第66話 挨拶

 アーマン村長はエリアスに聞いた、混合農業について話し始めた。


 農地の穀物を植える面積は今までの半分となり、回数は年1回から年2回となる。

 一回の収穫量は半分になるものの、その分農業が楽になる。


 開墾の手間が減り1年を通して収穫があり、それに加えカブなど根菜類が1年中収穫できることを話した。


 そして今までの収穫量の1.5倍くらいにはなると思うという事も。


「「「 な、なに。1.5倍だと!! 」」」


 その場にいた全員が口に出す。

 畑仕事をしている人達の顔役オズワルド。

 サブリーダーのラルフ、サムソン。


 農家の青年団のリーダー的な存在、フレイザー。

 

 それに商店街からは食堂のアルマンとコーネリア。


 そして鍛冶屋のジーン と、木工屋のキアランが居た。


「その話を実際にやったら仕事は楽になり収穫率が上がる、という事になるな」

「今から小麦を栽培すれば春の収穫に間に合うな」

「それにエリアス様は、凶作の時にも乗り越えやすいと言っていましたよ」

「確かに年に一度の栽培では、それが旨く行かなかったときに怖いな」


 勝手にそれそれが言い出す。


「しかしエリアス様は、どこからそんなやり方を学ばれたのかな?」

 フレイザーがポツリと言う。

「きっとエリアス様は、やんごとなき方で教養があるのよ」

 食堂のコーネリアが、やけにエリアスをかばう。

「言葉使いを聞いても庶民とは違うわ」



 そしてアーマン村長は空気を読んでけつをとる。

「では、そろそろ意見をまとめようと思う。エリアス様の農法に賛成の人は」


 ダメで元々、失う物はなにもなく全員が賛成した。


「明日の朝、皆が仕事に出る前にエリアス様が、挨拶に来るとおっしゃっていた。それまでに皆にも話しておきましょうか」


 そしてその夜は解散となった。



 朝は来た。

 今日は俺1人で寝て居た。

 この屋敷は2階に部屋が4つあり1人1部屋を割り当てた。

 今までは宿屋暮らしだったから、今までは1日おきに嫁達と寝てたけど。

 特に決めないで好きな時に一緒に寝れば良いと思う。

 俺に気を遣わず、みんなにゆっくり寝てもらいたいからね。

 一緒に寝ることが義務の様に思われたくないし。


 普段から3人には感謝の気持ちでいっぱいだ。

 でも、どうしたんだろう?

 最近、熱い気持ちがすぐに冷めて口に出なくなる。

 



 俺はベッドから起きて、1階の居間に降りた。


「お早う、エリアス君」

「お早う、エリアス」

 オルガさんとルイディナさんが、もう起きていた。

「お早う2人共、アルマン食堂で朝食を食べたら、村長の家に行かないとね」


「お早う、みんな」

 パメラさんも起きてきた。

 そして俺達は屋敷を出てアルマン食堂に向かった。



 食堂に着きドアを開けると、仕事前の人がたくさんいて混んでいた。

「いらっしゃい、エリアス君。待ってたわよ」

 コーネリアさんが迎えてくれた。

「ここが丁度、空いたわ。さあみんなで座ってね」

 俺達4人は勧められるまま椅子に座った。


「朝のメニューは1種類よ。みんな時間が無いから、早く出せるようにさ。今日はポトフだからね」

 そう言うと一度厨房に下がり、すぐにトレイに朝食を4人前載せて戻ってきた。

「はいよ、うちの食堂自慢のポトフだよ。味わって食べなよ」

 そう言いながら俺達の前に、やや深めの木の皿を置いて行った。

 木のスプーンですくい、みんなで食べ始める。


 他のお客さんを見ると20代半ばの人も居るが、比較的40~50代の人が多い。

 このままいくといずれは、高齢化社会になりそうなほど若い人が居ない。

 まずは若い人を定着させる、または呼び込むことをしないと駄目だな。

 そんなことを思いながら朝食を食べた。


「ご馳走様でした」

「あいよ、また来ておくれ」

 お金を払いアルマン食堂をでて、俺達は村長の家に向かった。


 村長の家に近づくと結構な、人だかりができていた。


「エリアス様、お早うございます」

 人だかりの中からアーマン村長が出てきた。

「お早うございます。アーマン村長」

「さあ、こちらへどうぞ」

 そう言われ俺達は中央に招かれた。


「エリアス様が考案された混合農業に、みんな賛成しております」

「それはよかったです」

「これから冬場に向かい小麦と人参と、ジャガイモを植えようと思っております」

「さっそくですか」

「ええ、早い方が収穫も早くなりますからな。それよりエリアス様。せっかくですから皆に一言挨拶をお願い致します」

 そう言われ俺は置いてあった箱に上がり、集まった人達を見渡した。

 小さく手を振っている人が居たので見ると、雑貨屋のマティさんところで寝具を譲ってくれたペニーさん、レジーナさん、フリーダさんだった。


 そして俺は上段(箱)の上からみんなに挨拶をした。


「え~、このたびの異動でヴィラーの村の領主に任命されました、エリアス・ドラード・セルベルトです。なにぶんにも新米の領主で十分に職責を果たせるかどうか、はなはだ疑問ですが私なりに一生懸命やるつもりです。今の私では力が及ばない部分もあるかと思いますが、皆様のお力添えを頂き、努力を惜しまず邁進していく覚悟でございます。3人の妻共々よろしくお願いします」

 そう言い俺は頭を下げた。


 俺はとっさに【スキル】世界の予備知識で、新任の挨拶を調べ話した。


『『『『『 シ~~ン! 』』』』』


 その場が静まりかえった。

 だ、駄目か!

 引用したのが『課長新任のあいさつ』だったからか?


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