 《さくらぎ》陽《はる》⭐
「ちょ、母さん。これ、やって!」
「昨日教えたでしょ」
「ネクタイの結び方なんて、すぐに覚えられないよー」
陽は、朝から気がのらない。
「これを、ここに通して、はい出来た!」
鏡を覗く。
「ありがと。じゃ、行ってくる!」
陽は靴を履いて、鞄を持った手を肩にかけた。
「行ってらっしゃい!」
と母親に見送られて玄関を開けた。
新しい制服に新しい靴は、慣れないせいか履き心地が悪く、歩きにくい。白いシャツにブルーのチェックのパンツを履いている。
パンツと同じブルーのチェックのネクタイをして、紺色のジャケットを羽織り、鞄を肩にかけて歩く。
(なんだよ、ブルーのチェックのネクタイって。ダッサ……)
駅から少し歩くと学校までの道沿いに桜の木が同じ間隔で植えられていた。温かな日差しに照らされながら、桜の花は満開に咲き誇っている。
今日から陽は高校生だ。背は高く、スラリと伸びた足。食べる事が大好きな陽は少しぽちゃっとしていて、いつも気だるそうに歩いていた。
『入学おめでとうございます』
ピンク色の紙の花で飾られた門が見えた。
特にこれといってやりたい事もなく入った高校で何をしようかなぁーと考えながら門をくぐった。
案内されて靴箱を見つけて、靴を履き替える。
(何だか鼻がムズムズする……)
特に友達が多いわけでもなく、静かに過ごした中学校の生活を終えて高校生になった。
1年3組
教室を探しているとドンッとぶつかった。
「ごめんなさい!」
「こちらこそ、ゴメン」
少し笑顔を見せた。
(びっくりさせてしまったかな)
ぶつかった女子はこちらをほとんど見ずに、ペコリと頭を下げて行ってしまった。
それが、
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