第43話 慰め

 俺はアリッサさんにヴィラー村へ同行するのを断られた。

 それはそうだ。

 自分の他に3人も女性がいるのに、ついて来てほしいなんて。

 異世界に転移して、いきなりモテ期到来でうぬぼれていたんだ。


 俺は宿屋までの道のりを、トボトボと歩いた。


 泊っている宿屋『なごみ亭』へ帰ってきた。

「エリアスおにいちゃん、お帰り~。はいこれ部屋の鍵」

「ありがとう、アンナちゃん」

 宿屋の一人娘アンナちゃんは優しく出迎えてくれた。


 俺はオルガさん達の部屋のドアをノックした。


 トントン!


「あら、お帰りエリアス。アリッサさんはどうだった?」

 ルイディナさんがドアを開け聞いてくる。


 俺は首を横に振った。


「そう仕方ないわよね。さあ中に入って」

 部屋の中に案内され、オルガさんとパメラさんにも断られたことを話した。


「エリアスっち、私達3人が居るんだから元気出してよ」

 そうオルガさんに言われた。


「冒険者の中には、お世話になった人も居るから挨拶しないといけないね」

「そうだね。明日にでも挨拶しとこうか」

 ルイディナさんとパメラさんの間で話が進んで行く。


 この間でやることはもう特にない。

 頼んである武器や防具が出来るのを待って旅立とう。


「じゃあ、おやすみ」

 そう言って俺は部屋を出た。


 お腹が空いた。

 そう言えば夕食がまだ、だったな。

 食堂で食べてこよう。



 アリッサさんの事はもう気にならなくなっていた。

 どうしたんだ。

 そんなに俺は冷たかったのだろうか?と、自問自答みる。


【メンタルスキル】沈着冷静のレベルが上がり、多少の事では動揺しなくなっている自分に気づかなかった。




 夕食を食べ部屋に戻ってしばらくするとドアをノックする音が…。


 トントン!


 ドアを開けるとオルガさんが立っていた。

「エリアス君、ちょっといいかしら」

「あぁ、どうぞ」

 俺はオルガさんを中に招き入れた。

 そして椅子がないのでベッドに2人で座った。

 

「どうしたんですか?」

「アリッサさんの事は残念だったわね。私が代わりにゴニョ、ゴニョ、ゴニョ…」

「えっ、聞こえないんですけど」

「順番から言うと私が1番だから」

 そう言うとオルガさんはランプの灯りを消した。

「えっ、なに?」


 これは、もしかしたら俺を慰めに来てくれたのか?


 そしてオルガさんは俺の隣に座った。

 俺の左手を取り自分の頬に持っていく。

 オルガさんの短い赤い髪がサラサラだ。


 木桶を使った温浴をしたのか。

 この世界はお風呂は、よほどのお金持ちでないと入れない。

 だから宿屋で木桶に水、またはお湯をもらい体を洗うのだ。

 ただ水は貴重で値段も高いのだが。


「向こうの領地に行ったら、どうなるか分からないでしょ?だから今なの。私の後に2人控えているから、せかされちゃって。エヘッ」


 オルガさんの、しおらしい言葉を聞いて俺は…。


 そしてこの世界に来て俺は、オルガさんと一緒に大人になった。


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