56話 30万の攻防戦 (6)
203号室の床が全ての思い出を飲み込み消し去る。
寝室に隠れていたモンドールが異変に気づいてリビングに慌てて戻る。
「こ、これは一体……」
モンドールはありえない光景に立ち尽くしてしまった。
「娘と奥さん……沈んでるぞ」
ウィーブはスレッドから目を離さずに指で今もなお沈み続けている妻子を差した。
「い、今助けるからな!」
スレッドが自分から一瞬、目を逸らした瞬間にウィーブは走り出した。
スレッドは後ろポケットから何やら四角形の立方体の紙を取り出してウィーブに投げつける。
ウィーブは手でそれを払うが突然、その立方体が泥のようにベタつき腕から手にかけて姿を変えてついてしまった。
スレッドはすぐにウィーブの腹を集点した足で蹴り上げた。
「ガハッ!」
ウィーブはドアの方まで吹き飛ばされてしまった。
モンドールが必死に
スレッドはそれを横目に見つつウィーブに銃を構える。
「……本気でやれよ──死にたいのか?」
ウィーブはすぐに立ち上がりドアを破壊して外に出る。
「チッ!待てや!」
スレッドも銃を構えながら追いかける。
しかしウィーブはドアの近くで待ち伏せをしていた。
剣先がスレッドの喉笛を貫こうとしたがそれよりもスレッドが心臓に一発、銃弾を撃ち込む方が速かった。
「馬鹿が。警戒してないとでも……」
そこでスレッドは異変に気づく今、撃ち殺した死体に影がない事を。
「"
死体が黒くなりウィーブの影として戻る。
突然の背後からの剣劇にスレッドは自身の銃を犠牲にする事でどうにか避ける。
スレッドは後ろ向きのまま走り出すがウィーブは腰に携えていたもう一つの剣を鞘から抜くと同時に投げた。
アホが!これなら全然、よけれ……
「"
投げ出された剣の影の位置と本物の位置が入れ替わったのだ。
「……は?」
影が空中に浮き本当の剣が地面に埋もれていた。
スレッドは立ち止まってしまった。
「解除」
そうウィーブが唱えると剣と影の位置が戻る。
スレッドはスーツを脱いで剣に向かって振り下ろした。
スーツはまた泥のようになり剣を包み込み減速させる。
「"
するとすぐスレッドの目の前にウィーブが現れた。
「さっきのお返しだ」
スレッドの腹部にハイキックを喰らわせる。
「…!?
スレッドはそのままマンションから投げ出されてしまった。
空中に投げ出されたスレッドを見ながらウィーブは能力について考察を広げていた。
……投げた物?いや何かの条件が成立すると泥のようなものに物体が変化する能力か。
紙で作った四角形の立方体とかスーツとかは奴が触れていたから泥化したんだろうか?
それだとあの部屋の床が泥化していた理由は何だ?
いや待てよ。何故わざわざ紙を立方体にする必要がある?そうしないと能力が発動しないからか?
四角形ではないと発動しない?
それだとスーツが泥化した理由と合致しないな
スレッドはマンションから落下する寸前に背中と腕と手に集点をして受け身を取った。
「何だよ。あいつの能力は」
自分の影を自由に使える能力と本体と影の位置を入れ替える能力か?
剣が地面に埋まれる演出を見せたのは剣と影は同じ動きしか出来ないと錯覚させるためかよ。
そんでその成果が腹に一発の蹴り?
……クソッ舐められてるな。
銃を一つやられてるからな。
予備があと一つか。外だと俺の能力が発動しにくいんだよなー。
ウィーブがゆっくりと階段を使ってマンションから降りてきた。
「ずいぶんと余裕そうだな」
スレッドは銃をウィーブに構える。
「映画や小説だとこういう時に長々と喋ったり猶予与えたりするけどよー。俺らの中じゃあ構えたらすぐ撃てだ」
スレッドは三発続けてウィーブに撃ち放った。
影はある!こいつは本物だ。
ウィーブは二発避けたが一発は避けきれずに太腿に当たる。
ウィーブはよろけて膝をついた。
「すぐに殺す!猶予は与えない!」
スレッドは全弾、膝をついたウィーブに撃ち放った。
頭、心臓、足、目、腕に弾がめり込んでウィーブは後ろに倒れ込んだ。
スレッドは銃を振り回しながらウィーブに近づいた。
「ちょっと焦ったぜー。能力二つ持ちって事は☆5能力者か?」
「どうだろうな」
死体のウィーブが黒くなり消えて剣を構えたウィーブが現れた。
こいつッ!!
そういうことか。
そ、それだと影が二つ?
あークソッ!思考時間が足りねえよ!
「猶予は与えない」
ウィーブはスレッドに一閃を喰らわせる。
ウィーブ
【剣士 ☆5】
能力名 "
自分の影を増やして操る事ができる。
最大三人まで増やす事が出来る。
能力名 "
影と本体を切り離す。
切り離した影を自由に動かせる。
本体と影の位置を入れ替える事が出来る。
──────────
次回ついに久蛾とベルルが対決!!
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