1話 虫達の再会 (1)
この3年間、彼は1人の男
しかし情報がほとんど無い中で彼は路頭に迷っていた。
それでも彼は自分に与えられたあるスキルで懸命に探そうと努力していた。
蚊神のスキルは 【探偵 ☆4】だった。
彼にとってまさに必要としていたスキルでこのスキルを知っていくたびに彼は飛び上がるほど喜んだ。
しかしそれでも何も無い情報で世界から1人の男を探すのは困難を極めた。
そんなある日のこと。
彼は違法賭博を経営しているある店主から耳寄りの情報を聞きつけた。
その情報によるとここからそう遠くないイマーゴ共和国に誰もやった事がない人に金を貸すだけの仕事をしようとしている妙な男がいる。
蚊神は勢い込んでその店主に名前を聞いた。
すると店主は驚きながらも教えてくれた。
「おいおいなんだよ。確かクガ?とか言ってたな」
蚊神は礼を言って大急ぎでイマーゴ共和国に向かった。
イマーゴ共和国は貧富の差が激しいことで有名な国だった。富裕層が稼げば稼ぐほど貧困層はどんどん貧しくなっていく。
そしてイマーゴ共和国で1番盛んなのがギャンブルであった。
特に富裕層【リッチガーデン】と貧困層【スカルガーデン】の間に出来たイマーゴ闘技場は日に何億、何十億と金が動く。
リッチガーデンの住民は笑いながらまるで湯水の如く金を使い、スカルガーデンの住民はなけなしの金を握りしめて血眼で試合を予想する。
そんなイマーゴ闘技場からさほども離れていないスカルガーデンの地域に蚊神はいた。
彼は薄汚れた看板を見上げる。
酒場 ノクターン
彼は少し息を整え酒場ノクターンの扉を開けた。
賑わっていた酒場が蚊神が入った瞬間に静かになる。
蚊神は酒場内を見渡す。
眼帯をつけた薄汚れた男、片腕がない男や薬で頭がおかしくなり壁に話しかけている男、蚊神のことを瞬き一つせずに睨んでいる老人。酒場の隅で血だらけになり肩で息をしている男。
とにかく男しかいずそしてそこは闇の陰気さが充満していた。
酒の匂いと血の匂い。それと薬の匂い。
蚊神は少し顔をしかめる。
薬をやる奴は死ね!
蚊神はカウンターに腰を下ろした。
「なあ久蛾って男を知らねえか?」
ノクターンの店主 フライは顎髭を触りながら答えた。
「知らねえな。帰んな」
蚊神は今度はカウンターに5000Gの紙幣を置いた。
「久蛾って男を知ってるか?」
「フライさん酒となんかつまみくれないかい?」
3つ席が離れているハゲた男が言った。
「はいよ」
フライは蚊神の元を離れそのハゲた男の方に向かった。
蚊神は少しため息を吐き5000Gをしまった。
「あいあいよー。来るんだよ!みんな!空を飛んでる男がみんな死ぬんだよー。あいあいよー」
さっきまで壁と話していた男が蚊神に話しかけてきた。
その男は背は低く腰が曲がっていた。口を半開きにして唾を垂らしていた歯はほとんどなかった。
「やー世界のみんな!私は空を飛べるんだ!壁に埋まった哀れな男だ!」
蚊神は頭に血が昇るのを感じた。
蚊神の脳裏に松丘がちらつく。
「みんなみんな聞いてるのかい?私は…」
蚊神は衝動的に彼の股間を蹴り上げた。
薬物中毒者の男は股間を抑える。
蚊神は今度は顔面を蹴り飛ばした。
男はさっきまで話していた壁に頭からぶつかった。
「あれー?壁さんがいるじゃない?聞いてる?」
蚊神はさらに頭に血が上った。
蚊神は男に近づき顔面を何度も殴った。
それでもまだ支離滅裂なことを言うので今度は壁に何度も打ちつけた。
男の少ない歯が飛び散る。
蚊神は男の髪の毛を離した。
男は声もなくその場に倒れた。
蚊神は薬物中毒者の男を酒場の隅に同じように倒れていた男の所に蹴り飛ばした。
酒場からいきなり笑い声が響く。
さっきと同じカウンターに座った。
そしてフライに尋ねた。
「久蛾って男を知ってるか?」
フライは口元に少し笑みを作っていた。
「2階にいるよ。酒場の外にある階段を上がった所だ」
「……ありがとう」
蚊神が酒場を離れようと席を立った時にフライが濡れた雑巾を投げ渡した。
「これで壁を拭け」
蚊神はその雑巾を先ほどまで殴っていた薬物中毒者の顔面に叩きつけた。
「だってよ」
最後に蚊神は男の腹に一発蹴りを入れた。
「薬やってる奴は死ね!」
酒場からまた笑い声が産まれた。
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