俺、拾われる。
ドアの向こうにいた女性はコップと葉っぱをのせたおぼんを持ってやって来た。背丈は160cmほど、黒髪ショートヘアで白のシャツに黒いロングスカート、そして紺色のエプロンをつけていた。
「どうですか?気分は良くなりましたか?」
そう言うと彼女は俺の寝ていたベットに腰をかけて、葉っぱを透明な液体のはいったコップへと入れた。すると、それまで透明だった液体は鮮やかな青色へと変化した。彼女はそれを2つ作ると、俺たちに渡してきた。
「これをどうぞ。気分が良くなりますよ。」
俺は無言でそれを受け取り、まじまじと見つめた。なるほど、これが異世界で言うところの回復薬のようなものなのだろう。そんな俺を不思議に思ったのだろう。
「どうしたんですか?初めて見るような顔をして見つめて。ただのハーミルですよ?」
「「八ー…ミル?」」
俺とヘレナは思わず聞き返してしまった。
「ハーミルですよ。万能薬草のハーミル。」
なるほど、やはりこれは回復薬だったのか。
「い、いや。なんでもない。俺の地域とは少し違う色をしていたからな。」
馬鹿と思われたくない一心に俺は言い訳をし、一気に飲み込んだ。
「ハーミルは青しかないと思ってました。他の色でも反応するんですねー。」
彼女はそういって謎に感心していた。何だかこっちが申し訳ない気持ちになってくる。
「それはそうと、ここはどこですか?」
ハーミルを飲み終えたヘレナはそういって女性へと問いかける。
「ここですか?ここはエスカボークルです。」
きたきた!異世界っぽいぞ!俺は心の中でひとりテンションが上がっていた。
「エスカボークル?」
ヘレナが聞き返す。
「はい。商業と人情の王国ペルセフォネの第6都市、エスカボークルです。ご存じないですか?」
俺はここでひとつ疑問が湧いてきた。
「俺らはなぜここに?」
すると彼女は少し困った顔をして俺たちに苦笑いをすると。
「それが私にも分からないんです。」
「分からない…というと?」
俺が思わず聞き返す。
「本当に分からないんです。失礼ですが、どこかで会ったはずなのに思い出せないと言いますか、もともといらっしゃったようなのですが、何か違うというか…とにかく言葉に表せない感じで分からないんです。」
俺はここでずっと思っていたことを口にした。
「実は俺もあなたにあったことがあると思うんです。」
「本当ですか!?」
彼女はやっぱり会ったことあったんだ!というような顔をして俺を見つめてきた。
「でも、それはありえないんだ。」
「え?」
「説明は難しいんだが、とにかくありえない。」
俺は彼女が誰かを確信していた。 前世で本屋でアルバイトを毎日してくれていた女の子だ。しかし、転生をしている以上それはありえないだろう。
「そう…なんですか。」
「あぁ……。」
彼女は少し考えた仕草をして、俺たちにいった。
「とにかく、私もあなたがたも分からないです。でも、行く宛ては?」
「「ないです。」」
俺らは口をそろえてそう言う。
「ならここにいて頂いて結構です。支度が出来たら
お呼びしますので下に来てください。」
彼女はそう言うと俺たちに笑いかけて部屋を出ていった。するとヘレナが。
「アサギリさん、あの人と知り合いなんですか?」
「いや、転生前の職場で同じだった方に似ていて。でも、転生してるのでありえないですよね。」
「そうですね……転生しちゃったみたいですからね。」
ヘレナはそういうとまた落ち込んだ様子を見せた。なにかフォローしてあげなくては。
「あぁ、ヘレナさん、そう落ち込まないでください。何とかなりますから、ね?」
俺がそう言うとヘレナは顔を上げて。
「そうですね。悩んでても仕方ないですしね。よし、何か行動しましょう!」
ヘレナは俺が思ってる以上に前向きな性格みたいだ。そう言うと、ヘレナは意気揚々と扉を開け、階段を降りながら。
「なにかお手伝いできることありますか...?」
すると下から慌てた声が聞こえてきた。
「あぁぁ!大丈夫です、大丈夫ですから!……なんでそんなに引いた目をしてるんですか!慌てて今掃除してる…あぁ、やっぱり引いてる!引いてる目してる!」
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