第67話 mama's boy
俺は住民の前で新任の挨拶をした。
「「「 シ~~ン! 」」」
一瞬、間があったがその後、拍手をたくさん浴びた。
「「「 パチ、パチ、パチ、パチ! 」」」
「いいわ、いいわセルベルト卿」
ペニーさんが言う。
「セルベルト卿は堅苦しいのが嫌いみたいだから、エリアス様で良いみたいよ」
知らないおばさんが、俺のことを話している。
確かにそうだけど誰だ?そんな話がもう広まっているのかな?
「貴族様が俺たち庶民に頭を下げるなんて」
「な、なんて謙虚な挨拶なんだ」
「さあ、みなさん。それでは仕事に向かってください」
アーマン村長が声を掛け、みんなそれぞれにその場を離れていった。
「あなたが新しい領主様だったのね」
寝具を譲ってくれたペニーさん、レジーナさん、フリーダさんが残っていた。
「でも良かったわ。エリアス様が新しい領主様で。前の領主様は酷かった…」
ペニーさんは辛そうに言う。
「えぇ、お話は伺っております。さぞ辛かったでしょう」
「とても女好きで綺麗な女性には目がなくて」
「そうね、ペニー。私も何度断ってもしつこくされて、大変だったわ」
「あら、あなたもだったのレジーナ。お互い苦労したわね」
「私も『あなたは奇麗だから税金を掛ける』て、言われて、払えなければ体で払え、て。お金を用意するのが毎回、大変だったわ」
「まあ、フリーダ。あなたも苦労したのね」
は?
オイ、オイ、オイ。
「すみません、前の領主は何歳くらいの方だったのでしょうか?」
「25歳くらいかな。親が商売をやっていて金持ちで爵位を買った、て言ってたわ」
この国では爵位売買がある。
うらぶれた貴族が明日の金に困り、お金を持っている商家に爵位を売る。
元貴族はお金を、商家は名誉の称号を手に入れることができるのだ。
貴族は血の繋がりに意味があり、生まれたその時から自然に認められる階級だ。
一方、爵位は権力によって承認されることで生まれる階級なのだ。
そして位の低い男爵、騎士などの爵位は売買されても国は関与しない。
低い位は権限や力もそれほどなく、国にしてみるとクラウドファンディングみたいなものだ。
不特定多数の人が国という組織に爵位を買う事で、財源の提供や協力などを行うからだ。
だがやりすぎると粛清される。
だた、それだけのことだった。
「エリアス様なら、私で税金を払っても良いわよ」
「な、何を言っているのペニー。あなたには旦那が居るでしょ。私なら独身だから」
「それなら私もよ」
レジーナさんとフリーダさんが、訳の分からないことを言っている。
しかしペニーさん達は40~50代だ。
前の領主は女好きと聞いていたが?
困って嫁達3人を見ると、呆れた顔をしていた。
この村に来た時には、ムッとした顔をしたのに。
どうしたんだ?
『ねえ、聞いてたルイディナ。前の領主は女好きだったて聞いてたけど、マザコンだったのね』
『マザコンてなに?パメラ』
『エリアスっちから聞いたんだけど、母親に対して青年が強い愛着・執着を持つことなんだって。大人になっても母親離れできてないの。だから性の相手も自分の母親位の年齢の人が好きで、とにかくオッパイが好きなの』
『男ならみんなオッパイが好きなんじゃないの?』
『それが違うのよオルガ。オッパイをしゃぶっている時や、触っている時は赤ちゃんに戻れるの。そして下手に大人だから性欲もあって始末が悪いのよ』
一呼吸おいてパメラが話始める。
『ここに来る前に前の領主は奇麗な女性が居る家には色んな税金を掛け、払えない場合は女性の体を要求した、て聞いたけど若い人なんていないわよね』
『そう言えばそうね。大体が40~60代で、そのお子さんの年齢が20代半ばで、その子供が10歳位かな』
『ね、この村には若い人なんて居ないのよ。前の領主から見たら自分好みの素敵なおばさん達が居る村だったのよ。でもエリアスっちが違うから、おばさん達がエリアスっちにベタベタしても、私達は気にすることは無いのよ』
『そ、そうねパメラ。エリアスは人が良いから、女が増えそうで怖かったの』
『大丈夫よオルガ、安心して。この村にはその対象になる年齢の人が居ないわ』
『そうね、居るのは40歳以上か25歳くらいの既婚者か10歳くらいの子供達よね』
突然、女子集会を始めるのは止めてほしいな。
しかし前の領主はマザコンだったのかな?
エリアスはこの世界に転移する生前は58歳だった。
だが今は精神年齢も肉体年齢の17歳になっている。
そして肉親のいない寂しさから時折、誰かに甘えたい時もある。
だが大人になってしまうと、それもできない。
「誰かの胸で、甘えたい。大人になった今だから」
あると思います!
マザコン。
和製英語でマザーコンプレックス。
英語ではmama's boy。
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