第42話 後悔

 カラ~ン!カラ~ン!カラ~ン!

 

 17時を知らせる大聖堂の鐘がある。


 アリッサさんと待ち合わせをした、喫茶店に俺は来ている。

 4人掛けのテーブルに座って待っている。


 しばらくするとアリッサさんがやって来た。

「ごめんなさい、待った?」

「ううん、今来たところだよ」

 どこの小芝居だ。


 俺はアリッサさんに話した。

 侯爵家に呼ばれ男爵となり、村をもらった。

 アレンの街から馬車で2日のところにある、ヴィラーという村だ。

 そしてオルガさん達3人は、妻として一緒に来てくれるようになった事を話した。



「図々しい男だと思うだろうけど、アリッサさんも一緒に来てほしいんだ」

「でもきっとうまく行かないわ」

「どうして?」

「もっと近くに来て」

 アリッサさんに言われ、俺は隣の席に移動した。


『いい、エリアス君。小声で話すわね。私はエルフなの』

 ええ、知ってますとは言えない。

『えっ、そうなんですか?見た目では分からないものですね』

『エルフと言っても人族とほとんど変わらないわ。ただ時間の流れ方が違うだけで』

『時間の流れ?』

『そうよ、エルフは長生きなの。18歳くらいから外見は死ぬまで変らないわ』

『そうなんですか』

『それに人族より長生きなの。だから貴方は歳を取るのに、私は外見は変わらない。そしてあなたが死んでも私はまだ生きている。残される側の辛さが分かる?』

『それは…』

『エリアス君も我慢できる?自分が段々と老けていくのに私は変わらないのよ』


 そんなこと、考えたことなかった。

 相手はいて自分はけない。

 自分だけ残される辛さを。


『だから無理なの、エリアス君。私はあなたが大好きよ』

 アリッサさんは人族の中で、こんな寂しい思いをしてきたのか。

 俺はアリッサさんの手を握った。

 それ以外に出来ることがなかった。


「エリアス君がこの街を出ていくなんて、寂しくなるわね。英雄さん」

 アリッサさんの寂しそうな声。

 言わなければよかった。

 こんな結末になるなんて。

 友達のままなら明日も笑い合えたのに。

 ルイディナさん達に言われて、調子に乗った俺が馬鹿だった。


 それからアリッサさんは、席を立ち上がり店を出ていった。

 今まで何度、アリッサさんはこんな寂しい思いをしてきたのだろう。

 そんな話を聞きに来てくれた事に感謝をした。


 俺は寂しそうな、その背中を見送るしかなかった。


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