第45話 鞭と鞭と飴
朝になった。
今日は隣にルイディナさんが寝ている。
俺達は起きて食堂に行った。
オルガさんとパメラさんが先に朝食を取っていた。
「おはようございます!」
「「おはよう!!」」
そして何事もなく1日が始まる。
これから毎日、朝はこんなしらじらしい感じになるのか。
何人も奥さんがいる人は、図太くないと駄目かもしれないな。
朝食を食べた俺達は今日は防具屋へ向かう。
毎日、どこかに行く用事がある。
一回で済まないのかと思うが。
防具屋に入りブラートさんを呼んでもらう。
「やあエリアス。待ってたよ。出来てるぜ」
そう言って一旦、ブラートさんは奥に引っ込んだ。
そして重たそうに防具を持ってきた。
「ほらよ。剣士のお姉ちゃんのプレートアーマーだ」
オルガさんが試着を始める。
「今度はタラテクトの糸で編んだローブだ」
次はパメラさんだ。
さすがにローブは試着室で着替えようよ。
最後は俺とルイディナさんのライトアーマーだ。
みんなで細かい調整をした。
ブラートさんにも俺が男爵になり、この街を出ていくことを話した。
「そうか寂しくなるな。また遊びに来いよな」
そう笑って見送ってくれた。
俺はみんなと別れ1人で冒険者ギルドに行った。
スイングドアを開け中に入る。
ここに来るのもあと少しかと思うと名残惜しい。
アリッサさんのところへ行く。
ちょっと気まずいな。
「こんにちわ!」
「こんにちわ、エリアス君。今日はどうしたの?」
「ギルド長に挨拶をしておこうと思いまして」
「分かったわ。ちょっと待っていてくれる?」
アリッサさんが聞きに行ってくれた。
「どうぞ、エリアス君。上がっていいそうよ」
「ありがとうございます。アリッサさん」
俺はお礼を言って2階に上がって行った。
ゴルド長の部屋のドアを叩いた。
「どうぞ」
「失礼します」
「やあエリアス君、公爵様から話は聞いたよ。さあ座って」
俺は向かいに座り話し始めた。
「男爵のお話を頂き、悩みましたが受けました」
「そうか、冒険者をやっているよりはいいだろう。それに領地経営も初めてだろうから、向こうに行けば代わりにやってくれる人がいるだろう」
「代わりにやってくれる人?」
「あぁ、そうだ。考えてみたまえ。今まで冒険者をやっていて、英才教育を受けていないものが帖領地経営が出来ると思うかね」
「無理だと思います」
「だから代わりに経営をしてくれる人が領地に居るのさ。だがその人自体の能力もそれほどでもない事が多く、小さい村くらいしか任せられないがな」
「俺が行くヴィラーの村は今、村長が代行業務をしていえると聞きました」
「村長か。村長なら村に根付いているから、人望があれば任せておけるな」
前任者の男爵は村の若い女を我が物にしようとしたり、重税を課し着服横領で爵位剥奪となったことを説明。
そのため、今年は税を軽くし住民の怒りを抑えていることを話した。
「そうか。その村長は管理側の考えではなく、領民の立場になって考えられる人なのだろう。そうでなければ任せられえないからな」
「では俺は何のために行くのでしょうか?」
「村長は村長であって、それ以上になれないと言う事さ。だから領主が必要なんだ」
「では俺の役割は」
「経営は当てにされていないだろう。まあ領主なんて国と村を繋ぐ橋渡しが仕事みたいなものだからな。後は冒険者上りだから、村を魔物から守るれば喜ばれるだろう」
「橋渡しと言うだけで俺は年400~400万の報酬。住民は不満に思わないのでしょうか?」
「思わないだろうな、それが貴族社会だ。よほど理不尽なことを、されない限りは納得するはずだ」
「なぜですか?」
「村人だからさ。持って生まれた身分格差はぬぐえないのさ」
「身分格差ですか」
「彼らは貴族の下に仕え耐え、耐えられなくなったら暴動が起き国は滅ぼる」
そして一呼吸置きギルド長は言った。
「住人が耐えられる範囲の税を課して悠々自適に暮らすか、逆にいい領主になろうとするかはエリアス君次第さ」
「自分次第という事ですか」
「あぁ、領民は甘やかせば付け上がるからな」
「飴と鞭ですね」
「旨い言い方をするな。できれば鞭と鞭と飴くらいが丁度、良いかもしれんぞ。『紅の乙女』のメンバーは連れて行くのかい?」
「えぇ、そのつもりです」
「そうか彼女達も連れて行くのか。で、いつ行くんだい?」
「一通りの挨拶が終わったので、明日にでも向かおうと思います」
「そうか、気を付けろよ」
「ありがとうございます。お世話になりました」
俺は挨拶をして、ギルド長の部屋を出た。
受付に向かいアリッサさんにも挨拶をした。
「明日、旅立とうと思います。色々とお世話になりました」
「寂しくなるわ、エリアス君が居なくなると。元気でね」
「さようなら、また会いましょう」
そう言って俺は手を振りギルドを後にした。
宿屋に帰りオルガさん達に明日、旅立つことを話した。
急いで行く必要もないので、ゆっくり観光でもしながら行こうと。
宿屋の主人、ビルさんにも話をした。
「明日、旅立つんだね。分かったよ。また来ておくれ」
「エリアスお兄ちゃん、また来てね」
アンナちゃんが可愛く言う。
そして旅立ちの朝が来た。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
面白いと思って頂けたら★マーク、♥マークを押して応援頂くと励みになり嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます