第102話
12月中旬。俺たちは来年4月に開校予定のダンジョン攻略者育成機関、東雲学園に来ていた。
「俺らってさ、特待生扱いで入学できるんじゃないの?」
玲奈に連れられて巨大な体育館のような施設に来た。そしてまた彼女に言われるがまま、モーションセンサーが取り付けられた戦闘衣に着替えている。
今から入学テストを受けることになるらしい。
ただ、公式の入学テストは来年1月から2月にかけて実施されるという案内文が入学希望者の所には届いていた。しかも東雲財閥が運営する学園なので、俺や直人たちが入学試験を受ける必要などないって玲奈から聞いていたのに……。
「別に受けなくても大丈夫だよ」
「じゃあ、なんで」
「逆に聞くけど、ほんとに入学試験受けないの? 全国からこの学園に入学を希望してる5万人以上がみんな受ける共通試験だよ? やってみたくないの?」
どういうことだろ。
共通テストだから何なんだ。
「私はハヤテが、入学試験で無双したいんじゃないかなって思ってた」
「えっ」
「試験の結果で戦闘力とかが順位付けされる。誰がどの科目でNo.1か発表されるの。もちろん入学後の試験とかでもランキングは変動するけど、やっぱり最初の結果っていうのはインパクトが大きい。そこで圧倒的な結果を残しておけば、公式の試験を受けた人たちに格の差を見せつけられる」
「な、なるほど」
「ランキング制なんだ」
「私、大丈夫かな?」
「芽衣さんたちもきっと大丈夫ですよ! あとは私が見たいの。颯が入試で無双しちゃうところ」
あ、そっちが本命ですか。
それじゃ、やるしかないね。
「わかった、いいよ。我が姫のお望み通り無双しましょう」
「やった!」
小さくガッツポーズして喜んでいる玲奈が可愛い。
「直人もやっちゃっていいんだよ」
「さすがに颯いたら1位は無理だろ」
「あ、その点はご心配なく。使用武器種ごとのランキングもあります。あとはアタッカーとかディフェンダー、ヒーラーみたいなパーティー内の役割ごとでも能力に応じて順位がつけられます」
「へぇ。そっちならワンチャンあるな」
直人もやる気になったようだ。
武器種ごとのランキングだと多刀剣士以外は取れないけど、俺は攻守できるオールラウンダータイプ。アタッカー部門だけじゃなく、ディフェンダー部門でも1位は譲らないつもり。
「颯が何考えてるかわかるぞ。防御系でも1位狙うつもりだろ」
「よくわかったね。その通り」
「あのさ、
ほう。四刀流の奥義『朧』を使われなければ俺に勝てる可能性を感じていると。そーゆーことですか直人さん。良いでしょう。その挑戦、受けますよ。
「いいよ。朧は使わない。それでどっちが良い順位とれるか勝負しよう。負けたらいつもの店でいつものメニュープラスデザート奢りな」
「おっけぇ!! やってやんぜ」
四刀流奥義が朧しかないと思ってるんだ。奥義だからって、ひとつだけとは限らないんですよ。そこんとこ、認識が甘かったことを後で後悔しなさい。
「男子は盛り上がってるね。玲奈ちゃん、私たちはどうする?」
「遠隔系でも攻撃の正確さとか、攻撃モーションに入るタイミングの取り方とかでスコアがつけられてランキングされます。私たちもデザートを賭けて競いましょう」
「りょーかい。負けないからね」
「はい。私も本気で頑張ります!」
玲奈たちも勝負することになった。
こーゆー感じ、良いね。
競い合って力が伸びていく。
ランキング制って素晴らしい。
ダンジョン攻略はゲームじゃないし、致命傷を受けてしまうこともある。遊びじゃない。軽い気持ちでいると、いつか後悔する。それは十分わかってるつもり。
でも俺はワクワクするのが止められないんだ。
控室に試験監督さんが迎えに来た。
その人について試験会場へと向かう。
さて、頑張りますか!!
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