俺、初めて知り合う。

俺が階段を降りると広い部屋が広がっていたが、床には本や紙が大量に散らばっていた。彼女は部屋の片隅で顔を真っ赤にしながら諦めたかのように座っていた。




「すいません、こんなに散らかっていて。いまお茶を入れますね。」


 


別に散らかっているのを気にしなかった俺は床に落ちていた本を1冊拾い上げると表紙には「ジャクソン・スタービッツのアルファディア観光ガイド」と書いてあった。また、別の本には「基礎薬草学」「サーヴァント物語」と聞きなれない言葉が羅列していた。こんなにも本があるということは彼女は相当の読書愛好家なのかもしれない。




「なんでこんなに本があるんですか?」


「え……あぁ、実はですね」


 


彼女が言うに、ここにある本は全て両親のものらしい。ある日突然両親が姿をくらまし、家に大量にあった本を処分しようと取り出したらしい。




「ですけど、私本が好きでして捨てようにもなかなか捨てられないんです」


 


彼女はそう言うと窓辺にある小さな木製の机に湯気のたったコップと水色の羊羹のような食べ物を置き、階段の下にいた俺たちに笑いかけた。




「自己紹介がまだでしたね。私はレナ、レナ・オーヴェン=レイボルトと申します。」


 


その時俺は思い出した。




「レナ……?やっぱり、レナだよな?」


「えっ……?レナですけど。」




俺はこの時、前世で書店を開いていた時のことを思い出していた。あの時唯一アルバイトで一緒に働いてくれていた女子高生の名前は鈴鹿伶奈。黒髪ショートヘアの元気な女の子だった。いま目の前にいるレナはアルバイトの高校生、伶奈と全く同じ容姿をしていた。しかし、あの伶奈がこちら側の世界に来ているはずがない。彼女は火災があったあの日早めに帰宅させたはずだ、火災に巻き込まれたのはありえないだろう。


 


俺の変な様子を察したのか、ヘレナが俺に小声で尋ねてきた。




「朝霧さんなんか変ですけど、どうかしましたか?」


 


俺はヘレナになら話してもいいと思い、事の詳細を話した。




「ん〜、それは不思議ですね……伶奈さんがこちらに来ているはずは無いですから。もし来ているのなら私が転生を2回失敗したことになりますしね。」


 


俺らは彼女の正体に頭を悩ませるばかりであった。するとレナは俺らに声をかけてきた。




「どうしたんですか?こちらでお茶とお菓子を用意したので良ければ御一緒にどうですか。」


 


俺らはレナの好意に甘えてお茶にすることにした。

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