第103話 

 

 女性の試験監督さんの後について移動してきた。


 頑丈そうな床の広いスペース。

 外周にはなんか凄そうな機械がある。 


 ここは疑似戦闘エリアって名前らしい。


「ただいまより東雲学園入学試験を行います。まずは雫石 颯さん、こちらへ」


「はい」


「ハヤテ、頑張ってね!」

「怪我しないよーに」

「でも勝負だぞ。手ぇ抜くなよ」


 玲奈たちが応援してくれる。

 直人のは激励かな。


 ランキングで1位を取れるように頑張るつもり。



 疑似戦闘エリアの前まで案内された。


「雫石さんは多刀剣士。スタイルは四刀流でお間違いありませんね?」


「はい」


「あなた相手に聞くまでもないんですが、規則なのでご容赦ください。ダンジョンに入ったことと、モンスターとの戦闘経験はありますか?」


「どちらもあります」


「承知しました。現在装備されているマニピュレータは訓練用のモノですが、準備時間で操作感は把握されましたか?」


「はい、大丈夫です」


「ありがとうございます。ではこれから、第1等級ダンジョンの3階層で出現するモンスターがこの場に現れます。それらを全て討伐してください。安全性と効率の良い戦闘が出来たかどうかが採点対象です」


 なるほど。派手な攻撃とかは要らないってことね。まぁダンジョン攻略には命がかかってるんだから、ロマンある強力な一撃とか別に求められてないのは分かる。



 ちなみにいきなり3階層のモンスターが相手って言うのは、そもそもこの学園がダンジョン攻略のってのが理由。初心者さんは今後設立される別の教育機関でダンジョン攻略のいろはを学ぶことになる。


 この学園は国が主導する、ガチのダンジョン攻略者を育成する場所。


 最難関ダンジョンを攻略し続け、国家にダンジョン産のアイテムや資源を供給する人材が求められている。


 足手まといは必要ないんだと。

 手厳しいね。


 油断してると俺も誰かに追い抜かれる可能性だってある。



「準備はよろしいですか?」


「……はい」


 でも今はまだ──


「それでは、試験かいs」


 俺が最強です。


「終わりました」

「えっ」


 モンスターのホログラムが出現したから、その瞬間にマニピュレータで前方に飛び出しつつ全ての敵を切り伏せた。


 ちなみに敵は映像みたいなもんだけど、ちゃんと倒した手ごたえもある。試験用にと貸与された戦闘衣に磁気アクチュエータが内蔵されてて、それがただの映像をまるで触れられる実物のような感じにしてくれる。これ、凄い技術だよね。



「え、えっ」


 試験監督さんが唖然としていた。


「ちゃんと全てのモンスターを倒してますよ。それぞれの急所も狙ってます」


 敵残存数を示すモニターは0になってる。

 問題はないはずだ。


「す、すみません。配信は拝見していましたが、まさか肉眼で捕らえられない速度で動かれるとは……。あの、一応確認ですが、本当に人間なんですよね?」


「人間ですよ」


 そこは疑わないでほしい。

 まだ忍者の力は使ってないんだから。



「あ、ただいま確認が取れました。全ターゲットの急所を一撃で破壊していますね。素晴らしい戦闘スコアです。続いて6階層のモンスターを相手にしていただきますが、このまま続けてもよろしいでしょうか?」


「はい、問題ありません」


「では行きます。試験開始」


 先ほどと同じように全力全開でモンスターに襲いかかる。


 ただ今回は一撃で倒せない敵が含まれていた。


 まず他のモンスターを排除する。そして移動速度が遅い代わりに防御力が滅茶苦茶高いその亀のようなモンスターに回転しながら四刀で連撃を浴びせていった。


 敵の体力がそろそろ20%以下になる。

 

 こいつはこのタイミングで回復スキルを発動させるから、最高効率で倒すには残り体力をワンモーションで削り切る必要があった。


 そこでいつものようにマニピュレータで飛び上がり、落下しながら身体を回転させていく。ここはダンジョンとは違い天井が無いから、蹴って加速出来ない。


 比較的遅い速度で落下する俺に亀のモンスターが反応した。甲羅の上方にシールドが展開される。


 でも大丈夫。

 俺の計算が正しければいける。


「八連、飛空廻旋斬!!」


 回転しながら連撃を叩き込む。


 1本目の剣が敵のシールドを割り、2本目が亀の甲羅に傷をつける。その傷に3本目、4本目の剣を当てる。これでは倒しきれないが、まだ俺の攻撃モーションは続いている。敵に回復の隙を与えないよう2回転目に入る。


 2回転目3本目の剣が敵モンスターを両断した。


「よっしゃあ!」


 全てのモンスターを倒しきった。


「あの大亀ダイキを含むモンスター群を、よ、48秒で?」


 48秒もかかっちゃったか。

 

 もう少しマニピュレータのチューニング時間があれば30秒台を目指せたと思う。


 他の受験生も同じ条件らしいので、そこは文句言う必要はないかな。


「次はどの階層の敵ですか?」


「え、えっと、モンスター討伐試験はこれで終了です」


 そうなんだ。ラスボスのストーンドラゴンでも出てくるとか思ってたのに。


 リアルのダンジョンでは天井があったから俺はストーンドラゴンを一撃で倒せた。

 

 でもここは天井が高すぎる。天井も再現してくれれば、磁気アクチュエータで天井を蹴って攻撃に移行するって戦闘訓練もできるようになるかもな。


 後で玲奈に提案してみよ。



「雫石颯さん、戦闘スコアは938。Sランク判定です!」


 999点じゃないんだ。


「それって最高じゃないですよね?」


「はい。戦闘は最高効率でしたが、安全性に欠けるというAIの判定です。し、しかし900点越えは文句なしのSランクですよ!」


 やっぱり飛び上がるのって危ない行為だって判定されちゃうんだ。今後この学園で試験を受ける際はそれも意識しながらやらなきゃな。

 

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