第60話 寝具

「おい、どうしたんだ?」

 俺達が話していると、今度は40代のマッチョなオジサンが出てきた。

「この人は主人のアルマンよ。実はね、この子達が…」

 良かったね、ニーナさん。ややお父さん似で。

 数十数年後の悪夢は回避できるかもね。


「そうか、仕事か。村の周りは森に囲まれて冒険者なんて来ないから、逆に魔獣や魔物は取り放題なんだけどな」

「猟師は居ないのですか?」

「猟師はいるが何人もいないからな。だから肉は貴重なんだよ。たくさん狩ってきてくれたら、安く買ってやるから」

 な、なんかアルマンさん、言ってることが変ですよ~!

 みんなに美味しい肉をたくさん食べさせてあげたい=安くたくさん買う、てこと?

 それでは誰も狩りに行きたがりませんよ。


「それより寝具の話でした。雑貨屋さんに行ってみます。夜に食べに来ますから」

 俺はそう行ってアルマン食堂?を後にした。


「あの子達どこに泊まっているのかしら?この村には宿屋なんてないのに」

「村長のところじゃないのか、コーネリア。大概、この村に来た奴は宿屋が無いから、村長のところに泊まるからな」

「そうかもね。それにあの男の子、あんな小さいのに冒険者なんて大変ね」


 黒髪、黒い瞳の美形の少年。

 人の心を引きつけにさせる、雰囲気を持つ少年だったわ。

 隣の奥さんにも教えてあげないと。




 俺達は雑貨屋にやってきた。

「こんにちわ」

 そう言って中に入る。

 すると奥から40代の細身の女性が出きた。


「いらっしゃい。何が入用だい?」

「寝具ありますか?」

「寝具かい?それはどうして」

 俺はこの村に越して来たばかりだという事。

 寝起きするところはあっても、生活用品や寝具がないことを話した。


「そうかい。住んでくれるのは嬉しいよ。私は雑貨屋のマティだよ」

 俺達も自己紹介した。

「エリアスです。そしてこちらが嫁のオルガ、ルイディナ、パメラです」

 するとマティさんは、驚いたようにオルガ達3人を見てこう言った。

「まあ、その歳で嫁さん3人かい。大変だね」

 なぜか同情したような目で俺を見た。

 そんなに貧乏そうに見えるのかな俺達。


 あれ、そう言えばアルマンさん達には自己紹介しなかったな。

 まあ後ですればいいや。


「悪いけど寝具は取り寄せないと無いね」

「やはり、そうですか」

「寝具なんて置いても貧乏な村だから、数年経っても売れそうもないからね」

「そういえば食事はどうしているんだい?鍋とかはあるのかい」

「その前に俺達、冒険者をやっていたので、自炊はしたことがなくて。食事はアルマンさんの店で食べようと思いまして」

「アルマンの店かい。それなら夕食前に、また寄っとくれ。力になれるかもしれないからね」

 そうマティさんは言ってくれた。


 この村の人達はみんな良い人そうだ。

 そして俺達は屋敷に戻った。

 なぜか嫁達はアルマンの店にいた時も、マティさんと話している時も静かだった。

 なぜだ?



(寝具ね。私のところに使い古しが一組あるわ。他の家にもないか当たってみるか)

 そうエリアス達が店を出た後、マティは思った。


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