第43話 ドラゴンと共に!

 アスールさんの速度は、ワイバーンよりもかなり早い。

 後続のワイバーンたちは付いてこれるのかと、後ろを振り返る。

 四頭のワイバーンは編隊を組んで、しっかりと付いてきていた。

 僕は不思議に思い、よく観察すると、アスールさんを中心にシャボン玉の様に膜が広がっている。

 ワイバーンたちは、その中で飛行していた。

 これが風魔法の膜で、ワイバーンたちもその中にいるから、空気の抵抗を受けずに付いてこれるのだと想像がついた。

 きっと、ジーナさんが使った風魔法の強力なタイプなのだろう。

 ドラゴンだけはあるなと感心してしまう。


 ふと、前方に目をやると、首都ユナハとユナハ城がしかっりと目視できてしまう。

 まだ、シャルたちへの言い訳は思いついていないのに到着が早すぎる。


 「フーカ様? 大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ。でも、ここでは吐かないで下さいね」


 ケイトが心配してくれたのだと思ったら、少し違うような気がする。

 アスールさんの頭がビクッとして、こちらを振り向く。


 「フーカ、わしの背中で吐くことは許さん! 吐いたら、一生、たたってやるからな!」

 

 「吐かないよ! それに、シャルたちへの言い訳が思いつかなくて、焦っているだけだし!」


 「フーカ様、言い訳を考えるよりも、素直に話して、謝った方が賢明です」


 ミリヤさんに諭されてしまう。

 そして、彼女の後ろにいるヒーちゃんとオルガさんも、コクコクと頷いていた。


 「フーカ様、こんなデカブツで乗り込むんですから、言い訳は無理ですよ!」


 「ケイト! こんなデカブツって、わしをなんだと思っているんだ!」


 「ヒィッ! すみません。アスール様、お許し下さい!」


 ケイトはアスールさんの背中で土下座をして彼女に謝る。

 謝罪相手に乗っかって、土下座で謝罪する光景は、とても異様に思えた。


 「何だか、下が騒がしいです」


 ヒーちゃんに皆が何かに気付き、下を覗き込んだ。

 僕も同じく覗き込む。

 地上では、悲鳴を上げた市民が逃げ惑うように建物に隠れ、兵士や騎士が駆けずり回っていた。


 カン、カン、カン! カン、カン、カン!


 鐘までならされている。

 城壁の屋上には弓兵が待ち構え、城の塔にも弓兵がそろえられていた。

 うげっ、まだ、真上まで来ていないのに、ここまでおおごとにされるのか……。


 「フーカ様、どうします? かなり、おおごとになってますよ」


 ケイトが他人事の様に言ってくる。


 「うーん……。そうだ! 飛竜兵たちを先に行かせて、僕たちは上空で警戒が解かれるまで待機しよう」


 「そうですね」


 ミリヤさんは、そう言うと、後方の飛竜兵たちに合図を送った。

 彼らはすぐに察して、城へ向かって降下していく。


 「後は、アスール様に上空で待機してもらいましょう」


 ケイトはアスールさんの頭に出来るだけ近付く。


 「あいつらめ! わしを抜いていくとは、ちょこざいな!」


 アスールさんはケイトが声を掛ける前に、勘違いしているであろうセリフを叫ぶと、ワイバーンたちを追いかける。


 「「「「「ぎゃぁー!!!」」」」」


 彼女の行動に、僕たちは悲鳴を上げることしかできなかった。

 皆は僕のそばに集まると、アスールさんの背中にしがみつく。


 「フーカ様、奥さんの手綱はしっかりと握っていて下さいよ!」


 ケイトが皮肉を言ってくる。


 「ケイト! 何でアスールさんに説明しなかったの?」


 「何ですか? 私のせいだと言いたいんですか!? 私が声を掛ける前に、アスール様が叫んで暴走しだしたんですよ!」


 「背中に剣を突き刺せば止まりますかね?」


 レイリアが剣を抜こうとする。


 「「「レイリア! ダメ!」」」


 僕とケイトだけでなく、ミリヤさんまでもが叫ぶ。


 「レイリア、グリュード竜王国と戦火を開く気ですか!? それに、アスール様は、私たちと同じくフーカ様の婚約者なのですよ!」


 ミリヤさんが本気で怒っている。


 「ご、ごめんなさい」


 レイリアはシュンとしてしまった。


 ズーン!


 凄い衝撃音がして、土埃が舞い上がった。

 僕たちが取り乱している間に、アスールさんはワイバーンの離着陸場に着いてしまったのだ。


 「フンッ。勝った!」


 勝ち誇るアスールさんだったが、周りを見渡すと、兵士と騎士の軍団が僕たちを取り囲んで、剣と槍を構えていた。

 その中に、黒ずくめの甲冑に身を包んだシリウス姿を見つける。


 「シリウスー! ただいまー!」


 僕は彼の名を叫んで、大きく手を振った。

 彼は僕に気付くと剣を納め、兵士たちに号令をかける。

 すると、兵士と騎士たちは武器を納めて、アスールさんから離れた。


 そして、僕たちがアスールさんから降りると、彼女は人の姿へと変わる。


 「どうだ! ワイバーンどもよりも先に着いたぞ!」


 彼女はドヤ顔で、エッヘンと言わんばかりに胸を張る。


 「アスール様! 何を言っているんですか! 危なく攻撃されるところだったんですよ!」


 いつになく、興奮気味のケイトが、アスールさんを注意する。


 「ケイト、何を怒っている。こんな雑魚共、わしのブレスで一撃だ!」


 「「「「「……」」」」」


 僕たちは絶句した。


 「フーカ様ー。私、ついて行けません……」


 ケイトは僕の肩に頭を乗せて嘆く。

 僕は彼女の頭をなでてあげる。

 さすがに今回は、ケイトに同情してしまう。

 そして、誰もが疲労感を顔に漂わせていた。

 僕たちの背後では、今になってワイバーンたちが順に着陸してくる。

 彼らにも謝らなくては……。

 僕は到着したばかりのワイバーンたちに駆け寄り、飛竜兵たちに謝っていく。

 彼らは事情を知ると、僕に同情してくれ、逆に励まされてしまった。

 そこに、シリウスが僕駆け寄って来た。


 「フーカ様、これはいったい……。説明してもらえますか?」


 「うん。だけど、この場で話していいのか分からないから、詳しいことは部屋で話すよ」

 

 「分かりました。では、執務室に行きましょう」


 彼は察してくれた。

 そして、そばにいた部下に兵を引かせるようにと命令をすると、僕たちと一緒に執務室へと向かう。




 執務室には、エンシオさんとマイさんしか待っていなかった。

 二人の顔は、どこか引きつっているようにも見える。


 「あれ? シャルたちは?」


 「シャルちゃんたちは、まだ帰ってないわよ」


 マイさんの言葉に、僕はホッとする。


 「ところで、フーカ君がドラゴンで現れるから、城外だけでなく城内までもがビックリよ! 説明して頂戴!」


 エンシオさんがいるのに、相変わらず、マイさんが仕切っている……。


 「えーと、それは……」


 コンコン。


 ドアが叩かれると、クリフさんとヨン君が勢いよく室内に飛び込んできた。


 「フーカ様! 何でドラゴンで現れるんですか!? 前もって連絡を入れて下さい!」

 

 「そうだぞ……です! 兄ちゃんばかり、面白そうなことに巻き込まれてズルいぞ……です」

 

 クリフさん、ヨン君の順に立て続けに話してくる。

 二人とも興奮気味だった。

 ヨン君なんか、言葉遣いが地に戻ったのを無理矢理修正しているありさまだ。


 「ごめん、ごめん。こっちもドタバタしていて、それどころじゃなかったから」


 僕が頭を掻きながら答えると、僕の後ろでは、炭酸水探索に同行した面々とアスールさんが、ウンウンと頷いている。

 それを見たシリウスは、何となく気付いたのか、頬を人差し指で書きながら苦笑する。


 「その二人のことはどうでもいいから、早く面白い……コホン。この状況になった説明をして頂戴」


 マイさんからどうでもいいと言われた二人は、顔を引きつらせる。

 ん? 今、マイさんの口から「面白い」といった単語が聞こえた。

 僕がしでかしたことを楽しむ気だ。

 しかし、説明しないと、話しが前へと進まない。


 「コホン。えーと、こちらが、さっきのドラゴンで、グリュード竜王国所属でブルーエンシェントドラゴンのアスールさんです」


 僕はアスールさんをそばに引き寄せ、マイさんたちに簡単な紹介をした。


 「わしは、グリュード竜王国王室を守護する六古竜が青の一族当主、アスール・エランだ。この度、フーカとは婚約を交わした。以後、お見知りおきを!」


 アスールさんが挨拶をすると、マイさんたちは口をあんぐりと開けて、固まってしまった。


 「普通、こうなりますよね」


 ケイトがつぶやく。


 「それで、アスールさんとの経緯いきさつだけど」


 「ちょっと待って!」


 マイさんが僕の言葉をさえぎると、エンシオさん、マイさん、クリフさん、シリウス、ヨン君の順にかしこまった自己紹介を始める。

 アスールさんは、それをウンウンと頷き、「こちらこそ、よろしく頼む」と声を掛けていく。




 

 「では、こちらに」


 皆の挨拶が終わると、エンシオさんは通し部屋の扉を開き、僕たちを招く。

 その部屋は、会議室のようで、大きなテーブルが置かれ、対面できるように両側に椅子も並べられていた。

 僕は、こんな部屋が隣にあることを、初めて知った。

 皆が席につくと、ヨン君がお茶を出す。

 そつなくこなす彼を見て、子供の吸収力は凄いなと思う。

 僕も日本では、まだ子供扱いされる歳だけに、少し焦りを感じる。


 僕は、一口、お茶を飲むと、皆を見回してから話し始めることにした。


 「えーと、アスールさんとの経緯を話していいのかな?」


 「フーカ様、お願いします」


 クリフさんが頷く。


 「炭酸水の探索のついでに、炭酸泉の源泉も探索したところ、アスールさんと鉢合わせして、源泉を引いた温泉に一緒に入って、アスールさんとぶつかったら、彼女の逆鱗に口付けをしたので婚約して、一緒に帰ってきました」


 大雑把すぎる僕の説明に、クリフさんたちが顔を引きつらせた。


 「そんな大雑把じゃ面白くもないし、分からないわよ!」


 マイさんに怒鳴られてしまった。

 そこで、ミリヤさんが僕の代わりに説明を始める。


 ミリヤさんが一通りの説明を終えると、クリフさんが話し出す。


 「アスール様は、今後、ユナハ領がユナハ国として建国した際には、こちらで生活をしますか?」


 「もちろんだ。国や女王が何と言おうと、初めてできた旦那様のそばを離れる気はない!」


 「しかし、グリュード竜王国では立場ある地位におられますが、大丈夫なのでしょうか?」


 クリフさんが鋭いところを突いてくる。


 「大丈夫だ。青の一族は、わしだけではない。そこら辺の青二才に押し付ければいいことだ」


 そこら辺の青二才に押し付けちゃダメでしょ。

 皆も僕と同じ意見だったのか、少し困惑した表情を浮かべる。


 「心配するな。青二才といえど、ブルーエンシェントドラゴンなのだから、お主らの言う青二才とは格が違う」


 彼女はドヤ顔で捕捉する。

 そこまで言われると、僕たちは納得するしかなかった。


 「ところで、フーカ様がおっ立てた事件が抜けてましたけど?」


 スパーン!


 僕はケイトをハリセンで思いっきり叩いた。

 彼女は頭を押さえて、シュンとする。

 そして、ミリヤさんたちは顔を赤くしてうつむく。


 「何々? フーカ君のおっ立て事件って何なの?」


 マイさんが席を立ち、前のめりになって聞いてきた。


 スパーン!


 僕のハリセンがマイさんにも炸裂した。

 彼女も頭を押さえてシュンとする。


 「二人とも、次にその話題を振ったら、アスールさんに『カプ』をしてもらうので、よく考えてから発言してね」


 僕は引きつった笑いを二人に向けると、彼女たちの顔は、見る見るうちに血の気が引いていく。


 「『カプ』ってなんだ?」


 「アスール様が知るようなことではないです」


 「そうよ。この件は無かったことにしましょう」


 ケイトとマイさんは、アスールさんが『カプ』に興味を持たせないように必死だった。




 アスールさんの件と、炭酸水の件が一段落すると、クリフさんがケイトと生産工場と湯治場の建設について話し始める。

 その間、僕たちはのんびりとお茶を飲んで、一息入れる。


 「あっ! 忘れていました!」


 レイリアはそう言うと、剣を抜き、マイさんに突きつける。


 「ヒィッ!」


 マイさんは悲鳴を上げて、尻もちをつくように転がる。


 「レイリアちゃん、いきなり、何? どうしたの?」


 彼女は動転していた。


 「炭酸水の看板です。よくも私を小ばかにしてくれましたね!」


 なるほど、あの件か。

 僕たちは、レイリアの行動が理解できたので、黙って二人を見守ることにした。


 「看板? ああ。あれは若気の至りってやつね。お茶目だったでしょ?」


 ピキッ。


 レイリアがキレそうだ。

 さすがに剣だとまずいので、彼女にハリセンを渡して、剣を彼女から取り上げた。 

 剣の重みで僕がふらつくと、シリウスが支えてくれる。


 「知っていたなら、何故、最初に教えてくれなかったんですか?」


 「うーん。忘れてた。それに、憶えていたとしても教えないわよ。面白くならないもの」


 スパーン! スパーン!


 「ぐふっ。レ、レイリアちゃん、顔、顔は……」


 マイさんが顔を押さえてのたうち回る。

 レイリアのハリセンさばきは見事だった。

 頭を叩いた後に、手首を返して切り上げたのだ。


 パチパチパチパチ。


 僕だけでなく、皆も無意識に拍手を送る。

 レイリアは気が済んだのか、僕のそばへ来ると、「ありがとうございます」と言って、ハリセンを返してきた。




 「そういえば、シャルたちは、いつ帰ってくるの?」


 「「「あっ!」」」


 僕の質問に、エンシオさん、マイさん、クリフさんの三人は、何かを忘れていたかのようにハモり、シリウスは渋い顔で、額を押さえる。


 「フーカ君が、ドラゴンと共に現れるからいけないのよ。アレがなければ、憶えていたんだから!」


 マイさんは、自分がシャルたちのことを忘れていたのに、僕に責任を押し付けてくる。


 「シャル様たちは、アルセ市で足止めをされています。今、入っている情報では、レクラム領軍がアルセ市に進軍、アルセ市軍と城壁を挟んで睨み合っているそうです」


 クリフさんが告げると、今までの陽気な雰囲気が吹き飛び、室内に緊張が走る。


 「それで、戦火は開かれちゃったの?」


 「いえ、まだのようです」


 「ユナハ市からは増援をしないの?」


 僕の質問に、クリフさんは、一度、シリウスを見てから口を開く。


 「ユナハ領軍は、まだ使えない状態でして、基礎訓練に励んでいます……」


 「……まだ、穴掘ったりしてるの?」


 「はい。正確にはさせているですね。今、送っても尻込みして撤退してくるのが目に見えてますから……」


 「さっきは、ドラゴン相手に立ち向かおうとしてなかったっけ?」


 「あれは、ユナハ市軍です。かといって、ユナハ市軍を送るわけにもいきませんので……」


 「市軍よりも領軍のほうが使えないって……」


 「……」


 僕の愚痴に、クリフさんが黙ってしまう。


 「ですが、今、アルセには辺境討伐軍が合流して、控えていますので、戦火が開いても負けることはありません」


 シリウスが捕捉するように答えた。


 「でも、まだ建国していないから、戦火を開いちゃダメだよね?」


 「その通りです。このままでは計画が大幅に狂ってしまいます」


 クリフさんが頭を抱えながら答える。


 「きっと、悪党の感か、リークした者がいるかよね」


 マイさんはそう言って、苦虫を噛み潰したような顔をする。


 「今、リークした者がいると想定して調査はしているわ。ところで、フーカ君だったら、この状況をどう打開するのかしら?」


 彼女は興味深そうに僕を見つめた。

 もしかして、試されてる……?


 「うーん。一つ思いついたんだけど……。アスールさんに手伝ってもらうのは有りかな?」


 「「「「「!!!」」」」」


 皆が驚いた表情で僕を見つめる。


 「それって、何を考えているのか、聞いてもいいのかしら?」


 マイさんは、恐る恐るといった感じだった。


 「もし、ドラゴンに襲われたら天災みたいなものなんでしょ?」


 「まあ、確かにそうだけど、グリュード竜王国にクレームがいくわよ」


 マイさんの目は、輝いているような気がする。


 「アスールさん、グリュード竜王国にクレームがいったらまずいかな?」


 「うーむ。女王なら、そんなことは知らん! 勝手に打ち取れば良いだろうと返すだろうから、問題はないと思うぞ。まあ、女王にしてみれば、また、どっかの馬鹿が勝手なことをしおってと嘆くくらいだろう。付け加えるなら、先に手を上げられたなら、女王も手を出したのだから自業自得だと言って、相手にしないと思うぞ」


 「「「「「……」」」」」


 アスールさんの返事に僕たちは絶句する。

 ドラゴンって、大雑把だ。


 「アスールさん。もしもの話しだけど、僕が戦場を歩いていて、危害を受けたらどうなるのかな?」


 ピクッ。


 アスールさんの眉が動く。


 「わしの旦那様に手を上げたのだから、それなりの報いを受けてもらう」


 彼女は、イラつき気味に言い放つ。


 「フーカ様、自分の身を危険にさらすことは許しません」


 シリウスもイラつき気味で僕に忠告をする。

 二人が怖いので、自分が囮になる案は却下しよう。


 「うん、これしかないな」


 僕はポンと手を叩き、そして、話しを続ける。


 「アスールさんに、レクラム領軍を驚かせてもらって、恐怖で、手を上げてくる者が現れるのを待つ。手を上げられたら、レクラム領軍とアルセ市軍の間に、アスールさんのブレスを吐いてもらって様子を見る。それでも撤退しないでアルセ市に攻め込むようなら、仕方がないのでレクラム領軍には全滅してもらい、アルセ近郊でドラゴンとレクラム領軍が交戦し、全滅させられたと広めるしかないね」


 室内が静まり返ってしまった。

 何か、マズいことでも言ったかな……?


 「フーカ。お主はドラゴンも引くようなことを、よく思いつくな。さすが、モリ家の血を引いているだけのことはあると褒めるべきなのだろうか……」


 アスールさんが困惑してしまった。

 他の人の表情は、揃って呆れ顔だった。


 「でも、今の案なら、建国前に戦火は開かないわね。交戦になったとしても、ドラゴン対レクラム領軍であって、私たちは関係ないものね。フーカ君、凄いわ!」


 マイさんは、さっきの呆れ顔から一変して、ウキウキとしながら満面の笑みを浮かべていた。


 「では、フーカ様とアスール様には申し訳ないのですが、今はその案にすがるしかありません。よろしくお願いいたします」


 クリフさんさんが頭を下げると、エンシオさんとシリウスも頭を下げる。


 「うん、分かった。アスールさん、悪いけど、お願いしていいかな?」


 「何を言う。任しておけ! 暴れまくってやる!」


 「いやいや、暴れまくっちゃダメだから!」


 「そ、そうなのか……つまらん」


 アスールさんが暴走しないように気を付けないと。




 その後、細かい打ち合わせが行われ、明朝に僕とアスールさんがアルセに向けて出発することになったのだが、二人だけでは不安が残るということになり、ヒーちゃんとケイト、オルガさんも同行することとなった。

 レイリアは、同行できないと知ると落ち込んでしまったが、シリウスと一緒に領軍を鍛え上げてと頼むと、喜んで引き受けてくれた。

 しかし、今回の面子に、レイリアとミリヤさんがいないのは少し不安が残る。

 ヒーちゃんが同行してくれることが唯一の救いだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る