第120話

 

「今日は特別ゲストを呼んでいるよ」


 朝のHRが終わり、スミス先生がそう言った。


「特別ゲストだって」

「誰だろ?」

「スミス先生が特別って」

「颯君とかもいるのに」

「先生とか颯君より特別なのかな」


 あ、俺も特別枠なんだ。


 でも誰が来てくれるかは気になるな。FWOで最強だったスミス先生がいて、リアルのダンジョン攻略速度では現在世界最高の俺と玲奈がいる。龍之介や、一馬さんたちもかなり攻略が進んでいるみたい。


 そんな教室に誰がゲストとして来てくれるんだろ?


 もしかしてFWOの運営さんとかかな?


「それじゃ、入ってきてー」


 みんなの視線が入り口に集まる。

 しかし誰も入ってこなかった。


「誰もこない?」

「どゆこと?」


「あはは。ごめんごめん、冗談だよ。ところで颯君、ちょっと前に来てくれる?」


「え、あ。はい」


 なんかスミス先生に呼ばれたので、席を立って教室の前に向かう。


 誰が来てくれるんだろうってちょっと期待してたんだけど、なんだ冗談か。


「先生、なんですか?」


「うん、来てくれてありがと。てことでみんな、今日の特別ゲストです」


「……は?」


「先進国が派遣した特殊部隊でも踏破できなかった黒のダンジョンを世界最速でクリア。その後たったひとりで第3等級まで踏破して、東雲 玲奈さん含むトロフィーにさせられた複数人を救出。アメリカ合衆国大統領にも認められた最強のダンジョン攻略者、雫石 颯君です」


 なんで先生が俺の紹介してるんだろ。


「せっかく最強がここにいるんだから、彼にも授業してもらった方がいいよね」


「あ、あの。なにも聞いていませんが」


「昨日思いついたんだもん。誰にも言ってないよ」


 なんすか、それ。

 そんなの可能なんですか?


「てことなんだけど、いいよね? 東雲理事長」


「はい、問題ないです! 私もハヤテの授業受けたいし」


 玲奈が返事をしていた。

 ここの理事長になってたんだ。


 もともと東雲学園の設立を提案したのも玲奈だっていうし、これに関してはあんまり驚かないな。


「理事長の許可も出た。あとは君のやる気次第だよ颯君。私としては、FWOをやったこともなかった直人君と芽衣さんをSランクまで鍛え上げたという、ハヤテ式ダンジョン攻略講座ハードモードってのをここにいるみんなにもやってあげるのが良いんじゃないのかなって思ってる」


「えっ。あ、アレを?」

「みんなにも?」


 直人とさきのんが若干ひいてた。


「俺は強くなれるならなんだってする」

「俺もっす」

「颯先生、よろしくお願いします!」


 龍之介や一馬さん、慎吾さんはやる気っぽい。


「男性陣がみんなやるって言うなら私もやろうかな」


「颯君が教えてくれるんでしょ? やらないって選択肢はないよ」


 これで全員。


 本当にやっちゃっていいのかな?


 ハヤテ式ダンジョン攻略講座ハードモードは、早い話が俺と同じ感じで無茶な攻略ができる人を育てるってこと。


 自力でも偽ハヤテを倒せるような人らを、今まで以上に強くしてしまう。俺と玲奈のライバルを増やすことになるけど……。


 

 まぁいっか。


 ゲームと違って攻略率ランキングなんてない。もう今はライバルじゃないんだ。日本のダンジョンを一緒に攻略していこうっていう仲間たち。


 強くなってもらおう。


 ここにいるみんなでダンジョンを攻略していく。


 いいねぇ。

 

 何となくだけど、みんなの力があれば俺の最終目標である女神討伐もできそうな気がする。それだけのポテンシャルを持った人がこのクラスには集まってる。



「それじゃ、今日は俺がみなさんの先生になりますね」


 さぁ、最強のチームを作ろうか。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る