第065話 〈配信コメント欄〉
〈エレーナが製作配信するってよ!〉
〈おぉ! やったぜ!〉
〈アレはハヤテの無双とは違った面白さがある〉
玲奈の発言に対して盛り上がる視聴者がいる一方で──
〈は? アイテム作るだけだろ?〉
〈んなもん何がおもろいの?〉
〈ぜってーハヤテの攻略配信のが良い〉
〈製作配信なら俺は見に来ないかな〉
ダンジョン攻略でないなら興味がないという視聴者も多くいた。
〈ばっかだなぁ〉
〈君らはFWOの楽しみ方を知らんのか?〉
〈アレはマジで神ゲーだぞ〉
〈チーターがいるのがウザいけどな〉
〈Cはどんなゲームでも湧くからしゃーない〉
〈で、FWOの楽しみ方って?〉
〈ダンジョンを攻略するだけじゃないん?〉
このコメント欄が見えているんじゃないかと思われるほどのタイミングで、ハヤテが話し始めた。
「あ、そうだ。ファーラムワールドオンラインを知らない人のために説明しましょう。FWOという略称で呼ばれていたこのゲームですが、神ゲーとして1億人以上のプレイヤーを魅了したのは、その自由度です」
「服装自由、髪型自由。最低限の規約さえクリアすれば、どんな見た目にもなることができたよね。キャラデザが楽しいの!」
「武器も魔法も、戦闘スタイルもたっっくさんあって、自分が思い描く戦闘ができちゃいます。ちなみに新しい武器などの装備を手に入れる手段なんですが、入手方法は4つありました」
「ダンジョン内でモンスターを倒してたまにドロップするのをゲットする。ダンジョンの公式ストアで購入する。同じく公式ストアのガチャで引き当てる」
「最後のひとつは、自分で素材を集めて創る──です」
〈でもそのくらい他のゲームでもあるだろ〉
〈ありきたりですね〉
〈話しを聞く限り普通じゃね?〉
「そしてここからがFWOの凄いところ。なんと装備を製作するためのレシピは、プレイヤーが創ることもできたんです」
〈は?〉
〈プレイヤーが製作レシピを?〉
〈そりゃ、ありえんだろ〉
〈好き勝手創られたら運営が困る〉
FWOを知らない視聴者たちは信じられない。
1億人ものプレイヤーがいるゲームで自由にレシピを作られては、管理しなければならないデータ量が膨大になる。データ量が多くなりすぎればサーバーの運営にコストがかかりすぎる。ただでさえデータ量が多いフルダイブMMORPGにより負荷をかけてしまう。普通に考えればまともにプレイできないゲームになってしまうのだ。
「プレイヤーが製作レシピを創る。それを可能にしたのは、
「FWOでゲットできる素材は全て、数種類のエレメントで構成されています」
「素材から抽出したエレメントを組み合わせることで、レシピにない新たなアイテムを創ることができるんですが、その出来上がるアイテムがどんなものか、特性や効果、耐久力などをプレイヤーが設定してツクルノに申請するんです」
「その申請が通れば、晴れて新アイテムの誕生です!」
〈なんそれ、すげぇ〉
〈やっばwww〉
〈めっちゃ面白そう!!〉
〈いやFWO知らんけど、それは凄い〉
〈定春さんって確かAI開発の第一人者だ〉
〈そんな人が作ったゲームなのか〉
「ちなみに新アイテムの創造に成功すると、そのアイテムの備考欄に創造主のプレイヤーネームが記録されます」
〈創造神になれるのか!!〉
〈FWOは神になれるゲームだったか〉
〈あっ。そーゆー意味で神ゲーなのね〉
〈プレイヤーが世界観を変えられる〉
〈そう思うと楽しそうだなぁ〉
「そしてここからが一番大事です。FWOではダンジョン攻略率で世界ランキングが更新されていましたが、実はアイテム創造数でもランキングがありました。その世界ランク7位。創った新アイテム数は軽く1000を超え、特に自動制御系の装備創造数は断トツで世界1位の女性クリエイター。それが、ここにいる玲奈なんです」
「えっへん! すごいでしょ」
〈やべぇぇぇええ〉
〈エレーナすげぇww〉
〈創造の女神さまだ〉
〈攻略よりそっち頑張ってたのか〉
盛り上がりを見せるコメント欄。
中にはこんな声も。
〈ハヤテがヤバいって思ってたけど、その相方も普通じゃなかったか〉
〈でも逆につり合いとれてるよ〉
そして、あることに気づく人々。
〈ん? ちょっと待って〉
〈最強攻略者と最高クリエイターが組んでね?〉
〈どんな素材もゲットできるな〉
〈レア泥しなくても良い。だって創れるもん〉
〈もう神ペアじゃん!!〉
素材集めも、それの加工も最高レベルでできるペアが誕生していたことに人々は気づいてしまった。
四刀流を使う最強配信者たちは今までトロフィー救出を最優先で活動していたため、まだ本格的にダンジョン攻略に乗り出していない。それが今後、大きく変わることが容易に想像できる。
〈製作配信に興味が出てきた〉
〈リアルでも創造無双しそうw〉
〈これは視聴必須ですな〉
「ちなみに俺のアイテム創造数はたったの7です。配信しながら結構頑張ってたんですが、ツクルノが全然承認してくれないんですよね」
「ハヤテは設定が甘いのよ。構成するエレメントの特性とかもっとしっかり考えなきゃ。創造できた7個だって、ほとんど運で申請が通っただけ」
〈完璧にチェックされてるwww〉
〈ハヤテ君のこと好きすぎだね〉
〈ダメハヤテ氏はエレーナ先生に指導してもろて〉
〈女神エレーナとお呼びしなさい〉
〈ふたりの製作配信、楽しみにしてます!!〉
この流れで製作配信を見に来ないという人はほとんどいなくなっていた。
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