第30話 王印はどこに?
僕たちは、教皇の執務室へと通される。そこには二人の男性が待っていた。
「初めまして、あなたがフーカ様ですね。私はダミアーノ・アゴストと申します。ウルス聖教国の教皇をしておりますが、ただのじじいだと思って気楽にして下さい。この者はオルランド・フランコ。ウルス聖教の枢機卿です。宰相のような役職で、私の補佐役や相談役といったところです。私は国家元首としての役割が多いため、彼にウルス聖教の取りまとめ役を任せております」
「オルランドです。遠路はるばるご苦労様です。事情は猊下から聞き及んでいます。この教会にある施設は、ご自由にお使い下さい。それと、私は顔が怖いので誤解されやすいのですが、根は優しいのでご安心ください。ハッハッハ」
ダミアーノさんは、前が禿げ上がった白髪頭に一般的な体型で、少しふっくらとした優しい顔をしている。
そして、オルランドさんは、痩せ型で黒髪に白髪が混じっいて、仕事ができそうなきつめの顔だった。
聖職者と聞いてお堅い生真面目なイメージの人を想像していたが、二人からはそういう雰囲気が感じられなくて、どこか安心する。
「初めまして、フーカ・モリです。とってもご迷惑をおかけする予感しかしないので、何卒よろしくお願いします」
僕は二人に頭を下げた。
「ハッハッハ。私も猊下も、お噂は色々と聞き及んでいます。そんなにかしこまらないで下さい」
オルランドさんはそう言うと、ダミアーノさんと一緒に笑っている。
どんな噂を聞き及んでいるのかが凄く気になるが、触れると火傷しそうなので
どうせ、ろくなことにならない。
それよりも、この国でやらなければならないことが多い。
ユナハ国のことだけでなくシャルの王印の儀式や椿ちゃんと連絡が取れるかも確認しなければならない。
時間を費やしそうなことばかりなのに、もう五月二八日だ。宰相たちに告げた首都ユナハへの到着予定日は三〇日、アノンたちのせいで予定が遅れたことは報せているから大丈夫だと思うが、できれば、宰相たちが何かの行動を起こす前にユナハに戻っておきたい。
すぐに会談の場が設けられた。
僕たちの思っていることが分かっているのだろうか?
シャルがユナハ国の承認と同盟の締結を持ち出すと、ダミアーノさんとオルランドさんは、あっさりと認めてしまう。
そして、それらを記した書簡をシャルに渡すと、内容を確認するように促された。
シャルは書簡に目を通すと満足げに頷き、彼らにお礼を言うと、僕も感謝の気持ちを込めて彼らに頭を下げた。
その後も、国家間の協力や支援、聖職者の派遣などがスピーディーに決められていく。
彼らのこちらへの要求といえば、ハウゼリア新教の排除うんぬんといったもので、こちらとしても、断る理由が全くなかった。
僕だって、うちの神様を邪神扱いする宗教を国内で布教させる気はない。
宗教の自由は認めるけど、過激思想なものまで認める気はない。
そして、国同士の決め事となるほとんどの案件が数十分やそこらで決まってしまった。
ダミアーノさんたちは、話し合うであろう議題や取り決めを予測して準備をし、書簡なども用意していたのだ。
彼らの手腕には驚かされる。
ちなみに、プレスディア王朝の時も早かったのだが、ここでの会談と比べると、エルさんが面倒くさいから早く決まったことが良く分かった。
僕の個人的な意見だが、プレスディア王朝は、女王がアレで大丈夫なのかと心配になる。
会談は無事に終了した。
その後は、ダミアーノさんたちのご厚意で、上級聖職者の食堂で遅めの昼食を頂く。
出された料理は豪華なものではなかったが、ファルマティスでは美味しいほうだった。
しかし、日本に住んでいた僕には、こっちの料理は味気ないものに感じてしまう。
僕は下級聖職者の食事と食堂が気になり、そちらがどうなっているのかを尋ねると、食事は同じもので食堂の広さが違うだけと聞かされ安心した。
頭のどこかに、
執務室へ戻った頃には、窓から西日が差し込み、夕刻になっていた。
「シャル、王印の儀式はどうするの?」
「教会側とミリヤが良ければ、この後にでも行いたいのですが……」
ダミアーノさんがオルランドさんとミリヤさんに視線を向けると、二人とも黙って頷く。
「では、直ぐに準備をさせましょう」
ダミアーノさんの言葉を聞きいたオルランドさんは、一度、部屋を出る。
そして、すぐに戻ってきた。
「準備ができたら連絡がきますので、このままこちらでおくつろぎ下さい」
ダミアーノさんは、オルランドさんが頷くのを確認してからそう言うと、ニッコリと微笑んだ。
「ありがとうございます」
シャルは深く頭を下げて感謝の意を表す。
僕たちは、待ち時間を今までの経緯をダミアーノさんとオルランドさんの二人に話したり、会話を楽しんだ。
途中、エルさんとダミアーノさんとオルランドさんの三人で何やら話し込むと、その内容は政治的なものだった。
新しく隣国ができるのに際して、周辺諸国同士でも話し合うことがあるのだろう。
コンコン。
扉が叩かれ、ミリヤさんの巫女姿と同じ格好をした女性が入ってきて、準備ができた事を告げる。
とうとう、王印の儀式ができるんだ。
儀式を行う場所へ向かおうとしたのだが、僕には気になることがある。
「ミリヤさんは、巫女姿にならなくていいの?」
皆から呆れた視線が向けられる。
「フフッ。フーカ様が巫女姿でして欲しいのでしたら着替えますけど」
ミリヤさんに笑われてしまう。
「そういうわけじゃなくて、神事とかって、正装というか、決まった服でやるんじゃないの?」
「そういうことですか。この服装も神事服なんです。外や旅先で行えるように動きやすく、汚れが目立たないようにできているんです」
「そうなんだ。その服は軍服だと思っていたけど、それも神事服だったんだね」
納得できたし、シャルたちの誤解も解けたようだ。
どんな誤解をしていたかは、ケイトとエルさんの様子から何となく分かったので、聞かないことにする。
僕たちは巫女さんの後をついて行く。
移動中に女性は巫女だけなのかをダミアーノさんに尋ねると、巫女は魔術に優れ、神事に携わる厳しい修行を終えた一握りの女性だけがなれるエリート職であり、一般女性はシスターから始めることにはなるが、司祭などに昇格でき、過去には教皇が女性だったこともあったと教えてくれた。
僕は、ウルス聖教が女性に開かれていることに感心した。
神鏡の間へと着くと、二人の神官が重そうな両開きの扉を開ける。
そこは神殿という感じの作りで、少しひんやりとした空気が漂い、中央には泉と噴水があり、そこから光があふれ出ていた。
その池の上には円形の祭場があり、その正面には、カーディアで見た神鏡よりも一回り大きなウルス聖教が持つ神鏡があった。
王印の儀式が始まる。
シャルとミリヤさんが祭場に立ち、ミリヤさんは何かをつぶやいているが聞こえない。
そして、シャルが
「神の加護をあなたに」
ミリヤさんがはっきりとした口調で言うと、シャルの額に口付けをした。
すると、シャルから青白い光が強く放たれ、その眩しいほどの光は徐々におさまっていく。
その瞬間、気のせいか僕の舌がピリピリしたような気がする。
それにしても、神秘的でファンタジーな光景だった。
皆も両手を組んで拝むようにしたまま、いまだに感動しているようだ。
儀式が終わると、二人は何かを話しながら、僕たちのところへと戻ってくる。
「どうだった?」
シャルは自分の身体を確認していく。
服の隙間から上半身を覗いたり、ミリヤさんに頼んで背中を確認してもらったりしていた。
「ちょっと待っていて下さい」
シャルはそう言うと、ミリヤさんを連れて神鏡の間を出て行ってしまう。
「王印って、見つけにくいものなの?」
「いいえ、形の種類は様々ですが、王印の刻まれたところに痺れる感覚がするらしいので、普通はすぐに見つかるんですけどね」
ケイトが答えながら首を傾げると、他の皆も不思議そうな表情をしていた。
「まさか、王印が授からなかったとか?」
「それはないわ! だって、あんなに強い光を放ったのよ。私も何度か居合わせたことはあるけど、あれほどの光を放ったのは初めて見たわ」
エルさんが答えると、ダミアーノさんとオルランドさんまでが頷き、彼らもこんなに強い光は初めてだったと言い切った。
その言葉に、僕はシャルが凄い指導者になるのかもしれないと思った。
シャルとミリヤさんが戻って来る。
だが、二人の顔は暗く、落ち込んでいた。
その表情から王印が見つからなかったことを察して、僕も皆も動揺していたのだが、エルさん、ダミアーノさん、オルランドさんの三人だけは落ち着いて何かを話し合った後、首を傾げて悩みだしてしまった。
「ミリヤ、あなたの感覚では、王印はシャルティナ様に授けられたのですか?」
「はい。確かに私を通して加護の魔力が流れていくのを感じました」
「そうですか……。途中で魔力が四散した感覚とかはありましたか?」
「ありません。先代皇帝エリアス様の時も私が行いましたが、その時の経験もありますから、今回、シャル様に授けられたことは確かなはずなんですが……」
その後もミリヤさんとダミアーノさんの二人で、確認するように言葉が交わされていく。
すると、しょんぼりとした顔のシャルが、僕の前に来る。
「フーカさん、ごめんなさい……」
彼女は今にも泣きだしそうだった。
ここは元気づけてあげたいが、かける言葉が見つからない……そうだ!
「シャル、落ち込むことはないよ。このあと、椿ちゃんと連絡をとれるかもしれないんだから、その時に王印を再発行してもらえるように頼むから!」
僕は胸を張って彼女に答えたのだが、彼女はあんぐりとしてしまう。
何か変なことを言ったかと思い周りを見ると、皆もあんぐりとしている。
また、やらかしたのだろうか……。
「さ、再発行って……。王印って、そんな簡単に授けられるものなの? っていうか、授けちゃっていいの?」
エルさんは困惑しながら尋ねてきた。
「知らない」
「……」
「でも、椿ちゃんも一応神様なんだから、それくらいできるでしょ。それに、今回は授ける側の不備みたいだし、それくらいのサービスがないと、詐欺で訴えられるよ」
「ごめんなさい。ちょっと、時間を頂戴……頭の中が混乱してきたわ」
エルさんが頭を抱えてテンパっている姿を始めてみた。
何だか面白い。
「と、とにかく、ここは一度落ち着いて、私の執務室に戻ってから話しましょう。フーカ様のお言葉を他の者に聞かせるわけにはいきません」
ダミアーノさんが落ち着きなく、キョロキョロと周りを確認していた。
「そ、そうですね。アン! レイリア!」
シャルが二人を名指しする。
ガシッ。
何故か、二人が僕の両腕にガッチリと腕を組んだ。
彼女たちを見ると顔は笑っているが、何だか怖い。
ズルズル。
僕は二人に引きずられていく……これって、連行だよね。
何故、犯罪者扱い……。
こういう時こそオルガさんだ!
僕は彼女に目配せをすると、彼女はサッと顔を逸らして僕と目を合わせないようにした。
ダメだった……っていうか、オルガさんは僕に仕える気があるのだろうか?
ダミアーノさんの執務室に戻った僕たちは、今後の方針を決めなければならなかった。
それは、シャルに王印が授からなかったからだ。
それなのに、何故か問い詰められているのは僕だった。
「フーカ君、一応神様だとか不備だとか、サービスって……。挙句の果てに、詐欺で訴えられるって、君は神様を訴える気なの?」
エルさんは興奮していて、何だか変だ。
「いや、その辺は言葉の
「……そうだった。フーカ君もモリ家だったわ。フーカ君にとっては言葉の綾かもしれなくても、こっちでは大問題なの! 場合によっては大騒ぎになるんだから。今後はやたらと神様の批判や愚痴はこぼさないように! 分かった? 分かったら返事!」
「はい!」
彼女が常識的なことを言う姿は女王の様だ。
それよりも、僕が彼女に叱られているのが納得いかない。
その後、シャルも加わり、お説教が始まってしまう。
二人がかりのお説教は、今までで一番きつく感じる。
それに、エルさんから常識だの非常識だのと言われることが釈然としなかった。
数十分も説教をされた僕は、もうへとへとだ。
皆は王印について相談していたが、答えは出なかった。
やっぱり、椿ちゃんに聞くしかないよね。
◇◇◇◇◇
僕たちは、夕飯やお風呂を済ませると、用意してもらったそれぞれの部屋へと入る。
少し経つと、皆がラフな格好で僕の部屋に集合しているのは、いつものことで慣れていたのだが、今回は少し違った。
エルさんとハンネさんまで一緒になってくつろいでいるからだ。
部屋の中では、王印がどこにいったのかが主な話題となっていた。
「フーカ様は、何か感じたりしなかったんですか?」
レイリアがベッドに横になって問いかけてくるのだが、つぶれた膨らみが強調されて、彼女のほうを向いて話せない。
「ぜんぜん。それに今までも何かを感じるとかもなかったし」
「何で、こっちを向いて話してくれないんですか?」
レイリアのこういった天然は、僕にとっては罰ゲームでしかない。
そして、ケイトに視線を向けると、やっぱり、彼女はこっちを見てニマニマしている……今回はその横にニマニマしたエルさんまでいる。
質が悪い。
僕は溜息をつくと、アンさんの淹れてくれたお茶を飲む。
「あちっ!」
「すみません。熱すぎましたか?」
「大丈夫だよ。冷めたお茶と間違えて、多く口に含んだだけで、アンさんのせいじゃないから」
僕はアンさんに手で平気と合図をして見せる。
「フーカ様大丈夫ですか? 火傷してませんか?」
レイリアが僕の口を覗き込もうとする。
僕の位置からは、彼女の胸元が丸見えだった。
レイリアは、自分が女性として魅力があることに気付くべきだと思う。
「大丈夫だよ」
「待って下さい! そのまま動かないで!」
彼女はさらに近付いてくる。
「フーカ様って、舌に
「ないよ?」
「動かないで舌を出してみて下さい」
んべー。
彼女に言われたとおりにすると、彼女が固まってしまう。
「レイリア? 大丈夫?」
彼女は額に指を当てて下を向くと、「うーん」と考え込む。
「王印……見つけちゃいました」
「「「「「!!!」」」」」
レイリアの言葉に皆は驚き、誰も声を発せられない。
しばらくすると、シャルが髪の毛をあげたりして、確認しだすと、それをエルさんたちが手伝う。
「えーと……。シャル様じゃなくて、こっちです」
レイリアが僕を指差す。
皆が僕を問題児とでも言わんばかりの目で見つめてくる。
「フーカ様、舌を出して下さい。ミリヤ様、確認してく下さい」
んべー。
レイリアに言われて、ミリヤさんが僕に近付き、舌をジーと見つめる。
「……王印です」
ミリヤさんの言葉に、皆がその場に崩れ落ちた。
「何でフーカさんは、いつもいつも……。光ったのは私なのに……何でフーカさんに王印があるんですか! もう嫌です。フーカさんなんて大嫌いです!」
シャルはベッドに顔を伏せると、両手でベッドを叩きだして拗ねてしまった。
「そうね。シャルちゃんは気にしなくていいのよ。悪いのはスットコドッコイのフーカ君よ。皆も、シャルちゃんの気持ちを理解してるからね。よしよし」
エルさんがシャルに寄り添って背中を優しくさすってあげる。
何だろう。皆の視線がとっても冷たい。
僕だって自分に王印が出るなんて思いもよらないことなのに、悪役にされてるし、それに、スットコドッコイって何? スットコドッコイって! 僕も拗ねて泣きたい……。
「でも、何でフーカ様に? 最初の儀式の時の口付けが原因でしょうか?」
ミリヤさんは原因を追究したいようだ。
「僕にも分からないよ」
僕は自分の手鏡で舌にある王印を見てみる。
ん? あれ? どこかで見覚えがある。
王印は、
「これは……」
「この王印の形を見た事があるんですか?」
ミリヤさんが顔を近付けてくるので、ドキッとしてしまう。
「えーと、姉ちゃんの胸元にあった痣と同じだと思う」
「お姉さんということはカザネ様ですか……。姉弟だからでしょうか? その痣に触れたりしましたか?」
触れる? あれも一応触れたことではある。
それよりも、王印って伝染るの? 何だか怖いんだけど……。
「触れるというか……舐めた?」
「はっ?」
「姉ちゃんが僕に抱きついて、胸を顔に押しつけた時に痣を舐めたんだけど、あれは事故だからね!」
「……」
ミリヤさんが呆然としてしまった。
「姉のおっぱいを舐めたって、フーカ様は姉弟で何をしてるんですか?」
ケイトがニマニマしながら嬉しそうに尋ねてきた。
「ケイト、言い方! おっぱいは舐めてない! 痣に舌が当たっただけ! それに事故だって! いきなり抱きつかれたから、ぶつかったんだよ!」
皆の視線がさっきよりも冷たい。
「痣はカザネ様の何処にありましたっけ?」
「胸元」
「胸元ってことは、やっぱり、おっぱいを舐めたんじゃないですか!」
「なっ……」
ケイトにやり込められてしまった……。
僕が落ち込んでいると、レイリアがそばに来る。
「フーカ様、もう一度、舌を出して下さい」
んべー。
「ふひゃー」
彼女は僕の舌を摘まんで引っ張る。
何してんの? 引っこ抜く気? 切り取る気? 凄く怖いんですけど……。
ペロ。
「んひゃっ!」
彼女は僕の舌を舐めてきた。
何を考えているのか、まったく分からない……。
それどころか、僕の顔が紅潮して熱くなっていくのが、自分でもよくわかる。
皆も彼女の予測不能な行動に硬直していた。
「ミリヤ様、フーカ様の王印が私に移っているか確認して下さい」
レイリアはミリヤさんに向かって舌を出す。
「……ダメですね。移っていません」
ミリヤさんは顔を引きつらせながら答えた。
「そうですか。ダメですか……。移っていればシャル様に王印を返したあげれたのに、残念です……」
レイリアのしたいことは、僕も皆もよーく分かった。
そして、後先を考えずに行動したことも……。
「私、レイリアだけは敵にまわしたらダメな気がします」
ケイトの言葉に、皆がウンウンと頷く。
当の本人だけは分かっておらず、キョトンとしていた。
「レイリア、あなたは気付いてないみたいだけど、フーカさんと舌を重ねたのよ」
シャルがレイリアと向き合って告げると、彼女の顔は見る見るうちに赤く染めがっていくのがハッキリと分かった。
「シャルも言い方!」
レイリアはスクッと立ち上がると、僕のほうへと向かってくる。
「フーカ様。歯を食いしばれー!」
「へっ?」
ボガッ。ドタン。
彼女が僕を殴ると、僕は椅子ごとひっくり返った。
普通は平手だよね……何で拳なの?
歯を食いしばれって……彼女は軍人だったんだ……。
ん? よく考えてみれば、彼女からしてきたんだよね……何で僕が殴られるの……。
僕は頬を押さえながら椅子に座りなおすと、ケイトがそばに来て治癒魔法をかけてくれる。
彼女の顔は苦笑していた。
他の人も苦笑しているが、シャルは疲れた表情で下を向き、エルさんは上を向いて高笑いをしている。
レイリアに至っては、スッキリしたという顔つきでご機嫌だった。
「歯が折れなくて良かったですね」
ケイトのそんな言葉と共に、夜は更けていくのだった。
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