2章 入試対策

第094話 


 颯たちが良く使っているファミレスにて──

 

「ふたりはもう知ってると思うけど、こちら東雲 玲奈さん」


「はじめまして。東雲 玲奈です」


 玲奈と一緒に新しくできる学園に行くことが決まり、颯はさっそく彼女を直人と芽依に紹介することにした。


「近衛 直人です。はじめまして」


「咲野 芽依です。よろしくね」


「3人は高校で知り合ったんですか?」


「そう。直人の苗字が近衛でカ行ラスト。俺が雫石でサ行最初だったから、席が前後だった」


「周りに同じ中学の人がいないの俺らだけで、自然と仲良くなったの」


「佐藤とか斎藤がいなかったの奇跡だよね。他のクラスだと佐藤君がふたりいたりするとこもあるから。ちなみに私は、直人が半日もしないうちに颯君と意気投合しててびっくりしたよ」


「颯はなんか話しやすくてさ」


「俺もそう思ったかな。でも高校でできた友人に彼女がいるって知った時はちょっと絶望した」


「咲野さんは中学の頃から近衛さんとお付き合いしてたんですか?」


「うん、そうだよ。それから苗字じゃなくて、芽依って呼んでくれると嬉しいな。颯君みたいにさきのんでも良いよ。私は玲奈ちゃんって呼んでいい?」


「はい、玲奈でいいです。えっと、それじゃあ私は芽依さんって呼びますね」


「ありがとー! 直人がいつも颯君の配信をチェックするから私も一緒に見てるんだけど、実物の玲奈ちゃんもすっごく可愛いね」


「あ、ありがとうございます」


「さて、仲良くなったところですまん。俺ちょっとトイレ」


「いてら。いつもの注文しとく」


「よろしく」


 颯が席を立ち、トイレがある通路に入ったのを確認した直人が小声で玲奈に話しかけた。


「はじめまして、って?」

「あ、待ってください」


 玲奈が何かの装置をテーブルに置き、それを起動させた。


「なにこれ」


「私たちの会話を周囲に聞かせないようにするための装置です。ハヤテは凄く耳が良いので」


「東雲財閥の技術力凄いね。俺らが知り合いだってバレると、マズい感じ?」


「私は別に良いんですが、近衛様が身分を隠しているのかと」


「隠してないよ。聞かれてないから言ってないだけ」


 そう言いながら直人がニヤリと笑った。


「親友だと思ってたやつが、ある日この国のトップクラスに偉い奴だって分かった時の驚く顔が見たくてさ。あと颯がガチで困った状態に陥った時、俺の力で颯爽と助けてから身分を明かす計画もある。そーゆーの、面白そうじゃない?」


「男ってバカだよねぇ」


 注文用タブレットを操作しながら芽依が冷たく言い放つ。


 咲野 芽依は甲賀の忍であり、直人の護衛をしている。本来は従者の立場である芽依が直人を馬鹿呼ばわりしたことに玲奈は驚いた。

 

「芽依さんは、近衛様の護衛なのでは?」


「あー。いいのいいの。俺はこーゆー感じが好きだからさ。それから俺のことも、颯といる時は名前で呼んでね」


「わ、わかりました」



 それから少しして颯が帰ってきた。


「注文してくれた?」

「ばっちり」

「あざす」

「注文したの私だけどね」

「まるで自分がやったかの如く」

「ばっちり かっこ 芽依が かっことじ


 このやり取りを見て、玲奈が思わず噴き出した。


「仲が良いんですね」

「玲奈ちゃんもすぐ慣れるよ」

「ノリが大事だから」

「私と玲奈ちゃんはツッコミ側ね」

「がんばります!」

 

 その後、玲奈が高校での颯の様子などを聞き始め、直人と芽依がどんなことでも赤裸々に回答してしまうので颯が焦るというやり取りが行われた。

 

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