闇金転生

序章 孵化

0話 始まりの時間

駅のホームにいる人間は様々だ。

とりわけラブホテルの街なんて言われている鶯谷の駅ではより顕著に他の駅では見られないような人達も沢山いた。

しかしそんな人達の中でもとりわけ目立つ男がいた。

髪は伸びまくりボサボサ、服には何か赤い液体のようなものがこびりつきそれが固まっているのが分かる。無精髭を生やしたその男はただ一点に駅のホームを瞬きせずに見ていた。

その男は一ヶ月前の新聞の切り取りを持っていた。

そこにはこう書いてあった。

【金銭のトラブル？で28歳の男が殺害】

11月3日午後9時頃、東京都足立区の〇△荘の201号室で久蛾（くが）災路（さいじ）（28）が背中からナイフのようなもので刺され死亡しているのが隣人の通報により発見された。

調べでは怒鳴り声やドアを激しく叩く音などが頻繁に聞こえ警察は金銭のトラブルの方向で捜査を進めていく方針です。また………

見出しの下には久蛾（くが）災路（さいじ）の写真が張り出されていた。

その顔は見ただけで誰もが目を伏せるような容姿で鋭い眼光をし口は不機嫌そうに閉じられていた。

無精髭の男を見た人は10人中9人はホームレスだと間違え1人は殺人犯だと思うだろう。

服にこびりついてる赤い液体は彼がホテルの一室に捨てた包丁についている液体と同じだった。

そのホテルには同じように赤い液体を首から吹き出し死んでいる男がいた。

その男は偶然か必然か久蛾（くが）災路（さいじ）が殺された201号室の住人であった。

午前6:30行き鶯谷駅に山手線　上野・東京方面の電車が発車標に表示されていた。

無精髭の男はモニターを見て腕時計を確認する。

現在の時刻は6:28

確認したと同時に発車メロディーが流れ始める。

『……黄色い線の内側までお下がりください』

彼はまるで何も聞こえないかのように一歩ずつ一歩ずつ前に進み始めた。

気味悪いその男を見ていた太ったサラリーマンは彼が一歩ずつ前に前に磁石で引き寄せられて行くかのように進んでいくのを見ていた。

彼がここで死んでくれたら俺は今日、会社休んで朝からパーリーするぞ！！

ブオオオオオオ

電車が鳴らす爆音。

そして太ったサラリーマンは会社を休んだ。

それは朝から遊ぶ為ではなく、自分が見てしまった吹き飛んだ彼の身体と衝撃で吹き飛んだ顔を忘れる為だった。

12月4日　新聞記事より抜粋

【復讐による殺害か！？】

12月3日午後3時頃、東京都鶯谷のラブホテルの一室で松丘太郎（38）が包丁で複数回、刺されているのをホテルの従業員が発見した。

松丘太郎（38）は一ヶ月前に起きた殺人事件の重要参考人であった為、警察は怨恨による殺害と見て一ヶ月前に殺された久蛾（くが）災路（さいじ）さんと親しかった人物を………

Twitterのあるツイートより抜粋

クソデブ社畜が苦言を吐く！！

最悪だよ。まじで！今日、俺が社畜しようと駅で待ってたらマジできたねえ男が駅から飛び降りてそれを俺ガン見しました。

はあ本当に会社ぐらい普通に行かせてくれよな。

今、トラウマになり自宅でグロッキー。

ムカつくからそいつの名前、調べたらクソ怪しい奴で多分反社。

名前は　蚊神（かがみ）空木（うつぎ）

キラキラネームで草