第093話

 

 ダンジョンを出て、今は玲奈の実家に向かっている。


 その道中、迎えに来てくれたリムジンの後部座席で俺たちは強制配信のアーカイブを確認していた。


「今回は玲奈にキスされたの強制配信されてなくて良かった」


 トロフィーにされていた玲奈を救出した時とは違い、彼女に蒼穹の首飾りをプレゼントした後にキスされた場面は配信されていなかった。


 俺たちが付き合っているのはもう広く知られているけど、流石にキスしてるのを何億って人に見られるのは恥ずかしい。


「私は別に見られちゃっても気にしないよ」


「精神力最強ですね」


「アメリカの人とか、テレビで映っててもキスしてるじゃん」


 あれですよ。

 日本人の奥ゆかしさは美徳です。


 ちなみに玲奈は見られても平気って言うけど、実際にやると後で赤面して恥ずかしがるはず。そんな言葉とのギャップが可愛い。


「な、なにニヤけてるの!? 見られても気にしないの、ほんとだから」


「それじゃ今度ダンジョンを攻略したら、すぐギュって抱きしめてもいい?」


「いいわ、やりなさい。なんならキスしてくれてもいいんだから」


 売り言葉に買い言葉で自分が凄いこと言っちゃったって後で後悔しないかな?


 それで悶えてる玲奈を見るのもありだけど。


「おっけー。それじゃ、次のダンジョン踏破した時に雰囲気良かったら」


「う、うん」


 了承は得た。

 楽しみですねぇ。


「ところで玲奈って、今日の誕生日で何歳になったの?」


「もしかして知らない?」


「うん、ごめん。15歳とか?」


 俺より1か2歳下だと思ってた。


「……16よ」


「えっ」


「16歳になった。ハヤテと同じ」


「お、俺と同い年なんだ」


「もっと私に興味を持ちなさいよ」


「う゛っ、ごめん」


 そばにいてくれるだけで満足してたかも。俺は玲奈の彼氏になったんだから、もっと彼女のことを知る努力をすべきだって反省した。


「誕生日プレゼントくれたことには感謝してる。でも私の年齢を知らなかったのには罰が必要ね」


「罰といいますと?」


「今晩、私の部屋で一緒に寝ること。拒否権はありません」


 それは俺にとってご褒美なんですが。


 ちなみに今晩って、玲奈の実家で誕生パーティーが開かれるから、拠点に帰らずそのまま泊まることになるんじゃないかな。


 玲奈が言う私の部屋というのは、玲奈の実家にある彼女の部屋ってこと。


 一緒に寝るのはまだダメだって玲奈のお父さんから言われてるけど、それは大丈夫なんですか?



「颯は今16歳で、3月が誕生日だから高校2年生よね?」


「そう。玲奈よりひとつ上の学年」


「私、普通科高校なら2年生の学習内容は余裕でついていけるよ」


「ん? どゆこと?」


「ハヤテが通ってた高校は黒のダンジョンに取り込まれて休校してる。そこに新しいダンジョン攻略者育成のための学園が建てられることになった」


「あっ。玲奈に言ってなかったけど、俺は友人とその学園に行こうかなって思ってるんだ」


「私も誘いなさいよ」


「えっ」


「だからぁ、ひとつ上の学年の勉強についてくのなんてわけないって言ってるの! しかもダンジョン攻略の教育がメインになるから、私はハヤテと同じクラスでもきっとうまくやれる」


 そうか、そう言うことか。


 玲奈はお嬢様だから、同じようなお金持ちの御令嬢が集まる学園に今後も通うもんだと思ってた。それに学年も違うから同じ教室に通う可能性なんて考えなかった。



「玲奈と一緒に通学できるのか。いいな、それ」


 俺の言葉を聞いた彼女の表情が明るくなる。


「私も! 私もハヤテと一緒に学校に行きたい!!」


 実は直人が羨ましかった。

 教室でも隙あらばイチャつきやがって。


 でも今後は俺も玲奈と一緒にいられる。

 教室で一緒に過ごせる。


 色んなイベントを彼女と参加できる。

 イメージするだけで素晴らしすぎた。



「玲奈さん」


「は、はい」


「俺と一緒に、新しくできるダンジョン攻略者育成学園に行きませんか?」


「いきます! 絶対に行く!!」


 きたぁぁぁあああああ!


 入学試験がある?

 んなもん、どんな手使っても突破してやんぜ。 


 クラスが同じになれるとは限らない?

 俺らには東雲財閥がバックについてんですよ。日本の総理大臣やアメリカ合衆国大統領が後ろ盾になってくれるし、何だったら神様が仲間にいる。クラス編成くらい弄らせてもらいますよ。

 


 俺は絶対に玲奈と一緒に学園に通うと。

 同じクラスになると、強く決意した。

 

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