第125話 〈配信コメント欄〉


 第3等級『林のダンジョン』で、颯が配信を始めた。


〈1コメゲット!〉

〈ハヤテ無双のお時間です!!〉

〈いや今回はマジで空白が長かった〉

〈SNS、更新しような?〉

〈お兄さんたちとの約束だぞ〉


「えっ。これもういける?」

「いけるよ。たぶん」

「おふたりとも、ファイトです!」


 颯と玲奈の前に直人と芽依が出てきた。

 

「みなさん、おはよーございます。直人です」


「さきのんです!」


 ここは颯のブースのはずだが、はじまりの挨拶をするために前に出てきたのが直人と芽依だったので視聴者たちは少し困惑する。


〈ん? あぁ、おはよ〉

〈おはよー〉

〈どうしたどうした?〉

〈今回も直人君たちがメインかな?〉


「俺と芽依は颯たちと一緒に攻略してるけど、多分ほとんどの人が颯のブースで閲覧してると思うので、攻略開始前にちょっとだけ宣伝させてもらうことにしました。できれば俺と芽依のブースにも登録お願いしまーす」


「私たちのブースにも登録しておいてもらえれば、颯君のブースで攻略の様子を見ていても私たちに少しお金が入ってくるみたいなんです」


 パーティーを組んで攻略していれば、この仕様が適用される。


「てことで装備強化資金調達のため」

「どうかご協力お願いします」


 直人と芽依が揃って頭を下げる。

 その横に颯と玲奈が並んだ。


「俺たちからもお願いします」

「私のブースも登録してね!」


〈そゆことね〉

〈おk把握〉

〈登録したよー〉

〈私はもう登録済み〉

〈同じく!!〉


「さて、こんなもんかな。ところで皆さんは昨日の女神様ちゃんの神託を聞きましたよね。あれ、どう思いました?」


〈もち聞いたよ!〉

〈全世界中に流れたらしいな〉

〈どう思うって、そりゃお前〉

〈あれね、どう考えても〉

〈ハヤテへのメッセージでしょ!〉

〈ついに神から催促されおったw〉

〈攻略サボってるからだぞww〉


「攻略サボってる俺へのメッセージだって、言われてる気がする」


「うん。きっとコメント欄はそんな感じだと思う」


「私たちでもわかるよ」


〈なんでサボってたの?〉

〈学園が忙しかったとか?〉

〈東雲学園か〉

〈初日から暴れてたもんな〉


 颯は入学初日から南雲財閥の御曹司である南雲 龍之介をPVPでボコボコに打ち負かすという騒動を起こしていた。


 ただそれ以降、SNSなどに東雲学園の情報が流れることはなかった。


 世界最強の攻略者である颯と玲奈の情報を得ようと他国が動いていることを愛奈が把握し、情報の規制を実施したのだ。そのためこのダンジョン強制配信が約2か月ぶりとなる情報発信の場となった。


「俺たちがしばらくダンジョンに入らなかった理由ですが、直人とさきのんにハヤテ式ダンジョン攻略講座ヘルモードを受けさせて、強くなってもらってました!」


「あれはマジで地獄だったよ」

「でも強くなれたと思う」


〈ヘ、ヘルモード?〉

〈それはハードモードより上なの?〉

〈ゲームだとそうだね〉

〈縛りプレイが好きな変態用設定〉

〈ハードモードで偽ハヤテ倒せたな〉

〈それじゃヘルモードって〉

〈マジでヤバいヤツなんじゃ…〉


「実は私も受けてました。私も前より強くなれた気がします!」


〈あ、エレーナも受けたんだ〉

〈じゃあ安心かな〉

〈ん? なんで?〉

〈だって颯君だもん〉

〈玲奈ちゃんに酷いことしないでしょ〉

〈流石にそこまで鬼じゃないよね〉

〈なるほど。そりゃそうか〉


 玲奈も一緒に訓練を受けていたことから、ヘルモードと言ってもそれほどキツい訓練ではなかっただろうと視聴者たちは考えた。しかしそれは間違っている。


 颯が言うことを嬉々として受け入れ、どんな苦行も喜んで行う玲奈はどちらかというと周囲を巻き込んで颯の訓練をより過酷なものにしてしまう側の人間だった。



「ようやく身につけた力を見せられるね」


「おう。地獄の特訓の成果を発揮しますよ、颯先生!」


「私たちも」

「「がんばりまーす!」」


〈エレさきペアいいね〉

〈息ぴったり〉

〈かわえぇのぉ〉

〈良き良き〉

〈みんながんばれー!〉


 視聴者たちはヘルモードがたいしたことないものだと誤解した。


 だがそれは、一般人を忍者級にしてしまう訓練。


 ハヤテ式ダンジョン攻略講座ヘルモードを乗り越えた直人たちは、小刀1本で銃弾を防げるまでに成長している。そんな状態であることを本人たちもまだ知らない。



女神様ちゃんエンドコンテンツが俺たちを待ってるみたいなので、ハヤテ式四刀流推進室はこれから本気でダンジョン攻略を再開します!」

 

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