第010話 〈配信コメント欄〉
〈飛んだ!?〉
〈たっかwwww〉
〈いや、怖くねーのかよ〉
〈リアルだよな、これ〉
〈現実で人間離れした動きすんのやめろw〉
颯がボス部屋に世界最速で到達し、ストーンドラゴンと戦い始めたのは世界中の人々が見ていた。コメント欄には様々な言語で書き込みがされている。
調査のためにダンジョンに特殊部隊を送り込んだ大国の大統領たちですら、颯の映像を確認している。
〈出るぞ、ハヤテの回転斬り!〉
〈いっけぇぇええええ!!〉
ボス部屋上空まで飛んだ颯は天井を蹴り、落下しながら身体を回転させて4本の剣でストーンドラゴンを真っ二つに切り裂いた。
〈うぉ!? 何だあれ!?〉
〈かっけぇぇぇぇ!〉
〈凄いな。落下しながら回転してた〉
〈石っぽいドラゴンを切り裂いたぞ〉
パリンっと、ボスモンスターのコアが破壊される音が響いた。画面で配信を見ている人々もその音を聞いている。ダンジョンクリアの瞬間だ。
【黒のダンジョンが踏破されました。これにより、各地にある第2等級ダンジョンが解放されます】
世界中にアナウンスが流れた。
FWOではチュートリアル用の第1等級ダンジョンは1か所のみで、そこがプレイヤーにより踏破されると、4か所ある第2等級ダンジョンが解放されるという仕様だった。
現実世界では各地にチュートリアル用のダンジョンが存在し、その周辺に第2等級から第5等級までのダンジョンが多数出現している。
〈マジでクリアしやがった〉
〈ハヤテ凄いよ〉
〈投げ銭の額、ヤバそう〉
〈アイツなら強化に回すだろ〉
〈リアルマネーを強化に使えんの?〉
〈さっきハヤテは武器強化してたぞ〉
颯は何げなく武器を強化していた。その際に使用されたのは彼が貯金していたリアルのお金。FWOトッププレイヤーとしてゲーム内のお金は大量に持っていた彼は、いつもの感覚で武器を強化してしまった。
そのため彼の通帳から、数十万円が消失している。
しかし世界中に彼のダンジョン攻略が配信されていたことで、1千万円を超える額の投げ銭が集まっていた。
〈コレ税金ヤバそう〉
〈経費計上大変だろ〉
〈確定申告で死亡乙www〉
コメント欄で颯に同情する声が多い。
中には──
〈税理士です。経費申告など相談に乗ります。ご連絡お待ちしております〉
事務所の電話番号を添えた税理士たちが何人もコメントしていた。
〈顧問税理士候補がこんなに〉
〈最強すぎるww〉
他には弟子になりたいという者、動画配信をサポートするという撮影班希望者、お金をくれと懇願する人々、寄付を募る慈善団体、詳しく話を聞かせろという自称政治家など、多くのコメントが書き込まれている。
〈父です。なんて危ないことやってるんだ。特に最後の攻撃方法は止めなさい。お母さんの心臓に悪いです〉
〈お父上きたーーーー!〉
〈お父様、息子さんは英雄です〉
〈どうか寛大な御処置を!!〉
その後、何人もの自称親族がコメントを残していくが、最初の書き込みは本当に颯の父親による書き込みだった。
〈我々は米国、大統領行政府です。 世界初のダンジョンクローラーであるあなたと話したいです。 連絡を待ちます〉
〈アメリカ大統領直属から連絡?〉
〈え、本気で!?〉
〈アメリカ人なら英語で書き込むだろ〉
〈成りすましは重罪だぞ〉
〈いや、ハヤテが日本人だから〉
〈翻訳ソフト使ってんのがリアル〉
他にも中国やロシアなど、さまざまな国からコンタクトを取りたいという書き込みが増えていく。
既に颯の姿は画面に映っていなかったが、その後も動画コメント欄は大いに盛り上がった。そして、最終的な動画閲覧回数は30億回を超えた。
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