第034話 伊賀中忍 北条さくら(2/2)
「はじめまして。雫石 颯です」
声で分かります。好青年ですね。
性格が良いのは配信でも見ています。
配信より現実の方が可愛い顔してる気がします。
世界中から注目されていて、しかも服部様から免許皆伝の書を受け取るような実力者。そんな彼と付き合えることになった東雲 玲奈さんが羨ましくなります。
まぁ彼女も日本四大財閥の御令嬢ですから、お似合いなのかもしれません。
「今から皆さんにハヤテ式四刀流を修得していただきます」
そういえば失敗が許されない任務でした。集中して話しを聞きましょう。
「ダンジョンで獲得できる武器を装備する前提なので普段の得物は使いません。ダンジョンに持ち込んでもモンスター相手に効果は無いです。それからマニピュレータの性能を最大限引き出すのにコツがあるんですけど、今日はその感覚を皆さんに掴んでいただこうと思います」
私たちは彼の動きを完全にトレースすればよいみたいです。
「それからここにいる皆さんだけじゃなくて、動画配信で全世界にいる中忍さんたちにも共有し、協力していただきます。そのためにカメラがあるので、こっち側には来ないでくださいね」
そう言って颯様の四刀流講座が始まりました。
最初の動きは下忍どころか、運動神経の良い一般人でも出来るような簡単なもの。しかしその動きは徐々に難易度を増していったのです。
私たちは必死にその動きを真似し続けました。
「この先はマニピュレータの力を使っていきます。真似できる人は頑張ってついてきてください」
私たち中忍30人は全員が事前にダンジョンに入って、マニピュレータを取得していました。現在はそれを装備して颯様の動きを真似しています。
マニピュレータを利用して戦闘の型を学びました。
そしてついに最後までやり遂げたのです。
地面から5メートルほどの高さまで跳躍した私たち中忍30人は、颯様がウンディーネの攻撃を回避するために津波を切り裂いた技──天翔旋空斬を完璧にトレースして放ちました。
この技、すごく気持ちいです!
早く敵に向けて放ちたい!!
上空まで飛び上がるのはマニピュレータの力だと言って、本当は颯様ご自身の身体能力でやっているものだと思っていました。
こんな重たいだけのポンコツ、忍者には邪魔でしかありません。
しかし颯様は、わざわざマニピュレータの力を使って全ての技を実現させていたんです。
つまり忍じゃなくてもいいんです。
一般人でも彼の真似が出来ちゃう可能性がある。
マニピュレータの力を100%を引き出すのは非常に困難です。
でも不可能ではない。
私たちが忍だから、少しマニピュレータ操作のコツを聞いただけで颯様の技を真似できるようになりました。しかし一般人でも今日の動画を繰り返し閲覧し、努力すれば彼や私たちと同じ動きが出来るようになるんです。
これは間違いありません。
颯様は忍でありながら、ダンジョン攻略ではその力をほとんど使っていなかったようです。もし彼が本気を出せば、それこそ女神が操っていたウンディーネなど瞬殺だったはず。
女神に対して『全力で行く』と言っていましたが、あれは人としての全力という意味ですね。
四刀流を広めたいという颯様の強くて純粋な意志を感じました。それと同時に私たちにも大きなプレッシャーがかかります。安易に忍の術を頼るわけにはいかなくなったのです。
この任務、かつてないほど難易度が高いかもしれません。
ですが完璧にこなしてみせます。
だって私はハヤテ式四刀流、超短期修得コースを修了した忍なのですから!!
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