第1話 謎の記憶媒体
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「あー、怒り感情プログラムなぁ。あれ結構きついんだよな。リソース強制的に食われてる感じがして。まあ、基礎感情が取得できてて、その他の感情取得に問題ないんだったら別にいいんじゃね。元々【怒り】とか【嫌気】みたいなマイナス感情は取得しにくくできてるし。」
思わず零れた愚痴とも相談ともつかない言葉へのマサヤの反応はあっさりしたものだった。
「開発者がそんな事言っていいのかよ。」
マサヤは同じ時期に基礎教育プログラムを受けていた友人で、基礎教育プログラムを修了しそれぞれ別の会社に就職した今も交流が続いていた。
「ははは、俺らだって開発した全てのプログラムに適応できてる訳じゃないし、皆がみんな簡単に適応できちゃったら開発の意味もなくなってくるだろ。また新しい治験データも出てきたし、いつかはお前に合うプログラム開発してやるから。」
マサヤは大手感情プログラムメーカーで開発の仕事をしている言わば感情解析のプロだ。そんな男の心強い言葉に少し気持ちも浮上した。
「そうだな。コンシェルにも言われたし、気長に待つよ。」
「おう、そうしろ。そんで、お前の方はどうなんだよ?またあっち行くのか?」
あっち・・・旧人類が暮らしていたとされる旧惑星【地球】のことだ。僕たちの暮らしている仮想惑星【ヴァース】も地球を元に創られたらしい。
俺はその地球に残されている残存物を解析し、そのデータを元に新しいモノを開発する仕事をしている。以前は解析だけをする研究所に勤めていたが、探索から開発までやりたくて、旧惑星の探索に必要な資格を取って独立した。昔からモノ作りは好きだったし、旧惑星は文化も含め興味深いものが多く、天職だと思っている。
「ああ、いやこの前の探索で面白いもの見つけたから、しばらくはこっちで解析と開発するつもり。戻ってすぐ汚染検査に出したから、問題なければそろそろ戻ってくるころだと思う。」
「お、いいじゃん。今度はどんなん作るんだ?めっちゃ楽しみ。」
この男は昔から俺の作るモノのファンを公言していて、製品化された商品を真っ先に購入してくれるお得意様だ。試作品の動作チェックなんかにも積極的に協力してくれている。
「仕様的には映像を写し取るものっぽいんだけどな。どこにもデータ保存機関とか移行用の接続機関がないんだ。」
「へぇー。旧人類はコンシェルもついてないし、自分の脳をセンター接続もしてなかったから、外部の記録媒体に頼ってたって習ったけど、記録媒体には必ずどこかにデータ移行があるはずだよな。」
「そのはず…なんだけどな。データ移行がなかったとしても、どうにかしてそれを機体から取り出していたはずだから、その方法を調査中。」
もし、接続機会がないとしたらデータではない何らかの形で出力・保存していたってことだ。
どんなものだったのか色々と想像が膨らみ、今からワクワクしている。早く解析に入りたい。
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