エピローグ 病魔の治療を終えて

100. ユーシュリア公爵の総括

 念のためこの先の村も見て回り、同様の症状が出ている人がいないか調べて回ったけど、それはなかったみたい。

 今回の騒動は、退治された魔物一匹で起こされたようだね。


 私たちも引き上げ準備をして撤収すると、フルートリオンの街にはユーシュリア公爵様が来ていた。

 なんでも今回の騒ぎを受け、飛んできたらしい。

 為政者っていうのも大変だ。


「戻ったか、ローレン。して、村の状況は?」


「壊滅した村がふたつ、凶暴化段階で収まった村がひとつ、それ以外に症状が出ている村はありませんでした」


「そうか……詳しい話は冒険者ギルドで聞こう」


「はい。そういたしましょう」


 私たちは冒険者ギルドに入り、ギルドマスターたちも含めた会議を開いた。

 議題はもちろん、今回の魔物騒動について。

 ローレンさんが今回の魔物の特徴と対処方法をみんなに伝えていく。

 それに対し、一喜一憂しているのは冒険者ギルドマスターだ。


「ローレン、他に有効な判別法や治療法はないのかね?」


「恐れながら、ございません。今回の魔物の一番厄介なところは、一度寄生されると取り除くのが困難なことです。寄生されてしまった場合、浄化の炎を浴びてもらうのが一番でしょう」


「ううむ、困ったな。物質に影響を及ぼさず、魔の物だけを焼き払えるほど密度の濃い浄化の炎を扱える術者はこの冒険者ギルドに所属していない。どうすれば」


 私なら扱えるけど、私は冒険者じゃないから除外みたい。

 でも、どうするんだろう?


「落ち着け。なんのために私が出てきたと思う」


「はっ、ユーシュリア公爵」


 ここで話を聞いているだけだったユーシュリア公爵様が口を開いた。

 一体どんな提案をしてくれるのかな?


「今回の一件を受け、我が領の騎士団から主要な都市に一名ずつ浄化系の魔法を使える者を配置することに決めた。今後はその者たちに頼るといい」


「はっ。寛大なる処置、ありがとうございます」


「構わん。ローレン、今回の討伐と治療に当たり、他に気になった点は?」


「そうですね。やはり錬金術士の治療薬の効果が高かったことでしょうか。錬金術士の薬がなければ手遅れだった者も多数いました」


「ううむ。そればかりはどうにも出来ないな。今回、ノヴァが同行したからこその特例だろう」


「はい。ですが、やはりどんな状況でも使えるように常備しておきたいのが本音でございます」


「そうか。ノヴァ、治療を行う際の常備薬として薬を売ってもらうことは出来るか?」


「はい、出来ます。出来ますけど、やっぱり、この街限定ですよね?」


「そうなってしまうな。まったく、神殿連中が邪魔くさい」


「ははは……」


 こればっかりはどうにも出来ないなぁ。

 神殿って街の人たちの心を支えているとも聞くし、なくなると困ると思う。

 元々ないフルートリオンが特殊なだけでさ。


「それで、アストリート。お前も治療に帯同したのだったな。現場に出た雰囲気はどうだった?」


「私が想像していた以上に張り詰めていて恐ろしいものでした。そんな中、患者の容態をみて的確に薬を使っていくローレンやノヴァ様がとても輝かしく見えました」


 輝かしくと言われてもなぁ

 私もこの四年間で慣れちゃったし。

 冒険者さんって怪我が多すぎだよ。


「うむ、それならば帯同した意味もあるというものだ。お前もそうならねばならん。今後も実地で経験を積め。いいな」


「はい、お父様」


「それから、ヘレネ。お前、フラッシュリンクス様に斬りかかったらしいな?」


「それは……はい」


「お前の軽はずみな行動で国が滅んでいたかもしれんのだ。お前をこのまま騎士にしておくわけにはいかぬ」


「はい。処分は覚悟の上です」


「よろしい。延び延びになってしまったが、お前はアストリートの護衛の任から外す。後継の者は既に来ている。そちらに引き継ぎをしろ。いいな」


「はい。承知しました」


 ヘレネさんはやっぱり解任か。

 まあ、仕方がないよね。


「……さて、フラッシュリンクス様はお怒りを鎮めてくれるだろうか?」


「怒りを鎮めるもなにも、気にしてませんでしたよ。小バエが一匹飛んできた程度です」


「そうか。ヘレネはこれでも腕利きだったのだがな。力量だけで護衛を選んでしまった私のミスだ。許してもらいたい」


「わかりました。次にお母さんに会ったらそう伝えておきます」


「助かる。この場で他に決めておくことは?」


 これ以上の意見は特になし。

 私たちもヘレネさんが後継の騎士さんと入れ替わったくらいで、特に変わりはないかな。


 季節は春に向かい、ユーシュリア医療ギルドも出来上がりつつある。

 本格稼働はまだまだ先だろうけど、これが完成した暁には病で亡くなる人がもっと少なくなるといいな。



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辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

をお読みくださりありがとうございます。

現在、第三部を作成中ですのである程度出来るまで休載とさせてください。

申しわけありませんがよろしくお願いします。

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辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~ あきさけ @akisake

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