第3話 謎の記録媒体③

「何のために・・・か。」

ネオが何も教えてくれない以上、今は考えても仕方ないことだ。

彼の言う【旧人類の真似事】をしていく中で見つかるのではないかと漠然と思っている。多分みんなそう思っているから、いろんな疑問を飲み込みつつ生活しているんだろう。少しずつ研究は進んでいるようだし。


少年をなだめる講師の声をぼんやりと聞き流しながら、受付カウンターに向かう。

ライブラリの受付は眼鏡をかけた女性だ。

ライブラリで働くヒトは何故かみんな眼鏡をかけている。

採用する時に眼鏡のヒトを選んでいるのか、制服の一部で指定しているのかどちらなんだろう・・・?


「ライブラリへようこそ。IDとネームをお願いします。」

「ネーム:ハジメ スズモリ。IDはこれです。」


名乗りつつ、IDをポータルで表示する。


「…ハジメ スズモリ様。ご本人確認ができました。旧人類データベースへのアクセス申請いただいてますが、すぐにアクセスされますか?」

「はい、よろしくお願いします。」

「では、3Fにございます【323C】のアクセスルームをご利用ください。入室方法についてはご存じでしょうか?」

「はい、大丈夫です。」

「それでは、何かございましたら室内の呼び出しボタンにてお知らせください。ごゆっくりどうぞ。」


無事入館手続きが終わったし、早速指定されたルームに向かおう。

いつの間にか少年たちもいなくなり、静かになったロビーからエレベータで3Fに向かう。

ライブラリは3階建ての洋館のような見た目をしていて、かなり広い。

用途ごとに部屋が分かれていて、一般開放されている読書ルームは申請なしでもはいれるが、その他のルームは基本申請が必要だ。

アクセスルームは一般データベースにはない閲覧制限のかかっているデータベースにアクセスする際に使う部屋となっている。


「…323C。ここか。」


ポータルにIDコードを表示させ、扉の前にあるリーダーにスキャンさせる。


『ピー・・・・・ID:10249JM認証完了しました。扉ロック解除します。』


室内は3m四方くらいの個室で、中にはデータベースへの接続用コードと不定形家具が1台あるだけだ。

不定形家具をゲーミングチェア型に変え、ポータルをコードに接続する。


『ID:10249JM・・・・ポータル接続完了。』


・・・ブゥン。

目の前にホログラム画面が現れた。


「うーん…。どこから調べればいいか。旧人類アナログ後期の流行…、ファッションは違うな、発明…いや、そもそも記録媒体の歴史について調べたら出てくるか?」


とりあえずデータベースを立ち上げ、思いつくままにウィンドウを開いていると、

それっぽいものが見つかった。


「なるほど。今はポータルが映像記録も取ってくれるけど、記録媒体のみが独立したツールだった時代があったのか。【デジタルカメラ】はデータ化する機関がついてるから、それより前…。」


やはりデジタル移行期以前のものだったらしい。

さらに遡って調べてみる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【世界観補足】

●不定形家具

一家に一台は必須といわれる使用者のイメージに合わせて形を設定できる家具。

デフォルトは大きな丸いクッション型をしていて、分裂させたりもできる。

売られている大きさや色は様々。

今のトレンドはグリーンとオレンジのバイカラーらしい。

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