第127話
その後、俺たちは順調にダンジョンを攻略していった。
玲奈が俺と相性の悪い敵を倒してくれるし、彼女の守りは直人が担ってくれる。倒しきるのが困難な敵の大群はさきのんの魔法で一掃しながら進んできた。
やっぱり魔法使いがいるのは助かるな。
素材集めの効率が段違い。
俺は以前、他人とパーティーを組むのが出来なかった。でも今は玲奈が一緒なら問題なくなっている。改めて複数人での攻略の面白さと、効率の良さを実感していた。
現在は第5等級、獣のダンジョンを攻略中。
「直人! 強い攻撃がいった」
「了解、アイアンシールド!」
狼のモンスターが口から吐いたブレスを、直人がスキルを発動させて防ぐ。
彼はどの攻撃をスキルで防ぐべきか判断が出来ない時がある。まぁ、見た目だけじゃわかんないから仕方ない。俺はFWOがゲームだった頃に何度か攻撃を受けて、これはダメだと思ったやつをスキルで受けるような癖をつけてきたから感覚で分かる。
とはいえ直人も少しずつその感覚が身につきはじめていた。
「玲奈、右奥の敵をお願い」
「はーい」
「さきのんは左側の、大きな熊を狙って」
「おっけー!」
直人たちと組むまでは指示を出すのは玲奈にだけだった。それが3倍になった。もちろん大変なんだけど……。
「この感じ、すっげぇ楽しい」
最強クラスの装備を身に纏い、高い運動能力を持つ仲間が正確に俺の指示に従って動いてくれる。ソロで挑んだときはそれなりに苦戦したモンスターの大群を容易く殲滅できてしまう。
もともとFWOは複数人で協力してダンジョンを攻略していくのを目的としてつくられたゲームなので、今やってるのが本来の進め方なんだ。
パーティーを組めば、その人数に応じてボスの体力が強化されてしまうというデメリットがあるんだけど、それ以上にメリットがある。
数の暴力。
ひとりが4人になるだけでこれ。
じゃあ、俺が鍛えたSランクのみんなが合流したらどうなるだろう。
タンクやアタッカー、サポート、ヒーラー。
全てが揃ったパーティーによる攻略。
想像するだけでワクワクする。
──***──
中ボスのグレイトベアを倒し、ボスの間。
「ラスボスだね。ちなみにここのボスは第5等級ダンジョンの中では一番強いから」
「なんでそんなところを攻略対象に選んだんだよ」
直人がちょっと不満そうだった。
「人のダンジョンは俺と玲奈がクリアしてるし、俺たちの目標は第6等級ダンジョンの踏破だもん。どうせならこの4人で挑戦出来る時に難しい方をクリアしときたいなって思った。てことでみんな、頼りにしてるよ」
「颯に頼られるのは悪い気がしない」
「うん。私も」
「がんばろー!」
やる気になってくれたみたいで良かった。
「ラスボスって白虎だよな? 四神獣の」
「そう。残りの四神獣は第6等級ダンジョンの中ボスになってる。んで、ここの白虎はそれとほぼ同等の強さだった。その設定のままなら、ここで白虎を倒せれば俺たちは次のダンジョンでも中ボスを倒せるってこと」
装備の強化率とか、使う武器の属性にも依存するけど。
「白虎が赤みがかったオーラを纏った時は武器破壊の攻撃を攻撃を仕掛けてくる。スキル発動させずに受けると直人の装備でも一撃で壊されちゃうから。ビビってスキルを発動させるタイミングをミスるなよ」
「おけまる。赤のオーラを纏ってる時以外は俺の防御力で防げる?」
「問題ない──って言いたいけど、絶対じゃない。ゲームの時とは仕様が変わってるかもしれないし」
ゲームの設定であれば、直人のステータスで余裕だった。しかしそう思うのは油断に繋がる。現実世界に出現したダンジョンでの油断は死に直結している。
俺はまだ死にたくないし、仲間の死も見たくない。
「危なそうな攻撃が来たら俺が指示するけど、最終的には直人の直感に任せることになるかもしれない。例えば──」
少しだけ直人に殺気を向けてみる。
「うおっ!?」
反射的に直人がスキルを発動させて身構えた。
「な、なにすんだよ!」
「颯君、なんのつもり?」
さきのんが真剣な表情で直人を守るように前に出てきた。
直人だけに向けた殺気だったのに、アレを感じ取れたんだ。
「え、えっ? なに? みんなどうしたの?」
玲奈はなにも感じなかったみたい。
さきのんの感覚が鋭いのかな?
「ごめん。直人が本当に危ない攻撃に反応できるか試してみた」
「頼むから二度とやんないで。マジで死を感じた」
「私も。あれは人に向けて良いのじゃない」
「はい。気を付けます」
怒られてしまった。
反省しなきゃ。
でも直人とさきのんが危ない攻撃を見極める力があることが分かったのは収穫かな。アレに反応できるなら、白虎が通常攻撃の中に潜ませる強攻撃があったとしても防御できる。
「今日ここを踏破したら、飯はいつものとこで俺が奢る。それでさっきの許して」
「デザートもつけてね」
「ドリンクバーセットな」
「私もいいの?」
「玲奈もいいよ」
配信で稼いでますから。
とりあえず許してもらえそうで良かった。
さて、そろそろ行こうか。
「ボスが白虎じゃない可能性も捨てないでね」
「はーい」
「りょ」
「わかった」
「それじゃ、いくよ」
ボス部屋の扉に手をかけ、玲奈たちと一緒に中へ踏み込んだ。
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