42話 狼が眠る屋敷 (1)
今回の話は相当グロいです。
注意してお読みください。
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20区はジェラートファミリーが実質、支配している区と言っても過言ではない。ジェラートファミリーは19区、18区と支配を広めている。
そんな20区 支配された街 カイロ・ベルは類は友を呼ぶとはまさに言い得て妙であった。
深い闇は影を誘い込む。
その影を統括、管理してジェラートに反抗しないように20区にはジェラートファミリーの幹部が二人いた。
その一人、ベルルベット・ギルジーニの直上の上司でもある。
そのイーサン・コヨーテからベルルベットは急遽呼び出しをくらっていた。
イーサンは基本的に経営や他の管理を自分の直属の仲間にやらせるのでイーサン・コヨーテという名目で呼び出しは基本的にしない。
ベルルベットは一人で馬車に乗っていた。
脇から汗が吹き出し震えそうになる足を必死で抑える。
イーサン・コヨーテは経営や管理を代わりにやってくれる仲間のことを特別に可愛がり最初の文字を伸ばして最後にちゃんをつけて呼んだ。
ベルルベットの場合はベーちゃんと呼ばれていた。
領主の館よりも二倍以上大きい屋敷に到着した。
庭には二十匹以上の狼が日向ぼっこをしていたり眠っていたり吊るされた人間を食べていた。
馬車は止まった。
「着きました。コヨーテ様の屋敷です」
「ああ」
ベルルは馬車を降りる。
馬車はベルルが降りるとすぐにどこかに行ってしまう。
イーサン・コヨーテの屋敷の周りは全て空き地で馬車はおろか人間が歩いているのも見かけられない。
ベルルは門の前で待っていた。
狼たちは全て声帯を取られているので唸る事も吠える事も出来ない。
その分、凶暴性が上がっており特に人間の味を知っている狼はいつも涎を垂らし辺りを見回していた。
ベルルは決してチャイムを鳴らさなかった。
ただじっとその場で待っているだけだ。
数分が経ち玄関の大きな扉が開かれた。
執事のような格好をした女性が出てきた。
女性は低いハイヒールを履いていたが一度も足音を立てなかった。
女性は門をゆっくり開けると目線だけで合図をする。
ベルルは冬にも関わらず額や足裏、手と汗が止まらなかった。
ゆっくり歩くと玄関の前にスーツを着た男が立っていた。
その時だった。前を歩いていた女性がヒールを鳴らした。
「あっ」
近くにいた狼が飛び上がり女性の喉を噛み砕く。
女性は声も出せずにその場で倒れる。
手で狼を抑えようともがくが複数の狼が四方から音を立てずに肉を千切るのですぐに生き絶えた。
ベルルはすでに肉塊と化した女性をゆっくり跨いで玄関の前まで来た。
玄関の扉を閉める。
「よく来たなベルル」
「死にに来たよエラ」
エラと呼ばれた前髪が後退していて一見側から見れば弱々しい中年の男に見えるがもちろん人は見かけにはよらない。
エララリラント・サウザンド、通称エラはベルルと同じ幹部候補の一人であり主に20区の管理を担当していた。
「イーサンはいつも通り二階だ。そしていつも通り寝てる。起きるまで立って待ってろ」
エラは前を歩きながらベルルに言った。
「エラ頼みがある」
エラは立ち止まってベルルを見た。
「俺が文字通り狼の餌にされたらブリアンとスレッドは守ってやってくれないか?この国には居れれないかもしれないが逃がすだけでいい」
エラは後退した額を擦る。
「落ちたなベルル。もし今日お前が餌にされるならすでにお前らの仲間は殺されてるに決まってるだろ」
ベルルは歯を食いしばる。
「……ああ。そうだな」
階段の前に着く。
「ここからはお前一人だ。護衛に狼をつけようか?」
エラは軽口を叩く。
「……」
ベルルは一歩一歩、階段を上がる。
エラはその怯えるベルルを見ながら不敵な笑みを浮かべる。
コヨーテの屋敷は二階が丸ごと一室になっておりその半分以上の面積が大きなベットであった。
その大きなベットの中央にパンツのみを履いたままタオルケットを腹にかけて寝ている男がいた。
枕代わりに狼の背中を使っておりベットには八匹の狼が腹を出して寝ていた。
隣を見ると右には女性が全裸で大きなランタンを二つ手に持って立っていた。口は大きく開けており舌がなかった。
左には膝をついて正座をしている丸坊主の女性が口に開口器をはめられており上を無理矢理、向かされていた。
その開口器で開かれた口の中には大きな蝋燭一本、刺さっており蝋燭には釘が何本も刺さっていた。
どちらの女性も腹にDon't make a sound!(音を出すな!)とタトゥーが彫られていた。
ベルルはベットの上で静かな寝息を立てている男が起きるのを待った。
三時間が過ぎた頃、左にいた女の蝋燭が溶けて釘が落ちそうになっていた。
丸坊主の女は足に血液が回らず紫になっており開口器の下から見える顎がガタガタと震えていた。
その十分後、何本もの釘が音を立て床に落ちた。
カランカランカラン!!
釘が落ちたと同時にベットで寝ていた八匹の狼がその女性めがけて走り出して肉を食い始めた。
「うー!うっうー!」
女性は開口器と蝋燭のせいでうまく喋れずにそのまま腹を食い破かれて絶命した。
「あーーよく寝た。おっ!ベーちゃん!俺って何時間寝た?」
その男は痩せマッチョのような体型でまるで彫刻のような綺麗な筋肉をしていた。
タオルケットを肩にかけてあぐらをかく。
「5時間ほどでしょうか?」
「うわそんなに?アラームもっと早めに設定すればよかった」
隣で狼たちが女の頭蓋骨を噛み砕く音が聞こえる。
イーサン・コヨーテはベットの上に立って近づいてきた。
そしてベットを降りるとベルルの目の前に立った。
イーサン・コヨーテは大柄なベルルより3センチばかり大きかった。
髪は金髪で天然パーマであった。
「喉乾いたな」
イーサンが小さな声でぼそっと呟くと下にいたメイドが紅茶とお茶菓子を持ってきた。
その間、二分もかからなかった。
その後ろにいた召使いが白い丸机と椅子を二脚用意した。
メイドはそこにケーキスタンドが置かれてティーポットも置かれた。
メイドは額に汗をかきながら音を立てずに全てをおこなった。
イーサンは用意された椅子に腰を下ろした。
「座れよベーちゃん」
「あ、ありがとうイーサン」
ベルルも腰を下ろした。
メイドはティーポットからティーカップにアフタヌーンティーを注ぐ。
メイドは血だらけになった床と女性を見て息を飲むが急いで階段を下る。もちろん音は出なかった。
「もう昼だね」
イーサンは紅茶を一口飲む。
「そうだね」
ベルルは手を太ももにつけたまま動かなかった。
ベルルはまだ後ろにいる召使いを気にしていた。
「なんでベーちゃんがここに呼ばれたか分かる?」
イーサンはケーキスタンドからイチゴのショートケーキを取る。
「21区の件……ですよね」
イーサンはティーポットを掴むとベルルの頭にぶつける。
パリン!と音が鳴りベルルの頭から血が流れる。
熱湯のように熱い紅茶がベルルの頭にかかる。
「あっぐ、!」
しかしベルルは倒れずにそのままの姿勢を保った。
狼たちは床にこびりついた血すらも綺麗に舐めとった。
「俺ね?次のアラーム用意してないんだ」
頭を手で抑えたベルルはその言葉で死を覚悟する。
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