第2話 謎の記録媒体②

「あー、ダメだ。全然わからん。」


検査から戻ってきたモノを解析してみたが、さっぱりだった。どこにも撮影したものをデータ化するような機関がなく、取っ掛かりすら見つからない。


「せめてシステムの一部か撮影したデータが残ってればなぁ。この穴のところにそのシステムが取り付けられてたのか?それにしては外部への接続端子とかもなさそうなんだがよなぁ。」


もしかして、アナログ期後半とかに開発されたものなのか?だとしたら、そもそも撮影したものをデータ化なんて出来ないはず…。

ちょっと調べてみるか。


「コンシェル」

『はい。イかがいたシました?』

「ちょっと【ライブラリ】行ってくる。旧人類データベースへのアクセス申請出しておいて。」


着替えて、ライブラリに行く準備をしている間に、コンシェルに申請を頼む。


『承知いたしまシた。ライブラリ接続…【ID:10249JM ネーム:ハジメ スズモリ】の旧人類データベースへのアクセスを申請』

ピー・・・『【ID:10249JM。ネーム:ハジメ スズモリ】hmlv.28 アクセス許可します。』


『アクセス許可がおりましタ。』

「ありがとう。じゃあ、行ってくる。来客はなかったはずだけど、何かあったら連絡くれれば応答はできるから。」

『かしこまりまシた。いっテらっしゃいマせ。』


----------


「なんでこんな回りくどいことしなきゃ行けないんだよ!」


ライブラリにつくと受付前で一人の少年が騒いでいた。

体格からすると初期ボディ。ロースクールの受講生かな。

ちょうどロースクールの研修日とかち合ってしまったようだ。


「こんなの所詮、旧人類の真似事だろ!?こんな事して何になるって言うんだ。」


すごい、怒りのプログラムが的確に働いている。

あんな風に怒るのか。俺にできるだろうか。


「あー、旧人類について習いたてか。懐かしいな。俺も通った道だ…。」

「大抵のやつはロースクールで一回ジブンの存在に疑問を持つんだよな。」

「じきに落ち着くさ。」


少年の叫びにも周りの大人達は呑気なものだ。俺も含めて。

俺たちは生み出されてから一定の期間、身体検査や思考回路部分の異常検査などを受けた後、ロースクールに送られる。

そこで他者とのコミュニケーション、基礎感情プログラムの取得などを習う。コンシェルをもらうのもこの時だ。

そして、旧人類についてもこの時に知る。


もう一度少年を見る。


何のために生み出されたのか。

ジブンとは何なのか。


旧人類について教えられた時に皆が考えるコトだ。でもそれはまだ誰にも解明されていない。もしかしたらネオなら何か知っているかもしれないが、開示されてないということは、ネオもわかっていないか、俺たちが気づかなければいけないという事だ。


----------------------------------------------------------------------------------------------

【ちょっとした世界観補足】

●ロースクール

いわゆる小学校。

集団生活を送りながら、旧人類と同じように授業を受ける。脳に直接データをインプットもできるけどしない。

個体差もあるので進み具合はそれぞれ。


●新人類

見た目は普通の人間。食事も取るし、排泄もするし、睡眠も必要。

ただ、身体は成長しないため、スクールの修了過程に合わせてボディが交換される。旧人類よりもちょっと頑丈。でも老朽化や不具合は起こるし怪我もするので病院もある。


●コンシェル

持ち主である新人類の生活をサポートすることを使命としたAIホログラム。

持ち主とのコミュニケーションによってコミュニケーション力が成長する。

初期フォルムはデフォルメされた羊型。結構かわいい。

大抵のヒトはロースクール卒業後に自分好みのフォルムに設定しなおす。

カウンセリングやスキャンによる身体検査の他、センターへの接続や居住空間の制御などを行う。基本は居住空間から出れないが、ポータブルボディに移行してもらえれば外出も出来る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る