9. 従魔契約に挑戦!
『それでは、試してみよう。まずはあの魔法陣の中に入るんだ』
「うん」
わたしは長男フラッシュリンクスさんの指示通り次男フラッシュリンクスさんが描いてくれた模様の中に入った。
その中心に立つようにという指示だったので、中心で立って次の指示を待つ。
でも、次の指示は来なかった。
『さて、契約開始だ。本来ならノヴァの方からも魔力を送ってもらうのだが、ノヴァにはそれができないからな。ただ私の魔力を受け取ればいい。無理をしようとはするな。辛くなったら座れ。それでテストは終了だ』
「はい!」
『では、始める』
長男フラッシュリンクスさんが言葉を発すると、その全身から青い炎が噴き出し、ゆっくりとわたしの足元にある魔法陣という模様の中に吸い込まれていく。
すると、魔法陣から薄いもやのような物が出てきて、わたしに吸い込まれていった。
これが魔力なのかな?
よくわからないけど、そのまましばらく黙って待っていると体が熱くなってきて立っているのも辛くなり、座り込んでしまった。
長男フラッシュリンクスさんも炎を送り込むのをやめてこちらに近づいてくる。
これって契約失敗?
『ご苦労、ノヴァ』
「あの、契約って失敗ですか?」
『すまないがその通りだ。やはり私の魔力はお前に受け入れきれる量ではないらしい』
「そうですか……」
『こう言ってはお前に失礼だが予想していたことだ。疲れが取れるまでしばらく休め。疲れが取れたら妹との契約を試してみよ』
「はい。わかりました」
この後、長女フラッシュリンクスさんと次男フラッシュリンクスさんとも契約を試してみたけどやっぱりダメ。
ちょっと自信がなくなってきた。
でも、最後に末っ子フラッシュリンクスさんが残っているし頑張らなきゃ!
「疲れは取れました。契約、いつでも始められます」
『わかった。末妹よ。くれぐれも一度に大量の魔力を流さないように注意しろ。それから、ノヴァが座ったら魔力を流すのをやめるんだ。いいな?』
「にゃおう!」
『わかってくれればいい。では、始めよう』
これまでと同じように末っ子フラッシュリンクスさんから炎が噴き出してそれが魔法陣へと吸い込まれる。
その後、薄いもやがわたしに吸い込まれていくんだけど、末っ子フラッシュリンクスさんのもやは全然苦しくならない。
むしろ、頭がさえてくる感じがする。
ああ、なるほど。
これが魔力なんだ。
確か、本来ならわたしも末っ子フラッシュリンクスさんに魔力を送り返してあげなくちゃいけないんだっけ。
ええと、魔力の放出ってできるかな?
うーんと、手の間に流れ込んできている温かさと同じ物を集めて末っ子フラッシュリンクスさんに届ける感じで、こう!
「にゃ!」
『な!? ノヴァが魔力の送り返しに成功している!?』
やった、上手くいっているみたい!
でも、それにビックリしたのか喜んでいるのかどっちかわからないけれど、末っ子フラッシュリンクスさんから送られてくる魔力量が多くなってきた。
わたしも送り返す魔力量を多くしないとあふれかえりそう!
急いで増やさないと!
「えい!」
「にゃふ~ん♪ にゃうにゃう!」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
★☆★長男フラッシュリンクス
『いや、本当に驚いたな。ノヴァが魔力を放出できるようになるとは』
本当に驚いたものだ。
魔力放出不全を起こしていたノヴァがそれを克服して契約を行っている。
これならば失敗しても魔力が扱える可能性がある。
『もうすぐ契約終了かしら?』
私がひとり考えごとをしていると、同じように様子を見守っていたお母様から尋ねられた。
末妹の発している魔力量を考えればそろそろか。
『そうですね、お母様。末妹の魔力量なら受け入れることができたようです』
『末妹とはいえ聖獣です。人間族の子供が受け入れるにはかなり厳しい魔力量のはずなのですが……』
確かに。
よく考えれば人間族は魔力に秀でたヒト族ではない。
末妹はまだ赤子の領域を脱したばかりとはいえ聖獣だ。
その魔力を受け入れられるとは、一体どういう意味を持つ?
『兄さん! 魔法陣が消えたわ! 契約成功よ!』
『おお、本当だな! よくやったぞ、ノヴァ! ……ノヴァ?』
ノヴァの様子がおかしい。
立ってはいるのだが妙にぼうっとしているというか、意識が定かではない様子だ。
これはどういう?
『あ、ノヴァ!?』
『む!? いかん!?』
ノヴァがそのまま後ろに倒れ込みそうになった。
間一髪、後ろに回り込んで支えてやることに成功したが意識はないようだ。
「みゃーう……」
『心配するな。お前のせいではない』
末妹が心配そうな声をあげているが末妹のせいではないだろう。
魔力の受け渡しに疲れて倒れ込んだだけといったところか。
心音も安定しているし、呼吸も安定している。
ただ、皮膚の温度が妙に高いのが気にかかるが、それもすぐに収まるはずだ。
『お母様、ノヴァを寝床に寝かせてきてもよろしいでしょうか?』
『……』
『お母様?』
『え? ああ、そうね。そうしてちょうだい』
お母様は何かを考え込んでいたようだが、何かあるのであれば教えてくれるだろう。
ともかく、いまはノヴァを休ませてやることが先決。
ゆっくり休めよ、ノヴァ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます