3. 白き獣、聖獣フラッシュリンクス
熊さんに食べられかけたあとは白い獣に話しかけられた。
一体どうなっているの?
『ああ、混乱させてしまったみたいね。少し落ち着きましょうか』
「あ、うん」
白い獣はこっちに近づくわけでもなく、ただただ優しい視線でわたしを見つめてくれるだけ。
なんだかとっても温かい。
『少しは落ち着いたかしら、お嬢さん?』
「うん。落ち着いた」
『それじゃあ、少しそっちに行ってもいい?』
「いいよ」
『では』
白い獣はわたしが怯えないようにゆっくりと近づいてきてくれる。
近づいてきたからわかるけど、この獣って猫さんだ。
わたしの背よりもずっと大きいけれど見た目は猫さん。
かわいいなぁ。
『さて、これくらいの距離なら落ち着いて話せるかしら。私の種族名だけど聖獣フラッシュリンクスと言うわ』
「せいじゅうフラッシュリンクス?」
『聖獣というのは高度な知能を持ち浄化などを行う聖なる存在……と人が考えているものよ。当たらずとも遠からずなんだけど』
「へえ?」
『ああ、お嬢さんには難しい話よね。ともかく、あなたに危害を加えるつもりはないの。それだけは理解してちょうだい』
「わかった! フラッシュリンクスの視線はぽかぽかしてて温かいから好き!」
『ふふ、ありがとう』
あ、フラッシュリンクスさんが笑ってくれた!
なんだかこっちまで嬉しくなっちゃう!
でも、浄化を行う聖なる存在かぁ。
そんな存在がいるだなんて初めて聞いた。
街とかに行けば有名なのかな?
『それで、あなたはなんでこんな森の奥にいるの? 襲われていたからつい助けちゃったけど』
「え、森の中?」
『そうよ、森の中。わかるでしょう?』
「……夢じゃないの?」
『夢?』
「目が覚めたらここにいたの。お洋服もなくなっていたし、夢なんだと思っていたけど違うんだ……」
そっか、やっぱり夢じゃないんだ。
わたし、お父さんとお母さんに捨てられちゃったんだ。
わたし、悪い子だったのかな?
魔力がないって悪い子の証だったのかな?
『ふむ、どうやら穏やかな話ではないようね。経緯を説明してもらえる?』
フラッシュリンクスさんはわたしの話を聞きたいみたい。
でも、そんなにお話できることもないなぁ。
「うーん、わたしもあまり覚えていないよ?」
『構わないわよ。どうせこんな森の中、人っ子ひとり来やしないもの。害獣も私が側にいれば追い払える。気にせずお話しなさいな』
「うん、えっとね……」
どこから話せばいいのかわからなかったから、朝目覚める前にごちそうを食べたことを話した。
でも、それだけだと足りないってフラッシュリンクスさんに言われたのでもうちょっと前、神官様に祝福を受けたときの話を聞いてもらったんだ。
すると、フラッシュリンクスさんは首をかしげてぽつりとつぶやいた。
首をかしげたフラッシュリンクスさんもかわいい。
『あなたが魔力ゼロ?』
「そう言っていたよ。わたしは魔力なしだって。お父さんもお母さんも神官様に何度も尋ねていたもん」
『そんなことないはずよ? 私が今日ここに来たのだって不自然に強い魔力を感じたから来たの。その発生源は間違いなくあなただわ』
わたしが不自然な魔力の発生源?
どういう意味だろう?
『あのね、魔力の強い者が感情を揺らがせると魔力の流れに歪みができることがあるの。私はそれを感じたからここまでやってきたんだけど、原因はあなただったわけ。実際、いまは魔力の歪みが消えているもの』
「そうなの? わたし、魔力がないって言われたよ?」
『でも、私はあなたから強い魔力を感じるわ。少しあなたに触れてもいい?』
「え? うん、いいよ」
フラッシュリンクスさんはわたしの許可を得るとゆっくりわたしの側までやってきて、前脚を私の手の上にちょんと乗せた。
すると、そこから虹色の光が漏れ出し始める。
あれ?
これってなんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます