8. 従魔契約の準備

 長男フラッシュリンクスさんに聞いて〝従魔契約〟について大体わかった。

 そして、いまのわたしでは無理なことも……。


「……………………」


 わたしは結局何もできないことで落ち込んでしまった。

 お兄さんお姉さんたちも戻ってきているけど、簡単なあいさつしかできていない。

 ああ、ダメだなぁ、わたし。


『兄さん。ノヴァを元気づけてあげて』


『う、うむ。しかしだな』


『兄貴、説明の仕方がまずかったんだろう? 最初にいまのノヴァじゃできないって教えておけよ』


『う、うむ』


『そうね。そこから入るべきだったわね』


『お母様も気付いていたなら、その場で注意を……』


『あなたが取るべき責任だもの。頑張ってね』


『わかりました。あー、ノヴァよ。従魔契約ができないことはあまり気にするな。いまのお前はまだまだ子供なのだ。気にせず我々の庇護下にあればよい』


 やっぱり役に立てないのか。

 残念だなぁ。


『兄さん。さらに落ち込んだわよ?』


『兄貴、言い方を考えろ』


『ええい、どう言えばいいのだ!?』


「にゃふ~」


 落ち込んでいるわたしの元に末っ子フラッシュリンクスさんがやってきた。

 そしてキラキラした瞳でわたしを見上げてくる。

 これは……なでてほしいという合図かな?

 軽く頭をなでてあげると気持ちよさそうにすり寄ってきたし正解なんだろう。

 わたしは末っ子フラッシュリンクスさんの導くまま、全身をなで回してあげることでちょっと元気が出てきた。

 うん、末っ子フラッシュリンクスさんはかわいい。


『兄貴、おちびに負けてるぞ』


『くっ……』


『でも、実際のところどうするの? 根本的な解決にはならないでしょう?』


『そうだな。実際に我々と従魔契約を試してもらうとするか。できないことがわかれば諦めてくれるだろう』


 え?

〝従魔契約〟を試させてもらえるの?

 いいのかな、そんなことして。


『いいの? もし成功したときは?』


『普通に従魔として接すればよいだろう。どちらにせよまだまだノヴァは守ってやらねばならない。家族なのは一緒だ』


『それもそうだな。よし、それじゃあ、準備をするか』


 次男フラッシュリンクスさんが地面に模様を書き始めた。

 あれって何だろう?

 不思議な感じがする。


「あの、長男さん。次男さんが描いている模様って何ですか?」


『あれか? あれは従魔契約で用いる魔法陣だ。従魔契約に失敗しても、契約を試した者に極端な負荷がかからないようにするためのな』


「ふか?」


『ああ、わかりやすく言えば気持ち悪くなったり痛くなったりしないための物だ』


「なるほど」


 またひとつ勉強になった。

 フラッシュリンクスさんたちはいろいろと知っているね。

 わたしも勉強しなくっちゃ。


『魔法陣、完成したぜ』


『うむ。描き間違いはないな。よくやった』


『おう。それで、誰から試す?』


『長兄であるわたしから試そう。ダメだったら妹が試せばよい』


『わかった。私でもダメだったら弟ね』


『おうよ』


 どうやらフラッシュリンクスさんの兄妹全員が契約を試してくれるらしい。

 本当にありがたいな。


「にゃにゃにゃにゃ!」


 フラッシュリンクスさんの兄妹で順番が決まった後、末っ子フラッシュリンクスさんが騒ぎ出した。

 一体なんと言っているんだろう?

 わたしにはわからないんだよね。

 長男フラッシュリンクスさんに聞いてみよう。


「あの、末っ子さんはなんと?」


『その、ダメだったときは自分も試すと』


「大丈夫なんですか?」


『これでもヒト基準で言えば非常に強い力を秘めているからな。契約自体は失敗しても問題ない。契約が成功したとき、ノヴァにできることが増えていないかを確認する事が主な目的だ。いざとなれば末の妹でも問題あるまい』


 なるほど、そう言われてみればそうかも。

 わたしにできることが増えるかを試すんだから、契約相手は末っ子フラッシュリンクスさんでも問題ないよね。

 強い相手といまから契約する必要なんてないんだ。

 ちょっと焦りすぎていたのかな。

 うん、反省。

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