4章 第6等級ダンジョン攻略
第119話 女神と定春
「さーだーはーるぅ!」
真っ白な空間で黙々と作業する岡部 定春に、女神が背後から抱き着いた。
前は「やめてくれ」と言っていた定春だが、あまりにも女神が聞かないので今は諦めて作業を続行するようになっている。
「作業は順調? もう第6等級ダンジョンのラスボス実装できた?」
「とりあえず完了しています。てかもう第6等級ダンジョンに挑戦してる人らがいるんで、出来てなきゃマズいです」
「うんうん。やっぱり定春は流石だね。それで相談があるんだけど」
「……もしかして、またボスに同期したいとかですか?」
「正解、正解、だいせいかーい!」
両手を上げてはしゃぐ女神。
「前は第3等級ダンジョンで私がボスと同期したからね。次は第6等級ダンジョンでやるのが良いってさっき思い付いたの。それで、できそうかな?」
「もっと早く思いついてくださいよ。既に第6等級ダンジョンの中盤くらいまで攻略されちゃってるんです。まぁ、いつもの颯君たちですけど。彼らが今は少し攻略を止めてて、その隙に急いで第7と第8等級ダンジョンの実装を進めてる状況ですね。正直言って余裕はないです」
「出来るかできないかで言えば?」
出来るかと聞かれ、技術者としての誇りが無理だと言わせなかった。
「……技術的には、可能です」
時間があれば可能だが、今は颯たちの攻略速度が速すぎて対応できない。つまり無理ということ。
しかしそんな言い回しは女神に伝わらない。
「やった! それじゃ私が同期できるように、調整お願いね」
自分の言葉を呪いつつ、定春は譲歩案を提示することにした。
「わかりました。しかし女神様用の特別設定に出来るのは1体だけです。それ以外の2体は設定変更しません」
第6等級には
「1体だけかぁ。せっかくなら一番攻略が進んでる攻略者と戦いたいから、木叢のダンジョンかな」
そこは颯たちが現在攻略中だった。
東雲学園が開校してダンジョンに入る回数が減り、さらに直人たちの攻略に付き合って第1等級からやり直しているが、それでも彼らが世界で最も先までダンジョンを攻略しているパーティーなのだ。
「でも颯君たちが途中でダンジョンを変える可能性もありますよね」
「えー。そっか。じゃあ私がいるダンジョンに来てもらえるよう、またトロフィーを設定しちゃおっかな」
「それは止めましょう。あの一件でかなり女神様へのヘイトが溜まってます」
「そうなの!?」
「そりゃそうですよ。自分の好きな有名人を他の誰かに独占されちゃうって状況にさせられたら、誰でもその元凶を恨むでしょ」
好きな有名人を自分好みの性格にして独占できるなら誰もがこぞってダンジョンに挑戦してくれると思い、女神は第3等級ダンジョンで玲奈やハリウッド女優などの有名人たちをトロフィーにした。
「ガーン。人間って、そんな風に思うんだ」
真っ白な地面に膝と手を付き、落ち込んだ様子を見せる女神。
「普通に木叢のダンジョンに来てねって言っちゃえばいいのでは」
「えっ、それで来てくれるかな?」
「だって女神様って、今はこの世界のエンドコンテンツでしょう。そんな存在から挑戦状が届いたら、ガチのゲーマーは迷わず挑戦しますよ」
最悪死ぬ可能性もある挑戦だが、現在は蘇生薬も出回っている。颯の性格をよく知る定春は、彼なら来てくれると信じていた。
「そっか。私が呼んじゃえばいいんだ」
「次のボスもまだ同期率は100%にしないでくださいね。女神様に消えられちゃうと困るので」
「うん、まだしない。エンドコンテンツがストーリー途中で様子見に現れるって状況にしたいから、次は半分くらいの同期率にしよっかな」
「はい。それでは木叢のダンジョンラスボスに特殊設定を追加しておきます」
「よろしくね、定春!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます